京つう

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2024年01月23日

翌日予定通り,隊士の切腹は執り行われた

翌日予定通り,隊士の切腹は執り行われた。
斎藤が介錯を引き受けたと聞いた。


切腹した隊士を悼んで涙する者,自分はああなるまいと表情を堅くする者。
その後の反応はさまざまで三津は勿論涙する側。


「お三津ちゃんもう泣きやみなって…美人さんが台無しだからさぁ…。」


一応人目を忍んで庭の隅でうずくまって泣いていたのに,いつの間にやら隊士達に慰められていた。


「あい…でも止まらないんです…。」 https://classic-blog.udn.com/79ce0388/180281635 https://classic-blog.udn.com/79ce0388/180281643 https://freelancer.anime-voice.com/Entry/68/

顔をくっしゃくしゃにして,ぐずぐず鼻を啜りながらボロボロ泣いた。


「お三津ちゃんはこんなに優しいのによぉ…。」


「あぁ,幹部の連中は涙流す所か表情一つ変えやしねぇ…。」


血も涙もない奴らだと,隊士達はぼやいた。


『あ…否定出来ないや…。』


前ならみんなの人柄も知らないでそんな事言わないで。
そう言って怒ったと思う。


なのに今の三津には身内が言う悪口をも,その通りだと思えてしまった。


『人の命何やと思ってるんやろ…。
命より大事なもんあったら教えてよ…。』


本当に人が死ぬのを何とも思わないのかと疑ってしまった。
初めて彼らとの間に温度差を感じた。


彼らの本当の姿がどれだか分からなくなった。
もやもやした気持ちで仕事に向かった。


「いやっ,お三津ちゃん何ちゅう顔してんの!」


泣き疲れた顔をたえに両手で挟まれた。
ちゃんと顔は洗って来たんだけど思った以上に酷い顔らしい。


「もうちょっと休んどき。」


台所を追い出されそうになったのを踏みとどまった。


「もう十分泣いたんで気は済みました。」


へらへら笑ってみせるけど,内心は複雑で,女中の仕事を離れて土方の元に行くのが嫌なのが正直な所。


「自分の部屋に戻りぃな。」


たえは三津の心を見透かしたように笑って背中を叩いた。
ここは素直に甘えようと三津は頷いて台所を出た。




ぼーっとしながら部屋に向かって歩いていると竹刀を振る音が聞こえて来た。


その音がする方を見ると稽古に励む隊士の姿が目に飛び込んで来た。


「うっ…!!」


吐き気に襲われ両手で口を覆い,そのまましゃがみ込んだ。


何度も繰り返される素振りに,新平が斬られる瞬間が重なった。


どうしてこんなに鮮明に思い出せるんだろう。


身を切り裂いた音,地面に滴る血,うつ伏せに倒れてしまった彼。新平を忘れたくはないけど,彼の変わり果てた姿は思い出したくない。


じわじわと地面に染み込んでいく血が脳裏に浮かぶと血生臭さまで思い出す。
今,目の前に夥しい血が流れてるみたいに。


「うっ,うぇっ…!!」


激しく嘔吐いてその場にうずくまった。


「お三津ちゃんどうした!?」


側にいた隊士に背中をさすられるけど嗚咽は止まらない。


「大…丈夫…。おっかしいなぁ…はは…。」


込み上げてくるものを抑えて笑って見せる。


「大丈夫やから誰にも言わんとって下さいね。」


青白い顔をしながら笑ってみせて,ふらふら部屋に戻った。


何にもない部屋に寝転がって少し吐き気は落ち着いた。
畳の匂いに気が紛れていった。


久しぶりに号泣したせいか,凄く体力を消耗した気がする。目を閉じてすぐに眠りに堕ちた。





夢を見た。新平が笑顔で手招きをしている。
嬉しくてすぐに駆け寄って彼に抱きついた。


しっかりとした腕が自分を抱きしめてくれるのを感じながら,広い胸に顔を埋めた。


彼の匂い,彼の温もり,あぁ私幸せだ。


「新ちゃん,大好き。」


両腕に力を込めてぎゅっと抱きしめる。


その手にぬるっとした感触がした。凄く嫌な感触だった。


すると抱きしめてくれていた腕が解かれていく。


「新ちゃん?」


三津の呼びかけに答える事なく新平の体はぐらりと揺らいだ。
そのまま三津の腕からすり抜けて,倒れてしまった。



Posted by Curryson  at 17:42 │Comments(0)

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