京つう

日記/くらし/一般  |洛中

新規登録ログインヘルプ



2023年04月27日

どもです」

どもです」

 その強調された一語に、違和感を覚える。

 人間・・・。双子は、どうしていつもこの一語にこだわるのか・・・?

「井上先生を地に横たえさせ、連中を整列させました。愚かなのは、でないわたしも同様。地に横たわる井上先生が、心中で「やめよ」、とおっしゃっている。だが、わたしは、それを無視しました」

 闇と静寂。星々も、雲に隠れてしまっている。

 夜目がきくとはいえ、これほどの暗さでは、富途信託 香港 信託 公司 排名 family trust もはやここがどこかもわからない。
 仲間たちのシルエット。シルエットが、これほど安堵させてくれるとは。

「さきほど答えたその兵士の頸をつかみ、地より浮かせつつ、さらに問いました。「おまえたちには、がないのか」、と。つい、薩摩言葉をつかうのを忘れてしまいましたが。が、答えはありませぬ。頸が折れていたからです。掌をはなすと、その兵士は地に落ちました」

 なんの感情もこもらぬ声音。書か文を、棒読みしているみたいに淡々と語る。

 みなのがわかるわけもない。息遣いさえ、きこえてこない。それではじめて、自分も息を呑み、することを忘れていることに気がつく。

「背を向け、逃げ惑う兵士たちに追いすがり、頸をつかみ、は、言の葉によるものではなく、心中をよみました。先生は、もはや言の葉を紡ぐ力もありませんでした」が、これほど脆いとは・・・」

 喉を鳴らすような笑声がつづく。
「それから、とどめをさしたのか?心の臓を貫いたか?体躯ごと運んでくるなんざ、おめぇらしくて笑っちまう」

 副長である。笑おうとしたのであろうが、嗚咽にしかきこえない。

 返答はない。ただ、俊冬のすすり泣く声だけが、凍てつく寒気にまとわりつく。

 どれだけつらかっただろう。をみながら、「関の孫六」で心臓を刺したのか。それとも、もはや瞼をひらける力もなく、横たわったままのところを刺し貫いたのか・・・。

 おれにはできない。絶対に。ただ成す術もなく、苦しみながら息絶えるのを、見護っていたはず。

 俊冬だから、それができたわけじゃない。副長や永倉、原田に斎藤だってできたはず。

 誠の死というものを、誠の覚悟というものを、誠の思いやりというものを、しらないがゆえに、できない。

「俊冬、俊春、よくきけ。おめぇらは、おれの、おれたちの仲間だ。そして、おめぇらの行動のすべて、おれが責を負う。おめぇらのも含めて、な」

 雲が切れたのか、月光とともに、星々のあ明かりも落ちてくる。

 闇が終息し、光明をみるような錯覚を抱く。
を全員にはしらせる。そして、山崎だけそれをながくとめる。


 また、脚を動かしはじめる。

 先行している島田らに追いついたのは、夜が明けた・・・。

「源さんは、おれたち全員に「生きよ」、と遺した。それを、忘れるな。ゆくぞっ」

 副長は、 合流したのは、国道1号線、現代では地下鉄長堀鶴見緑地線と今里筋線が交差する「蒲生四丁目」駅付近。略して「がもよん」。、そこは蒲生村として古くからある村の一つである。

 ここからだと、大坂城まで徒歩圏内。現代でも、バスや地下鉄でゆくより、かえって徒歩のほうがはやいかもしれない。

 大人の脚だと、二十分くらいか。


 副長は、井上の死を秘匿したまま先行している隊士たちの尻を叩く。

 ゴールは目と鼻の先、到着してから、告げるつもりなのである。

 七番組の隊士たちは、さすがに付き合いが長いだけあり、なにかを察してる。ちらりちらりと、こちらをチラ見してくるが、気づかぬふりをする。

 おれ自身、これだけわかりやすい表情や態度をとるようになっている。
 だれかにきかれでもしたら、一発でアウト。一発で泣きだしてしまう。

 京から落ちてきた、ほかの隊や藩の武士たち。もはや、統率する者はなく、気力も元気もなく、抜け殻のようになって、ただゴールへと脚を動かしているだけ。

 血や煤やわけのわからぬものにまみれまくっている。

 虚ろな

 
 全員の、涙に濡れた
 井上の
「先生の
  

Posted by Curryson  at 21:05Comments(0)

2023年04月27日

「やはり腐隊士だ

「やはり腐隊士だ。ビーエル野郎、と申しておる」

 いまのはもちろん、相棒の代弁者たる俊春。
 
 が、囁きではない。

 相棒の顎をかいてやっている伊庭の向こうから、フツーに叩きつけてくる。

「断じてちがう。腐隊士でもBLでもない。だって、伊庭八郎ってすごいんだぞ。そんなすごい人と、タメで付き合えたら素敵じゃないかっ」
を向けてくる相棒。

 顎をかきながら、「こいつ、ヤバイ系か?」、というを向けてくる伊庭。

 玄関のまえまで響き渡ったその宣言に、こっちをみながら大人も子どももひそひそ話をしている。


 顎をかいてもらいながら、虚ろな「伊庭君、すまないな。去皺紋 動態紋改善 動態紋消除 いきなりで驚いたであろう?主計は・・・。ふふっ、大好きなのだ」
「さよう」

 謎めいた俊冬の、ってか、意味わかんねー言葉に、力いっぱい同意する俊春。

 玄関先にいる外野は、いまやひそひそではなく、フツーに「主計の変態野郎」、とかいってるし・・・。

「さぁ伊庭君、副長は奥だ。きたまえ」

 伊庭をうながす俊冬。

 そして、草履を脱いできちんとそれを揃え、双子とともに廊下をあゆみだす伊庭・・・・。

 完璧、誤解されてる・・・。

 冷たい廊下に四つん這いになり、奥へと去ってゆく三つの背をみつめるおれ。

 チーン・・・。

「ウッシッシッシ」

 相棒のケンケン笑いが、身に沁みすぎる。 気になりすぎるので、小姓の仕事をおれがすることにした。

 まあ、もともとそのまとめ役だし、おかしくはないはず。

 つまり、茶をもってゆくのである。

「熱すぎずぬるすぎず、濃すぎず薄すぎず・・・」

 呪文のように呟きながら、慎重に淹れる。

 副長、なんてワガママなんだ。

「だったら、自分で淹れろっていうのよ・・・」

「茶は、女子が淹れるもの」という、昭和チックな会社に勤めるOLのごとく、文句をたれてみる。

 えーっと、茶菓子茶菓子・・・。

 なにせ、よそ様の仮宅なので、勝手がわからない。
 納戸をひらけると、紙に包まれた細長い箱がでてきた。

 羊羹?竿菓子?

 すくなくとも、のもんじゃないよな・・・。

 茶には茶菓子・・・。

 人生でもそうおおくはない、重大な選択に迫られるおれ・・・。 左右をみまわす。だれもいない。

 これに、掌をつけていいのか?奉行所の人に断りもなしに、「ないない(どこかにしまったりする)」していいのか?

「いいじゃねぇか、主計。伏見奉行所つったら、おんなじ幕府の機関。ここにあるもんは、すべておまえのもんだ」
「いいや。ここにあるものは、奉行所の所有物。その権利は、幕府に帰する。勝手につかっていいものではない」

 天使と悪魔、というよりかは「アンパOマン」と「バイキOマン」が、頭のなかで主張しあっている。

 紙包みを無駄にすかしてみる。

 賞味期限の記載なし。包み紙のこすれ方から、ここ1、2か月内に置かれたものとは思えない。

 まさか、お中元の残りもの?

 羊羹だとして、賞味期限ってどのくらいだっけ?

 いや、それ以前に・・・。勝手に開けていいものかどうか・・・。「どうせ、このあと燃えちまうんだ」
「いいや、燃えてしまうとかの問題じゃない」
「燃えちまうくらいだったら、いまここで役立てたほうが、だって本望じゃないか」

「アンパーOチ」が「バイバイOーン」に打ち砕かれそうになった瞬間・・・。

「副長が「茶はまだか」、と仰って・・・。主計、なにをしておる?」

 厨に、俊冬が入ってきた。
 ちかづいてくると、掌から紙包みをとりあげる。

 さっさと紙包みを破く。

 さらにさっさと箱を開けながら、ぴかぴかのまな板の上に置き、さらにぴかぴかの包丁を包丁立てから取り出す。

 包丁もまな板も、俊冬のものである。

 料理人がマイ包丁を晒に巻いてってのは唄にもあるが、かれの場合、背にまな板までしょってることになる。 箱を、二人でのぞき込む。

 箱のなか一面に、粉砂糖っぽいものが・・・。

 洋菓子?

 だとしたら・・・。

 時期的に、シュトーレンか?だったら、をおけばおくほどいいってゆうし・・・。

 そんなわけない、よな。

 俊冬が、おもむろに箱のなかからそれをとりだす。それから、まるで林檎の皮をむくように、包丁をすべらせる。
  

Posted by Curryson  at 00:42Comments(0)

2023年04月24日

女を犠牲にしたい

女を犠牲にしたいなどと思うだろうか。そう思わせてしまった自分が憎くなった。


 一方で、夢現な桜司郎は視界を彷徨わせる。暗がりであることも相俟って、山野と思わしき男に沖田が重なって見えた。先日、土方へ向けた時と同じ表情が自然と浮かぶ。


「…………沖田先生、のことが、好き、だから…………」



 たどたどしくも、
Virtual Office https://www.easycorp.com.hk/en/trademark Company Secretary ハッキリと紡がれたその言葉が沖田の鼓膜を刺激する。それは上司としてなのか、それとも男としてなのか。


『あんたは鈴木の目を見て、向き合ったことがあるのか』

 先日の斎藤の言葉が脳裏へ響いた。

 前の自分であればその答えを知りたくないと目を背けていただろう。だが、今は向き合わねば男が廃ると自身を鼓舞し、桜司郎の目を覗き込んだ。 それを見た瞬間、ドキリと鼓動が跳ねる。

 その瞳には見覚えがあった。ずっと昔、幼い頃に姉が夫である義兄を見るようなそれである。弟の自分へ向けられたものとは違い、少し熱を帯びて柔らかく、けれども切なげなものだった。


──ああ、これは自惚れて良いのだろうか。この子は私に懸想していると思って良いのだろうか。


 沖田はもう片方の手で自身の熱くなった顔を覆う。泣きたいような、叫びたいような、言葉にならぬ感情が全身を巡った。


「……桜、司郎、さん……ッ」


 握る手にほんの少しだけ力が加わる。この手に、どれだけ救われて来たのだろう。

 敬愛する兄である山南の首を落とした日、桜司郎の温もりが無ければ、今も心はあの日のまま凍えていたに違いない。


──私は、貴女にこれ以上何もあげられないのに。


 血を吐いたからには、いよいよ前線からは引かざるを得ないだろう。立ちたくても、土方がそれを許さない。無敵の剣の沖田が無様に敵の前で喀血しようものなら、隊の士気に関わるからだ。

 それに周りへ伝染してしまう可能性を思えば、尚更だった。


──貴女と過ごせる時間もほとんど無いだろう。貴方はこれからも前線で輝いていく。私は床からその背を眺めるだけだ。


 せめて、この夜だけは傍に居ることを許して欲しいと、沖田は祈るように両手で桜司郎の手を取る。

 そうすれば、先程よりもはっきりと琥珀色の瞳が沖田を射抜いた。


「……沖田、せんせ?」


「…………私も、貴女のことが好きだ……」


 そのように告げれば、幸せな夢でも見ているかのように、桜司郎は潤んだ瞳を閉じて微笑む。

 再度眠りへ落ちてしまった愛しい人の姿を見て口角を上げると、沖田は片手で手を持ったまま、腕を伸ばして頭を撫でた。


──……私の身体は、近藤先生の為、隊の為に在るけれど。魂は貴女に差し上げます。……例え、この身が動かなくなったとしても。私はいつでも貴女を想っている。
が良かったせいか気は良い。


──幸せな夢だったな。沖田先生が、私のことを好きだと言ってくれて……。


 口角が緩み、再び微睡みそうになった時、隣の部屋へ続く戸がかたりと揺れた。

「南部、先生……?」

 そのように呼び掛けるが、返事は無い。急に喉が張り付いたように乾き、何か飲めるものはないかと首を動かした。少し離れたところに湯呑みと茶瓶があることに気付く。

 それに寝ている間に大量の汗をかいたからか、しっとりと襦袢が濡れていた。手の届く範囲に替えの夜着があったため、それを引き寄せ、まずは着替えようと布団の中で帯を解く。


 右の脇腹を庇いつつ、何とか腕の力で起き上がろうとした。しかし途端に激痛が走り、顔を歪める。

「う……っ……。
  

Posted by Curryson  at 21:49Comments(0)

QRコード
QRCODE
インフォメーション
【京つうからのお知らせ】
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
Curryson