京つう

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2024年04月12日

「これにて失礼する。」

「これにて失礼する。」


「西郷。」


障子に手をかけ出ようとしたところを桂が呼び止めた。西郷は何だと顔だけ桂に向けた。


「待たせてすまなかった。これからよろしく頼む。」


畳に擦り付けるまでは行かないが桂は深く頭を下げた。
一瞬目を見開いた西郷は“あぁ”と一言だけ残して部屋を出た。
西郷の足音が消えたのを確認して桂は部屋を飛び出した。一目散に三津の居る部屋に走った。


「桂さん!待ってくれ!」


その後を坂本が追いかけると取り乱した桂が女中を捕まえて声を荒げていた。


「ここに居た娘は!?」


「あっあっあのお方なら中岡様ともう屋敷を出られましたっ……!」 https://community.joomla.org/events/my-events/zuo-rino-shi-jueechoran.html https://mathewanderson.livedoor.blog/archives/2550853.html http://mathewanderson.zohosites.com/


凄い剣幕で詰め寄られた女中は泣きそうな顔でそう告げた。殺される!と言わんばかりの怯えっぷり。


「いつだ!?いつ出た!?」


「半刻ほど前に……。」


「そんな前にっ!坂本さん!三津はずっと中岡君がついてるんだね!?一人になる事はないんだね!?」


今度はくるりと振り返って坂本に掴みかかった。


「落ち着いてくれ!お嬢ちゃんをこんな危険な土地で一人にはせん!中岡が責任持ってこっちが用意した宿に連れてっとるけん安心せい。」


「どこの宿ですか!」


桂は早く連れて行けと坂本を引きずりながら小松邸を飛び出した。
坂本が自分達の世話になっている宿だから大丈夫だと宥めながら桂を案内した。


「遅かったな。何を長々話しとったんや。」


宿の部屋では中岡がどうせまた何か熱弁してたんだろうと呆れ顔で寛いでいた。


「中岡君!三津は!?」


「お嬢ちゃんは別の場所に。」


「何処だ!」


桂は中岡の両肩を掴んでずいっと顔を寄せた。その必死さに中岡も坂本も苦笑いするしかなかった。


「桂さん,三津さんと何があったかは知らんがここに来る条件として居場所は絶対に教えんっちゅう約束なんです。
向こうでも探すのに苦労した。奇兵隊の面々も全然居場所は言うてくれんかったき。」


「どうやって見つけたんですか……。」


自分に教えてくれないのは分かるが中岡にも言わないなんて,絶対に三津と会わせたくないと言う強い意志を感じて胸が痛かった。


「明確な場所は教えてくれなんだが探し方は教えてくれたき。じゃけぇ私も助言だけ。三津さんは京で唯一安心出来るっちゅう場所に帰りました。」


「唯一安心出来る場所……。中岡君,恩に着る。」


それだけで充分だ。桂は中岡と坂本に一礼するとすぐに宿を飛び出した。
それを見た坂本は豪快に笑った。あの色男でさえ三津の事となるとただの男だ。『三津が唯一安心出来る場所……。』


新選組を警戒してるなら功助とトキの元へは帰らない。だったら三津の帰る場所はただ一つ。桂は全力で京の町を駆け抜けた。


『明かりが……灯ってる……。』


ここへ帰るのはいつぶりだろうか。三津も京を離れ主の居ない家なのにその様子は住んでいた時のまま。


『そうだ……サヤさんだ……。』


三津はサヤとアヤメに留守を託していた。時折お礼の品を贈っていたのを思い出した。
中に居るのはサヤだろうか。桂は恐る恐る玄関の前に立った。微かに中から声が洩れてくる。その声に耳を澄ませた。


女子達の笑う声。その中に愛しい声を見つけた。確信を得たと同時に桂は中に踏み込んでいた。


突然戸の開いた音と中に駆け込んでくる足音に三人は体と顔を強張らせて部屋の隅で身を寄せていた。



Posted by Curryson  at 01:05 │Comments(0)

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