なんとなく美海には想像がついた。
だが、あれは危険すぎる。
少しは自分の身のことも大事にしてほしい。
「土方くんは怖じ気づく兵士達の先頭に立って、自分が一番に突っ込んでいったんだ」
「そういう人なんです」
沖田は頷いた。
「本当に今回はよくやってくれたと思う。流石新撰組の副長だ」
大鳥は覚悟を決めたように美海と沖田を見た。
「土方くんに伝えてくれ」
「はぁ」
美海は曖昧に答えた。
「『悪かった。君のことは認める。早く回復して、また合流してくれ』」
「それって…」
大鳥は困ったように笑った。
「彼の実力は本物だ。彼の力が必要なんだ。だから、席は開けて待っているぞ」
「そんなの自分で伝えてくださいよ」
美海はシレッと言った。
「柄じゃないんだ」
大鳥はまた困ったように笑った。
憎めない人だ。
「全く。似た者同士ですね。そりゃあ仲が悪いはずだ」
沖田はなんだか嬉しそうに言った。
「わかりました。確かに伝えておきます」
「頼んだぞ。私はこれで失礼させてもらう」
「早いですね。お茶でも出しますよ?」
美海は首を傾げた。
「いや、結構。これからの話し合いがあるんだ」
「そうですか。ではまた」
「あぁ。また後程、蝦夷地で会おう」
大鳥は手を挙げて去っていった。
また、か。
美海は自然と頬を緩めた。
土方が陥落させた宇都宮城は、数日後、東山道総督府からの援軍と合流した官軍に呆気なくに取り返された。
土方が負った傷は中々に酷くて、私達は伝習隊と会津へ行く途中に、療養していくことになった。
「土方さん…大丈夫ですか?」
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「あぁ……」
1日目、土方が城を落とした日は旧幕府軍は2200人。
土方は別動隊として大鳥本隊と東西から挟み撃ちする予定であった。
ちなみにその中の新撰組は30人。
来ていたのは伝習隊、歩兵第七連隊、桑名藩、回天隊など。
土方はその中で参謀を任されていたようだ。
ちなみに大鳥は総督。
邪険に扱ってしまったが、結構すごい人だったようだ。
土方は道すがら家々に放火していったらしい。
上手いタイミングなのかそれを分かっていてなのか、宇都宮には南東の風が吹いて宇都宮城下にはものすごい勢いで火がまわった。
寺町も構わず放火し、その時寺に軟禁されていた老中を救出。
その後は回天隊は今小路門へたどり着くものの隊長が銃にやられ苦戦。
同時刻に新撰組は中河原門、下河原門へ接近するも、宇都宮城守備隊により戦死者続出。
竹藪を挟んでの壮絶な攻防戦に入ったが、どういう分けかどんどん官軍は下がって行く。
一旦城に退いたが、よっぽど焦っていたのか橋は落とさなかったため旧幕府軍は簡単に侵入。
宇都宮城は土方の放火により火の海。
ちなみにこの時歩兵隊が使っていた銃は標準より射撃間が短く、射程距離も倍だったとされている。
官軍は逃げ場を失い、これに圧倒され退いたはずだった。
この夜は宇都宮城の炎は消えずに燃えつづけたという。だが、官軍が引いたのも戦略あってのこと。
ただ引いたわけではなかった。
今回の土方隊からの宇都宮奇襲を守り切ったとしても、北西から迫ってくる大鳥本隊が到着してしまえば足元をすくわれる。