2024年04月02日入江の心の痛みが声を通して伝わってくる
入江の心の痛みが声を通して伝わってくる。好きと言うたったこれだけの感情がどうしてこんなに苦しみを与えてくるんだ。
入江の腕の中でふと父親がかけてくれたまじないを思い出した。
幼い頃,転んで痛いと泣いていた自分にかけてくれた言葉。
痛いの痛いの飛んでいけ。
これは心にも有効だろうか。今してあげられる事が分からなくて,子供騙しなまじないを心で唱えながらゆっくりと入江の背中を撫でた。
入江にこの痛みを与えているのは紛れもなく自分だと自覚はしている。 http://kiya.blog.jp/archives/24341447.html https://note.com/ayumu6567/n/n260d3e885a3f?sub_rt=share_pb https://community.joomla.org/events/my-events/ru-jiangno-wanno-zhongdefuto-fu-qingakaketekuretamajinaiwo-sii-chushita.html
入江を楽にするのも苦しめるのもこの私なんだ。自分でも酷い女だとしか言いようがない。
しばらく撫でていると徐々に腕が緩んできた。それから入江は三津の手を取り無言で歩き出した。
二人は海へ出て肩を並べて座り,何を言う事もなくずっと前だけを見ていた。
「私達のこの先に正解はあるんか?」
「分かりません……。多分正解なんてないと思います。でも答えはあると思うんです。
その答えも一つだけやなくて何通りもあって,それが正しいのか間違いなのか誰にも分からんから,選んだ答えが正しかったって自分で肯定するしかないんちゃいますかねぇ……。」
「難しいわ。考えるの嫌になって来たから帰ろ。」
三津も苦笑いでそうですねと立ち上がった。それから二人で大きな溜息をついた。
「文ちゃんに問い詰められたら素直に答えるか……。」
「それがいいです……。誤魔化しは効きませんから……。何か答えに繋がるお告げとかくれそう……。」
二人は閻魔のお告げを貰いに帰路を辿った。二人が家に戻ると文がちょうど洗濯物を取り込んでいたからそれを手伝って居間で三人で畳み始めた。
「で?重苦しい空気引っ提げて帰って来てどうしたん?」
「昨日の夜お前に言われた事真剣に考えて三津さんに伝えたそっちゃ。結局二人で悩んでも何も前に進まんかったそ。」
「似た者同士で悩んでもそりゃ何も進展せんわ。二人共何だかんだ言って今の関係がちょうどいいんやろ?」
二人は驚いた顔で頷いた。文はやっぱりなとからから笑った。分かりやすくて助かるとまで言った。
「三津さんは桂様の事許せそう?他の女抱いて孕ませたって言うの帳消しにして営み出来る?」
相変わらず文は鋭い所を突くなと二人は苦笑したがそこも重要な所だ。
「そう言われると許せる気がしいひん……。私根に持つんで。多分喧嘩したり嫌な事あるとすぐ思い出してまいそう……。」
「普通はそうよ。私も今だにこの人から受けた嫌がらせ根に持っとるぐらいやけぇ。」
文はどす黒い笑みで入江を見たが入江はすぐさま視線を外した。
「引きずりながら傍に居って嫌な思いするぐらいならこの際二人とも選ばんって言う手もあるで?その代わり二人には絶対体を許しちゃいけんけど。許したらただの都合のいい女にされてしまうけ。」
「どっちも選ばない……。あぁ悩むぐらいなら一人の方が楽かもですね。」
「やろ?私も主人と結婚して七年やけど主人がこの家におったのたった二年やけぇほぼ一人よ。もうそれに慣れたけぇ一人がいいわ楽で。」
「たった二年……。」
別に驚く事でもない。忙しくあちこち足を運んでる姿を見れば想像はつく。もし桂と夫婦になったとしても自分も文と同じ立場になるんだろう。
だとしたら夫婦である意味は?と思ってしまう。
「夫婦で良かったと思える事って何ですか?」
長く一緒に暮らしてもない,子もいない文にこんな事を聞くのは失礼になるのではと思ったが文はそうねぇと嫌な顔もせず考えた。
「同じ名字をもらえた事やろか。悲しいけどこれだけが私が主人の妻って証やから。
別に良かったのはこれだけやないのよ?思い出ももらってるし届く便りからも愛情は感じたし。
でも何が一番って言われたら,主人亡くした今は名前やろか。あとは私ら二人にしか分からん時間を共有出来た事。」
「名前かぁ。」
「入江三津になる?」
にっと笑って三津の顔を覗き込む入江の頭を文は拳で殴った。
「それがいけんそっちゃ!何で冗談みたく言うかね?」
ゴツンと音がして入江は頭を抱えて踞った。
入江の腕の中でふと父親がかけてくれたまじないを思い出した。
幼い頃,転んで痛いと泣いていた自分にかけてくれた言葉。
痛いの痛いの飛んでいけ。
これは心にも有効だろうか。今してあげられる事が分からなくて,子供騙しなまじないを心で唱えながらゆっくりと入江の背中を撫でた。
入江にこの痛みを与えているのは紛れもなく自分だと自覚はしている。 http://kiya.blog.jp/archives/24341447.html https://note.com/ayumu6567/n/n260d3e885a3f?sub_rt=share_pb https://community.joomla.org/events/my-events/ru-jiangno-wanno-zhongdefuto-fu-qingakaketekuretamajinaiwo-sii-chushita.html
入江を楽にするのも苦しめるのもこの私なんだ。自分でも酷い女だとしか言いようがない。
しばらく撫でていると徐々に腕が緩んできた。それから入江は三津の手を取り無言で歩き出した。
二人は海へ出て肩を並べて座り,何を言う事もなくずっと前だけを見ていた。
「私達のこの先に正解はあるんか?」
「分かりません……。多分正解なんてないと思います。でも答えはあると思うんです。
その答えも一つだけやなくて何通りもあって,それが正しいのか間違いなのか誰にも分からんから,選んだ答えが正しかったって自分で肯定するしかないんちゃいますかねぇ……。」
「難しいわ。考えるの嫌になって来たから帰ろ。」
三津も苦笑いでそうですねと立ち上がった。それから二人で大きな溜息をついた。
「文ちゃんに問い詰められたら素直に答えるか……。」
「それがいいです……。誤魔化しは効きませんから……。何か答えに繋がるお告げとかくれそう……。」
二人は閻魔のお告げを貰いに帰路を辿った。二人が家に戻ると文がちょうど洗濯物を取り込んでいたからそれを手伝って居間で三人で畳み始めた。
「で?重苦しい空気引っ提げて帰って来てどうしたん?」
「昨日の夜お前に言われた事真剣に考えて三津さんに伝えたそっちゃ。結局二人で悩んでも何も前に進まんかったそ。」
「似た者同士で悩んでもそりゃ何も進展せんわ。二人共何だかんだ言って今の関係がちょうどいいんやろ?」
二人は驚いた顔で頷いた。文はやっぱりなとからから笑った。分かりやすくて助かるとまで言った。
「三津さんは桂様の事許せそう?他の女抱いて孕ませたって言うの帳消しにして営み出来る?」
相変わらず文は鋭い所を突くなと二人は苦笑したがそこも重要な所だ。
「そう言われると許せる気がしいひん……。私根に持つんで。多分喧嘩したり嫌な事あるとすぐ思い出してまいそう……。」
「普通はそうよ。私も今だにこの人から受けた嫌がらせ根に持っとるぐらいやけぇ。」
文はどす黒い笑みで入江を見たが入江はすぐさま視線を外した。
「引きずりながら傍に居って嫌な思いするぐらいならこの際二人とも選ばんって言う手もあるで?その代わり二人には絶対体を許しちゃいけんけど。許したらただの都合のいい女にされてしまうけ。」
「どっちも選ばない……。あぁ悩むぐらいなら一人の方が楽かもですね。」
「やろ?私も主人と結婚して七年やけど主人がこの家におったのたった二年やけぇほぼ一人よ。もうそれに慣れたけぇ一人がいいわ楽で。」
「たった二年……。」
別に驚く事でもない。忙しくあちこち足を運んでる姿を見れば想像はつく。もし桂と夫婦になったとしても自分も文と同じ立場になるんだろう。
だとしたら夫婦である意味は?と思ってしまう。
「夫婦で良かったと思える事って何ですか?」
長く一緒に暮らしてもない,子もいない文にこんな事を聞くのは失礼になるのではと思ったが文はそうねぇと嫌な顔もせず考えた。
「同じ名字をもらえた事やろか。悲しいけどこれだけが私が主人の妻って証やから。
別に良かったのはこれだけやないのよ?思い出ももらってるし届く便りからも愛情は感じたし。
でも何が一番って言われたら,主人亡くした今は名前やろか。あとは私ら二人にしか分からん時間を共有出来た事。」
「名前かぁ。」
「入江三津になる?」
にっと笑って三津の顔を覗き込む入江の頭を文は拳で殴った。
「それがいけんそっちゃ!何で冗談みたく言うかね?」
ゴツンと音がして入江は頭を抱えて踞った。
Posted by Curryson
at 18:35
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