京つう

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2019年10月29日

 川原の身体が綺麗に円を描く。副島は早めにスイングを始動した。ここでスクリューはない。ボールになる可

" 川原の身体が綺麗に円を描く。副島は早めにスイングを始動した。ここでスクリューはない。ボールになる可能性があるからだ。ストライクで、かつ打たれないと確信するストレートのはずだ。
 副島の読みは当たっているている。それは滋賀学院バッテリーも承知の上だ。それでも、滋賀学院バッテリーは打たれない自信があった。
 対して、副島は川原と対戦した最初の打席で、打てそうな球はほぼ無いと察していた。あるとすれば、この外角のストレートだ。これだけは川原のストレートの威力が強いだけに、逆らわず振れば、一、二塁間を転がってくれる可能性がある。
 この筋書きを、一人の男が読んでいた。やはり、滝音だ。
 滝音はわざと一、二塁間の間隔を開けられるように、無理に大きなリードを取ったのだ。
 牽制が来れば刺せる。そう感じた一塁手が数歩一塁ベースへ守備位置を寄せた。二歩ほどの広さで一、二塁間の間隔が開いた。

 完璧なコースにストレートが伸びてくる。だが、コントロールが完璧過ぎて、それは副島がここだと思うコースそのものであった。伸ばしたバットが川原のストレートを弾く。

 カキィン!

 力を入れず、川原のストレートの勢いそのままを利用する。打球が一、二塁間を転がる。わざとその打球と重なるように滝音が走る。一塁手、二塁手と続けて横っ飛びするが、僅かに届かない。広い一、二塁間をしぶとく副島の打球が抜けていった。

 甲賀高校、2アウトながら、満塁のチャンス。
 川原が膝にがっくりと手をついて、ライトが捕球する様を眺めていた。その先にスタンドがお祭り騒ぎで黒いメガホンを叩き合っているのが見える。
 汗が雨のように額から落ちてくる。冷や汗でもある。相手ピッチャーの出来からして、ここでもう1点取られたら、負けるかもしれない。

 川原の冷えた汗を見て、滋賀学院のベンチ奥から一人の男が動いた。静かに席を立ち、一気に闘志に火をつけた。
 
 お祭り騒ぎの甲賀を応援するスタンド。ハイタッチを交わす甲賀ベンチ。
 この高揚が5分後、静寂に変わる。"  

Posted by Curryson  at 18:20Comments(1)

2019年10月29日

 川原の身体が綺麗に円を描く。副島は早めにスイングを始動した。ここでスクリューはない。ボールになる可

" 川原の身体が綺麗に円を描く。副島は早めにスイングを始動した。ここでスクリューはない。ボールになる可能性があるからだ。ストライクで、かつ打たれないと確信するストレートのはずだ。
 副島の読みは当たっているている。それは滋賀学院バッテリーも承知の上だ。それでも、滋賀学院バッテリーは打たれない自信があった。
 対して、副島は川原と対戦した最初の打席で、打てそうな球はほぼ無いと察していた。あるとすれば、この外角のストレートだ。これだけは川原のストレートの威力が強いだけに、逆らわず振れば、一、二塁間を転がってくれる可能性がある。
 この筋書きを、一人の男が読んでいた。やはり、滝音だ。
 滝音はわざと一、二塁間の間隔を開けられるように、無理に大きなリードを取ったのだ。
 牽制が来れば刺せる。そう感じた一塁手が数歩一塁ベースへ守備位置を寄せた。二歩ほどの広さで一、二塁間の間隔が開いた。

 完璧なコースにストレートが伸びてくる。だが、コントロールが完璧過ぎて、それは副島がここだと思うコースそのものであった。伸ばしたバットが川原のストレートを弾く。

 カキィン!

 力を入れず、川原のストレートの勢いそのままを利用する。打球が一、二塁間を転がる。わざとその打球と重なるように滝音が走る。一塁手、二塁手と続けて横っ飛びするが、僅かに届かない。広い一、二塁間をしぶとく副島の打球が抜けていった。

 甲賀高校、2アウトながら、満塁のチャンス。
 川原が膝にがっくりと手をついて、ライトが捕球する様を眺めていた。その先にスタンドがお祭り騒ぎで黒いメガホンを叩き合っているのが見える。
 汗が雨のように額から落ちてくる。冷や汗でもある。相手ピッチャーの出来からして、ここでもう1点取られたら、負けるかもしれない。

 川原の冷えた汗を見て、滋賀学院のベンチ奥から一人の男が動いた。静かに席を立ち、一気に闘志に火をつけた。
 
 お祭り騒ぎの甲賀を応援するスタンド。ハイタッチを交わす甲賀ベンチ。
 この高揚が5分後、静寂に変わる。"  

Posted by Curryson  at 18:19Comments(0)

2019年08月25日

副島が桔梗へ声をかける。「東雲……お前からも……なんだ、その。あの、声をかけてやれ」

  副島が桔梗へ声をかける。「東雲……お前からも……なんだ、その。あの、声をかけてやれ」 その合図を察した桔梗がこくりと頷き、同時に柔らかな香りが甲賀ベンチを包んだ。桔梗がユニフォームの上から上から二つ目までボタンを外す。桔梗が藤田の隣に座り、そっとその手に触れ、耳元で囁いた。「あたし……きみと一緒に、もっと長くいたい。もっと……もっと長く」 なんという艶かしさ。とても甲子園を目指す高校野球部のベンチに流れるムードではない。 藤田がふっと目を見開き、隣に寄り添う桔梗を見た。耳元で囁いた唇が薄く濡れている。目線を落とすと、外れたユニフォームのボタンの間から、窮屈に締められた谷間が見えていた。「やりますっ! 桔梗さん、俺が絶対に抑えますから!」 さっきまでの浮かない表情はどこへやら。藤田はバシバシとグローブを叩いて、勢いよくベンチを飛び出した。「よしっ、いっちょあがり」 桔梗がボタンをそそくさと留めながら、ライトの守備位置へ向かっていく。 女って怖えな。誰ともなくそう呟き、皆が最終回のグラウンドへと駆けていった。  

Posted by Curryson  at 15:35Comments(0)

2019年05月12日

そんな副島と藤田が頑張り続けて迎えた冬の日。  グラウンドに三人目の野球部員が現れた。各部の主将

" そんな副島と藤田が頑張り続けて迎えた冬の日。
 グラウンドに三人目の野球部員が現れた。各部の主将たちは目を疑った。

「え……蛇沼?」

 三人目の野球部員は、ひねくれ者の蛇沼神だった。いつもひつもひねくれていじめられていた蛇沼が、にこにこしてボール回しをしている。

「どういうこった」

 皆が不思議そうにグラウンドの隅を見つめていた。

「蛇沼ってあんなに大きい声出せるんだな。ま、でも、副島良かったやん。三人目入って」

「まぁ、それでもあと六人か……。もう他に部活やってなくて運動神経良さそうなのって、どの部活も誘って断られてるからなぁ。あとは一年とか誘わないと厳しいだろうな……」

 来年、副島は最終学年を迎える。
 夏の全国高校野球選手権大会、県予選登録メンバー締切まではこの時点で半年もない。どの運動部の主将もここからあと6人を集めるのは至難の業だと思っていた。"  

Posted by Curryson  at 23:25Comments(0)

2018年11月08日

その向かい合う陣営の一つ。一条家の旗を並べ

その向かい合う陣営の一つ。一条家の旗を並べた陣の中心には[尽忠報国]と記された旧倉橋家の旗印もあった。この旗印こそ、一条軍の総大将、土居隆行の旗印である。その旗印の下、大鎧に美國集運推薦を包んだ隆行は、闇に浮かぶ西園寺陣営を睨みすえていた。(西園寺が陣を整え終わって、まだ、あまり時間が経っていない…。恐らく西園寺陣営は、明朝の夜明けと共に合戦を始めるつもりであろう…。その虚を突けば、必ず戦果を挙げられるハズだ…。)自身の打ちたてた戦術に穴が無いかと、自らに問いかけている。シュタ。そんな隆行のもとに、静かに侘茶屋の諜報の者が姿を表した。隆行は、敵陣を見据えたまま、「整ったか。」辺りの静寂に逆らわぬよう、静かに、口を開く。「は。第一陣より第十陣まで、全て準備整ったとの事に存じます。」「同士討ちを防ぐ手段の徹底は如何か?」「はっ。それらも全ての隊、整ったとの事です。」「そうか。ご苦労。」隆行が、そう言うと、諜報の者は、再び闇へと消えていく。  

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2018年11月08日

だが、清右衛門は、言葉を返さず愛銃を組み立てるGの

だが、清右衛門は、言葉を返さず愛銃を組み立てるGの行動から諾の意思を感じ取り、「良いのか、爺!隆行殿との約束を反故する事になるぞ!」と叫ぶが、相変わらず、Gは反応を示さない。beautylife良いのか!隆行殿がそれの使用を禁じたのは、卓越した技術を知った時の野心家達からヌシの命を守るためでもあるのだぞ!!」清右衛門は、反応を示さないGの腕をグッと掴むが、Gはそれを振りほどき、清右衛門を睨(にら)みつけた。「………許せねぇ。」「許す許さんの問題では無い!こないな兵器が一条にあると知れればどうなるか分かっておるのか!!」「………うまくやる。」Gは、そう言うと、視線を戻し玉を準備し始める。しかし、清右衛門は、「確かに、それを一番使いこなせるのはヌシじゃ…。じゃが、行かせぬぞ!ヌシの身に何かあれば菊はどうすれば良いんじゃ!!」Gに向かって口吻を飛ばすと、「行かせぬぞ!!」と、両手でGの両肩を掴み、強い力で抑え始めた。「………ぐっ。」腕力では、とても清右衛門に敵わないGは、あまりの力に顔をゆがめ、「………ここにいても助からんぞ。」後ろにいる清右衛門に語りかけた。「そないな事は分からぬ!!」「………冷静に考えてみろ………この中村御所で最も敵兵に被害を加えたのは鍛冶場のワシらだ。」  

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2018年10月17日

たっつんは、しょうがなく、その質問にも頷(うなづ)

たっつんは、しょうがなく、その質問にも頷(うなづ)いて返すと、「ひょっひょっひょ。ほうか、ほうか。で、ヌシは成長するために何をしておる?」許松が皺(しわ)と火傷に包まれた顔を近づけてきた。た。「何って…そりゃぁ………。」たっつんは、その顔を避けるように身をよじるが、(何かしてたっけ…?)明確な回答が浮かばない。すると、許松は、さっさとたっつんの答えに見切りをつけたらしい。「ほうじゃろう、ほうじゃろう。」答えも聞かずにニコニコとそう言うと、「ひょっひょっひょ。」笑いながら部屋を去ってしまった。(なんだ…あのジジイは…)その態度にムカついてきたたっつんは、「なんだ!あやつは!!」陳秀に唾を飛ばすと、  

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2018年10月17日

たっつんは、しょうがなく、その質問にも頷(うなづ)

たっつんは、しょうがなく、その質問にも頷(うなづ)いて返すと、「ひょっひょっひょ。ほうか、ほうか。で、ヌシは成長するために何をしておる?」許松が皺(しわ)と火傷に包まれた顔を近づけてadrian chengた。「何って…そりゃぁ………。」たっつんは、その顔を避けるように身をよじるが、(何かしてたっけ…?)明確な回答が浮かばない。すると、許松は、さっさとたっつんの答えに見切りをつけたらしい。「ほうじゃろう、ほうじゃろう。」答えも聞かずにニコニコとそう言うと、「ひょっひょっひょ。」笑いながら部屋を去ってしまった。(なんだ…あのジジイは…)その態度にムカついてきたたっつんは、「なんだ!あやつは!!」陳秀に唾を飛ばすと、  

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2018年08月14日

しかし、隆行にとって重要なのは、額より内容だったら

しかし、隆行にとって重要なのは、額より内容だったらしく、「いや、驚いた。則正殿にこんな得能があったとは、して紹鴎殿との対談は、どうであった?」上気した顔で聞く隆行に、則正は小さな声で「…完敗です。」と言った。五郎三郎が、すぐそばで、1貫が500貫になったと大騒ぎしていて良く聞き取れない。則正の暗い表情を見た隆行は、「うるさいぞ!」と五郎三郎の頭を叩き、もう一度尋ねた。「すまん。もう一回言ってくれ。」そう言い、隆行は真剣に耳を澄ます。則正は、下唇を噛んだ後、「…完敗です。申し訳ございません!隆行様の貸しを勝手に作ってしまいました!誠に申し訳ございません!」と、突然隆行に向かって謝りだした。その行動に驚いた隆行は、「いや、それじゃわからん。何があった?」と、説明を促すと、則正が、店に入るところから、事細かに説明し始めた。裏路地の一角に陣取り、とても、良い風体とは言えない三人が、商人風の男を囲んでいる様に、幸い人は近づいてこない。「これが事の顛末です。」則正が説明を終えた。  

Posted by Curryson  at 15:48Comments(0)

2018年08月14日

「ヌシは、何者じゃ!ふざけるな、殺せ!」喚

「ヌシは、何者じゃ!ふざけるな、殺せ!」喚いている頭目を無視して、隆行は倒れている山賊達を茂みの中に放り込み、先程の折れた太い大きな枝を抱え持つと、近くの太い木に寄り添った。先程の逃げた者のた者の一人が10人の仲間を連れて走り戻ってきた。「頭ぁ!!今、助けます!」と、声を上げて走る山賊達には、木の陰にいる隆行が視界に入っていない。「来るな!来るでない!」頭目が叫ぶが、山賊達は、その脚を止めず、隆行が身を寄せる木の近くまで走って来た。通り過ぎる山賊達に合わせるように、隆行が大きな木の枝を振り下ろす。ズシンッという音ともに、応援に来た山賊の半数以上が振り下ろした木の下敷きとなり、残りは再び逃げて行った。隆行は、倒れた男達を茂みの中に放り込み、今度は木に登り、再び来る応援には、上から大きな木の枝を落としたり、と、一刻(二時間)程、そういった作業を繰り返した。始めは引っ切りなしに来ていた応援の山賊も徐々に来る間隔が長くなり、遂には現れなくなった。まだ、いくらか逃げ去った者達がいたはずだが、その者達はそのまま逃げて行ったのであろう。既に茂みの中には120余名の山賊がノビていた。  

Posted by Curryson  at 15:47Comments(0)

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