2023年12月29日やたら愛想のいい溌剌とし
やたら愛想のいい溌剌とした笑顔で部屋に入って来たのは山崎。
「あ!斎藤さんのお友達!」
一度会った人は忘れない。
これも甘味屋で身に付いた三津の特技。
三津が覚えていた事に機嫌をよくして,図々しくもたえを押しのけて三津の前に座り込んだ。
山崎の馴れ馴れしい態度にたえは怪訝な目を向ける。http://jennifer92.livedoor.blog/archives/33683915.html https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/12/26/191350?_gl=1*h6ze4a*_gcl_au*MTYyMjM0Mjc5LjE3MDExNzAxMjA. https://travelerbb2017.zohosites.com/
それに対しても恐い顔しなさんな,と陽気に振る舞った。
「ちょうどええ薬持って来てるねん。見せてみ。」
山崎はかすり傷から打撲まで,全ての傷を診てから,足首に手を伸ばした。
「こんなに腫れて……。姉さん桶一杯に冷たい水用意してくれへん?」
頼みますと笑う顔も清々しい。
と三津は思ったけど,たえは相変わらず疑いの眼差し。
変な事してくれるなよと視線を突き刺して部屋を出た。
「それにしても女子がこんな生傷作って…。何しはったん?」
山崎は手際良く消毒を始めた。
思ったより繊細で手際がいいのに感心しながら,ヒリヒリした痛みに悶えた。
「知らない人に追い掛けられたんです。それで思いっきり転けたんです。」
それも道のど真ん中で。色んな人にも見られて恥ずかしかったんだと愚痴を零した。
「それは災難やったなぁ。」
「そうなんです。私を土方さんの女やと思ってて,勘違いやって言っても聞いてくれへんし,土方さんには帰り道ずぅーっと馬鹿って言われるし……。
それに傷はめっちゃ痛いし……。」
あちこちに出来た傷はじんわりと疼いて,襦袢が擦れる度にヒリヒリしてくる。
でも痛みなんてそのうち無くなる。
痛みよりもしぶとく体に残るのは恐怖の方。
それは目には見えなくて,ふとした時に現れる。
「……怖かったやろ。」
ぼーっと手当てを施す手ばかりを見つめていたら,その手が不意に頬に触れて来た。
『怖かったけど…。何が怖かったんやろ…。』
全てはあっという間だった。
男たちに囲まれた時はびっくりした。
土方の女と間違われてムッとした。
追っかけられた時はただただ必死だった。
捕まった時は転んだ恥ずかしさと痛みに耐えてた。
土方が現れた時はほっとした。
でも頃合を見計らってたみたいで釈然としなかった。
それから瞬く間もなく,片は付いた。
三津の頭の中は真っ白だった。
足元に広がる血溜まりだけが鮮やかで,その中には顔色一つ変えない土方。
人が斬られるのを目の当たりにしたのは二回目だった。
一回目は新平が斬られた時。
その時は,刀を向けられた恐怖に泣いた。
愛しい人を傷付けられた事に泣いた。
愛しい人を守れなかった事に泣いた。
今回は自分のよく知る人物が,人を斬った。
斬られるのではなくて,斬るのを見た。
土方の一振りは三津を助ける為の一振りで,彼が人を斬るのも日常茶飯事。
三津だってそれは分かってる。分かっていても土方が血を浴びる様を見たくなかった。
平静を貫いた姿に,堪らなく胸が苦しくなった。
「怖かった…。」
身を斬る音,飛び散る血,悲痛な声,それを創り出した人物。
初めて土方を怖いと思った。
『やっぱり私は刀を振る土方さんを…新選組のみんなを受け入れられへんのかもしれへん。』
人を斬るだけが彼らの全てじゃないのに。
それ以外の部分を見ていながら,実際目にしたら腰を抜かし声も出なかった。
助けてもらったお礼も言えなかった。
違う,言いたくなかった。
人を斬った相手にありがとうなんて言いたくなかった。
三津は両手で目を覆った。溢れる涙を止めたかった。
「全部出してしまい。そしたらすっきりして,顔は勝手に笑いよる。」
山崎はそれ以上は何も言わず,水で足を冷やしておくようにとだけ言い残して部屋を出た。
「あ!斎藤さんのお友達!」
一度会った人は忘れない。
これも甘味屋で身に付いた三津の特技。
三津が覚えていた事に機嫌をよくして,図々しくもたえを押しのけて三津の前に座り込んだ。
山崎の馴れ馴れしい態度にたえは怪訝な目を向ける。http://jennifer92.livedoor.blog/archives/33683915.html https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/12/26/191350?_gl=1*h6ze4a*_gcl_au*MTYyMjM0Mjc5LjE3MDExNzAxMjA. https://travelerbb2017.zohosites.com/
それに対しても恐い顔しなさんな,と陽気に振る舞った。
「ちょうどええ薬持って来てるねん。見せてみ。」
山崎はかすり傷から打撲まで,全ての傷を診てから,足首に手を伸ばした。
「こんなに腫れて……。姉さん桶一杯に冷たい水用意してくれへん?」
頼みますと笑う顔も清々しい。
と三津は思ったけど,たえは相変わらず疑いの眼差し。
変な事してくれるなよと視線を突き刺して部屋を出た。
「それにしても女子がこんな生傷作って…。何しはったん?」
山崎は手際良く消毒を始めた。
思ったより繊細で手際がいいのに感心しながら,ヒリヒリした痛みに悶えた。
「知らない人に追い掛けられたんです。それで思いっきり転けたんです。」
それも道のど真ん中で。色んな人にも見られて恥ずかしかったんだと愚痴を零した。
「それは災難やったなぁ。」
「そうなんです。私を土方さんの女やと思ってて,勘違いやって言っても聞いてくれへんし,土方さんには帰り道ずぅーっと馬鹿って言われるし……。
それに傷はめっちゃ痛いし……。」
あちこちに出来た傷はじんわりと疼いて,襦袢が擦れる度にヒリヒリしてくる。
でも痛みなんてそのうち無くなる。
痛みよりもしぶとく体に残るのは恐怖の方。
それは目には見えなくて,ふとした時に現れる。
「……怖かったやろ。」
ぼーっと手当てを施す手ばかりを見つめていたら,その手が不意に頬に触れて来た。
『怖かったけど…。何が怖かったんやろ…。』
全てはあっという間だった。
男たちに囲まれた時はびっくりした。
土方の女と間違われてムッとした。
追っかけられた時はただただ必死だった。
捕まった時は転んだ恥ずかしさと痛みに耐えてた。
土方が現れた時はほっとした。
でも頃合を見計らってたみたいで釈然としなかった。
それから瞬く間もなく,片は付いた。
三津の頭の中は真っ白だった。
足元に広がる血溜まりだけが鮮やかで,その中には顔色一つ変えない土方。
人が斬られるのを目の当たりにしたのは二回目だった。
一回目は新平が斬られた時。
その時は,刀を向けられた恐怖に泣いた。
愛しい人を傷付けられた事に泣いた。
愛しい人を守れなかった事に泣いた。
今回は自分のよく知る人物が,人を斬った。
斬られるのではなくて,斬るのを見た。
土方の一振りは三津を助ける為の一振りで,彼が人を斬るのも日常茶飯事。
三津だってそれは分かってる。分かっていても土方が血を浴びる様を見たくなかった。
平静を貫いた姿に,堪らなく胸が苦しくなった。
「怖かった…。」
身を斬る音,飛び散る血,悲痛な声,それを創り出した人物。
初めて土方を怖いと思った。
『やっぱり私は刀を振る土方さんを…新選組のみんなを受け入れられへんのかもしれへん。』
人を斬るだけが彼らの全てじゃないのに。
それ以外の部分を見ていながら,実際目にしたら腰を抜かし声も出なかった。
助けてもらったお礼も言えなかった。
違う,言いたくなかった。
人を斬った相手にありがとうなんて言いたくなかった。
三津は両手で目を覆った。溢れる涙を止めたかった。
「全部出してしまい。そしたらすっきりして,顔は勝手に笑いよる。」
山崎はそれ以上は何も言わず,水で足を冷やしておくようにとだけ言い残して部屋を出た。
2023年12月29日「沖田か,ちょうどいい。
「沖田か,ちょうどいい。話があるんだ。」
予想外にも斎藤の方から話があると部屋に招き入れられた。
あんまりいい話じゃないかもしれない。
不安に駆られつつ斎藤と膝を突き合わせた。
斎藤の神妙な面持ちに手に汗をかいた。
「それで…話とは?」
少し身を乗り出して様子を窺った。
いつもの斎藤らしくないと感じていた。
いつもならズバッと要件だけを述べるのに今日は腕を組み,渋い顔で口ごもっている。
三津の事だとは分かる。何て言われるんだろう。http://kiya.blog.jp/archives/23424956.html https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/12/28/220108 https://travelerbb2017.zohosites.com/
嫁にもらうとか?
男と女の間柄になったとか?
聞きたくない内容が次々に総司の頭を埋め尽くしていた時,
「どうすればあいつの気配や存在が分かる?」
深い溜め息と共に出て来たのは考えていた事とは全く的外れな内容。
「情けないが今日あいつが俺の後ろをつけていたのに全く気付かなかった…。」
男として,武士として恥だとまで言ってうなだれた。
『何だ…そう言う事?』
三津を小姓に指名したのは気配を感じるため。
出掛けたのもきっと三津を知るため。ならば納得がいく。
そうと分かれば暗い顔なんてしてられない。
総司は得意げな笑みを浮かべて胸を張った。
そして自分の気持ちを正直に認めた。
三津と一番親しい仲なのは自分だけ。他の人は許せない。今になって土方が言っていた“不犯なんて誓いはくだらない”の意味が分かった気がする。
『でも誓いを曲げる気はありません。私は土方さんと違ってそこまで欲深くありませんから。』
だからこれ以上は望まない。
仲の良い友で構わない。
男女の間柄の方が面倒臭くて嫌だと思う。
そんな事で三津を嫌いになってしまうなら,友達のまま笑い合ってる方がよっぽどいい。
友として親しいからこそ,悪戯っぽい笑顔も見れるし,冗談も言い合える。
子供と一緒になって走り回れる。
からかった時の拗ねた顔や,嬉しい時に見せるほのぼのした笑顔は何度見ても飽きない。
自分はこんなにも三津が醸し出す空気に飲み込まれていると言うのに,
「何で分からないんでしょう?三津さんの存在を否定してるんですか?」
「存在を否定した覚えはない。むしろ存在感はあり過ぎるだろう。」
それなのに見えてないから困ってるんだと口をへの字に曲げた。
「沖田,あいつは生きてるよな?」
「当然です。」
三津を勝手に殺さないでくれ。
あんなに活き活きと笑って働く幽霊がどこにいる。
「……殺気。三津さんを怒らせてみるのはどうでしょう?
斎藤さんなら僅かな殺気にも敏感でしょ?だったら三津さんを殺気立たせれば。」
「なるほど名案だ。では早速怒らせてくれ。」
斎藤の頼みに総司の顔が歪んだ。
自分が三津を怒らせる?そんなのまっぴら御免だ。
何でわざわざ嫌われるような役を買って出なければならないんだ。
「嫌ですよ。嫌われたくないですもん。その役はもっと適任者がいるじゃないですか。」
総司はにやりと笑い早速頼みに行こうと斎藤を引っ張り適任者の元へ。
「あ?三津を怒らせろだ?」
適任者に抜擢された土方は不可解な依頼に眉を顰めた。
だがそんな事は朝飯前だと廊下に仁王立ちをした。
「三津ーっ!!」
その一言だけで待機の姿勢をとると,どこからともなく廊下を駆けて来る足音がする。
「はい!何でしょう?」
仕事をほっぽりだして来たのが分かる。
たすき掛けをして,手には拭いきれなかった水滴をつけたままで土方のもとに駆けつけた。
土方は三津の両肩を持って回れ右をさせ背中を向けさせた。
そしてにやりと口角をあげて,
「遅いんだよ!」
三津のお尻に全力の平手打ちをお見舞いした。
予想外にも斎藤の方から話があると部屋に招き入れられた。
あんまりいい話じゃないかもしれない。
不安に駆られつつ斎藤と膝を突き合わせた。
斎藤の神妙な面持ちに手に汗をかいた。
「それで…話とは?」
少し身を乗り出して様子を窺った。
いつもの斎藤らしくないと感じていた。
いつもならズバッと要件だけを述べるのに今日は腕を組み,渋い顔で口ごもっている。
三津の事だとは分かる。何て言われるんだろう。http://kiya.blog.jp/archives/23424956.html https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/12/28/220108 https://travelerbb2017.zohosites.com/
嫁にもらうとか?
男と女の間柄になったとか?
聞きたくない内容が次々に総司の頭を埋め尽くしていた時,
「どうすればあいつの気配や存在が分かる?」
深い溜め息と共に出て来たのは考えていた事とは全く的外れな内容。
「情けないが今日あいつが俺の後ろをつけていたのに全く気付かなかった…。」
男として,武士として恥だとまで言ってうなだれた。
『何だ…そう言う事?』
三津を小姓に指名したのは気配を感じるため。
出掛けたのもきっと三津を知るため。ならば納得がいく。
そうと分かれば暗い顔なんてしてられない。
総司は得意げな笑みを浮かべて胸を張った。
そして自分の気持ちを正直に認めた。
三津と一番親しい仲なのは自分だけ。他の人は許せない。今になって土方が言っていた“不犯なんて誓いはくだらない”の意味が分かった気がする。
『でも誓いを曲げる気はありません。私は土方さんと違ってそこまで欲深くありませんから。』
だからこれ以上は望まない。
仲の良い友で構わない。
男女の間柄の方が面倒臭くて嫌だと思う。
そんな事で三津を嫌いになってしまうなら,友達のまま笑い合ってる方がよっぽどいい。
友として親しいからこそ,悪戯っぽい笑顔も見れるし,冗談も言い合える。
子供と一緒になって走り回れる。
からかった時の拗ねた顔や,嬉しい時に見せるほのぼのした笑顔は何度見ても飽きない。
自分はこんなにも三津が醸し出す空気に飲み込まれていると言うのに,
「何で分からないんでしょう?三津さんの存在を否定してるんですか?」
「存在を否定した覚えはない。むしろ存在感はあり過ぎるだろう。」
それなのに見えてないから困ってるんだと口をへの字に曲げた。
「沖田,あいつは生きてるよな?」
「当然です。」
三津を勝手に殺さないでくれ。
あんなに活き活きと笑って働く幽霊がどこにいる。
「……殺気。三津さんを怒らせてみるのはどうでしょう?
斎藤さんなら僅かな殺気にも敏感でしょ?だったら三津さんを殺気立たせれば。」
「なるほど名案だ。では早速怒らせてくれ。」
斎藤の頼みに総司の顔が歪んだ。
自分が三津を怒らせる?そんなのまっぴら御免だ。
何でわざわざ嫌われるような役を買って出なければならないんだ。
「嫌ですよ。嫌われたくないですもん。その役はもっと適任者がいるじゃないですか。」
総司はにやりと笑い早速頼みに行こうと斎藤を引っ張り適任者の元へ。
「あ?三津を怒らせろだ?」
適任者に抜擢された土方は不可解な依頼に眉を顰めた。
だがそんな事は朝飯前だと廊下に仁王立ちをした。
「三津ーっ!!」
その一言だけで待機の姿勢をとると,どこからともなく廊下を駆けて来る足音がする。
「はい!何でしょう?」
仕事をほっぽりだして来たのが分かる。
たすき掛けをして,手には拭いきれなかった水滴をつけたままで土方のもとに駆けつけた。
土方は三津の両肩を持って回れ右をさせ背中を向けさせた。
そしてにやりと口角をあげて,
「遅いんだよ!」
三津のお尻に全力の平手打ちをお見舞いした。
2023年12月24日三津は頬を膨らませて反省
三津は頬を膨らませて反省の色を見せない笑顔をじとっと見上げた。
「だって人に教えるの苦手なんですもん。
ほら私末っ子だから人の面倒見るのは得意じゃないんです。」
そう言って笑顔を見せる総司に悪びれた様子はない。
「沖田さんらしい理由やけど,それじゃあ兄とは認められません!」
やっぱり私の方が大人ねと笑って総司の一歩前に出た。http://jennifer92.livedoor.blog/archives/34366072.html https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/12/20/165244 https://travelerbb2017.zohosites.com/
「年齢は追い越せないでしょう?」
総司は呆れたような笑みを浮かべ,すぐに三津の左側に並んだ。
何にも遮るものがない道に二人の笑い声が響いていた。「ここが原田さんたちの遊び場です。」
総司に案内され,立派な門から賑やかな歓楽街を覗き込んだ。
禿に手を引かれ門の中に吸い込まれて行く男が何人も三津たちの横を通る。
三津は自分よりも小さいのに着飾ってしっかりと役目を果たす禿に釘付けだった。
そして自分よりも大人の世界を知ってるのだなと苦笑い。
「そんなに珍しいですか?でもあんまりじろじろ見るもんじゃないですよ。」
下手したら芹沢たちが居るかもと,食い入るように見ていた三津を連れて引き返す事にした。
三津は自分は本当に狭い世界に閉じこもってたんだと知り,新たに発見した世界に一人感激していた。
「沖田さんもお気に入りの人があそこに居てたりするん?」
「私はああ言う所は好きじゃありませんよ。それに…。」
総司はじっと三津を見て,言いかけた言葉を飲み込んだ。
「それに?何?」
途中で言うのを止められると物凄く歯痒い。
三津は早く言ってと目で訴えた。
「何だっけ?さっ,行きましょう!」
わざとらしく首を傾げて歩く足を早めた。
「何それ!教えてよ!」
『お気に入りの人は今,目の前にいます。
…なぁんて,言える訳ないでしょ。』
教えてくれと駄々をこねる三津を愛おしそうに見つめて,“内緒”と唇を動かした。
屯所に戻ると,土方が待ち構えていた。
「戻ったか。茶を持って来い。」
土方は用件だけ告げると踵を返した。
「休みくれるって言ったの土方さんやのに。」
それを言うだけの為に待ってたのか。
そんな訳は無いだろうけど,それなら自分で淹れた方が早いと誰か教えてあげて欲しい。
三津は腑に落ちない顔をしながらも台所へ向かった。
取り残された総司は土方の後をついて行った。
「今日三津さんは非番になったの知ってます?」
総司はにやにやと笑いながら土方の前に回り込んだ。
「そうだったか,そりゃ初耳だ。」
土方は適当にあしらって部屋に入ると,言うまでもなく総司も転がり込んだ。
「初耳でしたか。じゃあ教えてあげますね,三津さん今日は非番なんです。」
自分の部屋のようにごろりと寝転んで大きな欠伸をした。
「勝手に寛いでんじゃねぇ。それに黙ってあいつを連れ出しやがって。芹沢に見つかったらどうする。」
土方は舌打ちをして読みかけの本に目を落とした。本の内容は全く頭に入って来ないが,真剣に読みふけるふりをする。
そうでもしないと総司のにやにやした顔が嫌でも目に入る。
「本当は三津さんが芹沢さんに見つかってないか,捕まったんじゃないかって心配だったんでしょう?」
お茶なんかどうでも良かったに違いない。
三津が無事に帰って来るのを待ち構えていたんだ。
「それを三津さんが知ったらどんな顔をしますかねぇ。」
「てめぇ芹沢に遭遇したらどうするつもりだったんだ。」
笑い事じゃねぇぞと一瞥するも,総司は顔色一つ変えない。
大した自信だ。
どうするつもりだったか聞かせてもらおうかと総司と向き合う。
「ちゃんと説明するつもりでしたよ。
こちらは土方さんのお妾さんですって。」
茶目っ気たっぷりに笑う総司に土方の顔は引きつった。
「ふざけんじゃねぇ!
俺の趣味が疑われるじゃねぇか!」
「だって人に教えるの苦手なんですもん。
ほら私末っ子だから人の面倒見るのは得意じゃないんです。」
そう言って笑顔を見せる総司に悪びれた様子はない。
「沖田さんらしい理由やけど,それじゃあ兄とは認められません!」
やっぱり私の方が大人ねと笑って総司の一歩前に出た。http://jennifer92.livedoor.blog/archives/34366072.html https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/12/20/165244 https://travelerbb2017.zohosites.com/
「年齢は追い越せないでしょう?」
総司は呆れたような笑みを浮かべ,すぐに三津の左側に並んだ。
何にも遮るものがない道に二人の笑い声が響いていた。「ここが原田さんたちの遊び場です。」
総司に案内され,立派な門から賑やかな歓楽街を覗き込んだ。
禿に手を引かれ門の中に吸い込まれて行く男が何人も三津たちの横を通る。
三津は自分よりも小さいのに着飾ってしっかりと役目を果たす禿に釘付けだった。
そして自分よりも大人の世界を知ってるのだなと苦笑い。
「そんなに珍しいですか?でもあんまりじろじろ見るもんじゃないですよ。」
下手したら芹沢たちが居るかもと,食い入るように見ていた三津を連れて引き返す事にした。
三津は自分は本当に狭い世界に閉じこもってたんだと知り,新たに発見した世界に一人感激していた。
「沖田さんもお気に入りの人があそこに居てたりするん?」
「私はああ言う所は好きじゃありませんよ。それに…。」
総司はじっと三津を見て,言いかけた言葉を飲み込んだ。
「それに?何?」
途中で言うのを止められると物凄く歯痒い。
三津は早く言ってと目で訴えた。
「何だっけ?さっ,行きましょう!」
わざとらしく首を傾げて歩く足を早めた。
「何それ!教えてよ!」
『お気に入りの人は今,目の前にいます。
…なぁんて,言える訳ないでしょ。』
教えてくれと駄々をこねる三津を愛おしそうに見つめて,“内緒”と唇を動かした。
屯所に戻ると,土方が待ち構えていた。
「戻ったか。茶を持って来い。」
土方は用件だけ告げると踵を返した。
「休みくれるって言ったの土方さんやのに。」
それを言うだけの為に待ってたのか。
そんな訳は無いだろうけど,それなら自分で淹れた方が早いと誰か教えてあげて欲しい。
三津は腑に落ちない顔をしながらも台所へ向かった。
取り残された総司は土方の後をついて行った。
「今日三津さんは非番になったの知ってます?」
総司はにやにやと笑いながら土方の前に回り込んだ。
「そうだったか,そりゃ初耳だ。」
土方は適当にあしらって部屋に入ると,言うまでもなく総司も転がり込んだ。
「初耳でしたか。じゃあ教えてあげますね,三津さん今日は非番なんです。」
自分の部屋のようにごろりと寝転んで大きな欠伸をした。
「勝手に寛いでんじゃねぇ。それに黙ってあいつを連れ出しやがって。芹沢に見つかったらどうする。」
土方は舌打ちをして読みかけの本に目を落とした。本の内容は全く頭に入って来ないが,真剣に読みふけるふりをする。
そうでもしないと総司のにやにやした顔が嫌でも目に入る。
「本当は三津さんが芹沢さんに見つかってないか,捕まったんじゃないかって心配だったんでしょう?」
お茶なんかどうでも良かったに違いない。
三津が無事に帰って来るのを待ち構えていたんだ。
「それを三津さんが知ったらどんな顔をしますかねぇ。」
「てめぇ芹沢に遭遇したらどうするつもりだったんだ。」
笑い事じゃねぇぞと一瞥するも,総司は顔色一つ変えない。
大した自信だ。
どうするつもりだったか聞かせてもらおうかと総司と向き合う。
「ちゃんと説明するつもりでしたよ。
こちらは土方さんのお妾さんですって。」
茶目っ気たっぷりに笑う総司に土方の顔は引きつった。
「ふざけんじゃねぇ!
俺の趣味が疑われるじゃねぇか!」
2023年12月24日警戒心の欠片もない笑みに誰もが
警戒心の欠片もない笑みに誰もが目を奪われたがそれも一瞬の事だった。
「仕事中にへらへらしてんじゃねぇ。」
その場が凍りつく程の低い声が響いたかと思ったと同時に三津の頭に鈍い衝撃が走る。
「いったぁ!」
痺れる痛さに目を見開くと冷めた目で自分を見下ろし,https://datsumouki-chan.com/2022/03/19/the-absurdly-obvious-in-order-to-health-care/ https://dwbuyu.com/how-boost-health-with-simple-home-activities/ https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/11/30/184717 息が出来なくなるぐらいの威圧感を放つ土方の姿を確認した。
今日来たばかりの女中にも手加減無しのこの男に誰しも恐怖を抱き目を伏せるのだけど,
「あ,土方さんや。」
三津は頭をさすりながら笑った。
知り合いのいない集団の中ではそれが土方であっても居てくれたら嬉しいと思った。
ただそれは隊士たちには理解しがたく,とんだ命知らずだと真っ青な顔で三津と土方の様子を見守る。
「だから何だ,他にどう見えるってんだ。
それよりこの間抜け面何とかしろ。」
少しは反省しろよと鋭い目で睨みつけながら両頬をつねり上げ,
「あぁ元が悪いから無理か。」
ふんと鼻で笑い,よく伸びるぜと存分に弄んだ。
不敵に笑いながら三津に絡む土方を誰も止める事が出来ない。
止めに入るかと思われた総司も三津さん変な顔!と指を差しながらけらけら笑う始末。
「沖田さん何とかしてよぉ…。
この大人げない人…。」
頼れるのは沖田だけだと思っていたのにそれすら間違いだったのか…。元が悪いだの変な顔だの好き放題言われる三津にやっと救いの手が差し伸べられた。
「こら,二人共止さないか。」
困惑気味の表情で現れた近藤の姿に,広間にはさっきとは違った緊張感が走る。
「みんなに紹介しよう,今日からうちで働いてくれる三津さんだ。」
三津の両肩に手を置いて紹介すると全員の視線が一気に集まる。
「よろしくお願いします。」
こんなに注目される事は今までなかった。
おどおどと視点の定まらないまま深く頭を下げると,広間はしーんっ…と静まり返った。
さっきまでの騒々しさはどこへやら。
自分は受け入れられないのか?
不安に駆られてゆっくりと頭を上げる。
すると野蛮と言うか野性的と言うか,地鳴りのような雄叫びと言うか歓声と言うか…。
若いぞ!生娘か!?嫁にもらうぞ!と品のない野次が飛び交う。
ここでは誰がまともなんだろう……。
興奮気味に目をぎらつかせた隊士たちに戸惑った。
「手ぇ出すんじゃないよっ!」
たえの一喝に一瞬で広間は静まり控えめな,
「おう…。」
と言う返事があった。
本当にとんでもない所なんだと今更気付いた三津だった。
それでも一応何のためにここへ来たのかは忘れてはいない。
土方に恩を返す為,役に立たなければと仕事をこなす。
『思ったより優しくなかったけどな…。』
自分の描いた土方の人物像が大きく違い騙されたと思ったが,周りの反対も押し切ったのだから後戻りはしたく無い。
たえと二人並んで食器を洗いながら,頑張ろうと小さく決意した。
「お三津ちゃんがしっかりした子で助かる。」
今まで来た女中より遥かに手際が良いと褒められた。
やった!とにんまりしてさらにてきぱきと働いた。
褒められて伸びる子なんです。
手を動かしながらも二人の会話は途切れる事はなくて,たえは三津より七つ年上で子供が二人いる事,ここでの仕事が終われば家に帰ってしまうと知った。
子供の話をするたえの顔を,
“お母さんの顔してるなぁ”と微笑ましく眺めていると早くも宗太郎が恋しくなった。
『私はこのままではいき遅れやわ。』
と自嘲気味に笑った。
いや,今は仕事に慣れるのが先!
頑張ったご褒美にたえの子供と遊ばせてもらう事にして,それを励みに三津の新選組での生活が始まった。
「仕事中にへらへらしてんじゃねぇ。」
その場が凍りつく程の低い声が響いたかと思ったと同時に三津の頭に鈍い衝撃が走る。
「いったぁ!」
痺れる痛さに目を見開くと冷めた目で自分を見下ろし,https://datsumouki-chan.com/2022/03/19/the-absurdly-obvious-in-order-to-health-care/ https://dwbuyu.com/how-boost-health-with-simple-home-activities/ https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/11/30/184717 息が出来なくなるぐらいの威圧感を放つ土方の姿を確認した。
今日来たばかりの女中にも手加減無しのこの男に誰しも恐怖を抱き目を伏せるのだけど,
「あ,土方さんや。」
三津は頭をさすりながら笑った。
知り合いのいない集団の中ではそれが土方であっても居てくれたら嬉しいと思った。
ただそれは隊士たちには理解しがたく,とんだ命知らずだと真っ青な顔で三津と土方の様子を見守る。
「だから何だ,他にどう見えるってんだ。
それよりこの間抜け面何とかしろ。」
少しは反省しろよと鋭い目で睨みつけながら両頬をつねり上げ,
「あぁ元が悪いから無理か。」
ふんと鼻で笑い,よく伸びるぜと存分に弄んだ。
不敵に笑いながら三津に絡む土方を誰も止める事が出来ない。
止めに入るかと思われた総司も三津さん変な顔!と指を差しながらけらけら笑う始末。
「沖田さん何とかしてよぉ…。
この大人げない人…。」
頼れるのは沖田だけだと思っていたのにそれすら間違いだったのか…。元が悪いだの変な顔だの好き放題言われる三津にやっと救いの手が差し伸べられた。
「こら,二人共止さないか。」
困惑気味の表情で現れた近藤の姿に,広間にはさっきとは違った緊張感が走る。
「みんなに紹介しよう,今日からうちで働いてくれる三津さんだ。」
三津の両肩に手を置いて紹介すると全員の視線が一気に集まる。
「よろしくお願いします。」
こんなに注目される事は今までなかった。
おどおどと視点の定まらないまま深く頭を下げると,広間はしーんっ…と静まり返った。
さっきまでの騒々しさはどこへやら。
自分は受け入れられないのか?
不安に駆られてゆっくりと頭を上げる。
すると野蛮と言うか野性的と言うか,地鳴りのような雄叫びと言うか歓声と言うか…。
若いぞ!生娘か!?嫁にもらうぞ!と品のない野次が飛び交う。
ここでは誰がまともなんだろう……。
興奮気味に目をぎらつかせた隊士たちに戸惑った。
「手ぇ出すんじゃないよっ!」
たえの一喝に一瞬で広間は静まり控えめな,
「おう…。」
と言う返事があった。
本当にとんでもない所なんだと今更気付いた三津だった。
それでも一応何のためにここへ来たのかは忘れてはいない。
土方に恩を返す為,役に立たなければと仕事をこなす。
『思ったより優しくなかったけどな…。』
自分の描いた土方の人物像が大きく違い騙されたと思ったが,周りの反対も押し切ったのだから後戻りはしたく無い。
たえと二人並んで食器を洗いながら,頑張ろうと小さく決意した。
「お三津ちゃんがしっかりした子で助かる。」
今まで来た女中より遥かに手際が良いと褒められた。
やった!とにんまりしてさらにてきぱきと働いた。
褒められて伸びる子なんです。
手を動かしながらも二人の会話は途切れる事はなくて,たえは三津より七つ年上で子供が二人いる事,ここでの仕事が終われば家に帰ってしまうと知った。
子供の話をするたえの顔を,
“お母さんの顔してるなぁ”と微笑ましく眺めていると早くも宗太郎が恋しくなった。
『私はこのままではいき遅れやわ。』
と自嘲気味に笑った。
いや,今は仕事に慣れるのが先!
頑張ったご褒美にたえの子供と遊ばせてもらう事にして,それを励みに三津の新選組での生活が始まった。
2023年12月15日「…………皆の思いはどうなります」
「…………皆の思いはどうなります」
思わず出た言葉は思ったよりも女々しい。女は感情の生き物だとはよく言ったものだ。溢れ出る思いを抑え込むことは出来ない、いや今抑えてしまっては後悔すると思った。
「……永倉先生達は、局長の指揮を遂行せんと必死に戦っていました。沖田先生は、局長のことが心配であの身体に鞭を打って行軍に参加したんです。土方副長は局長のために戦をしようと──!」
何処かで砲台の音が聞こえる。https://www.bly.com/blog/writing/the-absolute-best-thing-about-mainstream-book-publishing/#comment-1714407 https://jmfaye.free.fr/index.php?article1/introduction#c7737935680-1 https://badbuyerlist.org/buyer/721d40e2d365094e745e9fed 放たれた火で木が倒れる音が聞こえる。それに負けじと声を張り上げた。
もはや、己を見失いかけた彼には、情に訴えるしか方法が無い──そう信じて必死に言葉を繋いだ。
「今、ここで死んでしまったら、皆が後悔します!貴方を信じている人がまだ居ることを、ゆめ忘れられるなッ」
そこまで言い切ると、桜司郎は荒くなった呼吸を整える。
近藤は切なげに目を細めながら、その姿を見やった。
「…………そうか、俺はまだ皆を……」
ポツリと呟くと、苦々しそうに視線を落とす。
「……付けるべき始末が残っていたようだ。君の言う通りに、俺も撤退しよう。道を開いてくれるか」
その言葉は決して良い意味では無いだろう。だが、少なくとも今死ぬ気では無くなったことに一先ず安堵の息を吐いた。
そして、力強く頷く。
「お任せを。榊桜司郎、この刀にかけて局長を江戸まで御守りします──」
目立ちそうな陣羽織はその場に捨て置かせると、桜司郎は先陣を切って慎重に進んだ。
その間も、一言も近藤から言葉を発することはない。
やがて八王子に差し掛かった辺りで、土方と合流することが出来た。無論援軍などは連れていない。無事を喜んではいたが、早すぎる敗戦に眉間の皺を深くしていた。
だが責める言葉は一つも吐かず、ただ「良く無事だった」と言った。
近藤を無事に土方へと引き合せることが出来た安心のためか、途端に気持ちが緩む。来た道を振り返れば、夕陽を飲み込んでいく甲府の山脈へと烏達が吸い込まれていった。 江戸へと戻った甲陽鎮撫隊は、散り散りになりながらも和泉橋医学所へと集っていた。
否、もはや甲陽鎮撫隊にて集った新しい隊士達の殆どは此処には居ない。あっさりと負けたことに失望したのか、はたまた臆病風が吹いたのかは彼らしか知らないことだ。
元から新撰組に名を連ねている者や、近藤らと縁の深い者、意地の強い者だけが此処に居る。
しかし、永倉と原田は少し遅れての合流となった。無事を喜ぶことも無く、そのまま近藤や土方と話したいと言って人払いをしたのだ。
今後を話すというなら、桜司郎や山口を含めた幹部で話すだろう。二人が纏ったあの妙な空気には、嫌な予感しかしなかった。
奥の部屋へ籠ってから、ほんの半刻しか経たないというのに時が長く感じてならない。
桜司郎は騒ぐ気持ちを抑えようと、草履を突っかけるようにして履き、外へと出た。
門前に垂れた細い枝の先には、小さな芽が生まれていた。もう春がそこに来ていることを初めて知る。
「……あ。あそこにも芽が……」
見上げると、固い芽がポツポツとその存在を主張していた。
白い息を吐きながら、それを見詰めていると背後から人の気配を感じた。
振り向くよりも先に、肩へ半纏が掛けられる。
思わず出た言葉は思ったよりも女々しい。女は感情の生き物だとはよく言ったものだ。溢れ出る思いを抑え込むことは出来ない、いや今抑えてしまっては後悔すると思った。
「……永倉先生達は、局長の指揮を遂行せんと必死に戦っていました。沖田先生は、局長のことが心配であの身体に鞭を打って行軍に参加したんです。土方副長は局長のために戦をしようと──!」
何処かで砲台の音が聞こえる。https://www.bly.com/blog/writing/the-absolute-best-thing-about-mainstream-book-publishing/#comment-1714407 https://jmfaye.free.fr/index.php?article1/introduction#c7737935680-1 https://badbuyerlist.org/buyer/721d40e2d365094e745e9fed 放たれた火で木が倒れる音が聞こえる。それに負けじと声を張り上げた。
もはや、己を見失いかけた彼には、情に訴えるしか方法が無い──そう信じて必死に言葉を繋いだ。
「今、ここで死んでしまったら、皆が後悔します!貴方を信じている人がまだ居ることを、ゆめ忘れられるなッ」
そこまで言い切ると、桜司郎は荒くなった呼吸を整える。
近藤は切なげに目を細めながら、その姿を見やった。
「…………そうか、俺はまだ皆を……」
ポツリと呟くと、苦々しそうに視線を落とす。
「……付けるべき始末が残っていたようだ。君の言う通りに、俺も撤退しよう。道を開いてくれるか」
その言葉は決して良い意味では無いだろう。だが、少なくとも今死ぬ気では無くなったことに一先ず安堵の息を吐いた。
そして、力強く頷く。
「お任せを。榊桜司郎、この刀にかけて局長を江戸まで御守りします──」
目立ちそうな陣羽織はその場に捨て置かせると、桜司郎は先陣を切って慎重に進んだ。
その間も、一言も近藤から言葉を発することはない。
やがて八王子に差し掛かった辺りで、土方と合流することが出来た。無論援軍などは連れていない。無事を喜んではいたが、早すぎる敗戦に眉間の皺を深くしていた。
だが責める言葉は一つも吐かず、ただ「良く無事だった」と言った。
近藤を無事に土方へと引き合せることが出来た安心のためか、途端に気持ちが緩む。来た道を振り返れば、夕陽を飲み込んでいく甲府の山脈へと烏達が吸い込まれていった。 江戸へと戻った甲陽鎮撫隊は、散り散りになりながらも和泉橋医学所へと集っていた。
否、もはや甲陽鎮撫隊にて集った新しい隊士達の殆どは此処には居ない。あっさりと負けたことに失望したのか、はたまた臆病風が吹いたのかは彼らしか知らないことだ。
元から新撰組に名を連ねている者や、近藤らと縁の深い者、意地の強い者だけが此処に居る。
しかし、永倉と原田は少し遅れての合流となった。無事を喜ぶことも無く、そのまま近藤や土方と話したいと言って人払いをしたのだ。
今後を話すというなら、桜司郎や山口を含めた幹部で話すだろう。二人が纏ったあの妙な空気には、嫌な予感しかしなかった。
奥の部屋へ籠ってから、ほんの半刻しか経たないというのに時が長く感じてならない。
桜司郎は騒ぐ気持ちを抑えようと、草履を突っかけるようにして履き、外へと出た。
門前に垂れた細い枝の先には、小さな芽が生まれていた。もう春がそこに来ていることを初めて知る。
「……あ。あそこにも芽が……」
見上げると、固い芽がポツポツとその存在を主張していた。
白い息を吐きながら、それを見詰めていると背後から人の気配を感じた。
振り向くよりも先に、肩へ半纏が掛けられる。
2023年12月11日「私は、新撰組のことも、お二人のことも、大好きです
「私は、新撰組のことも、お二人のことも、大好きです……。ですから、ですから……、迷惑をかけたくな───」
言い切る前に、身体に衝撃が走った。ふわりと鼻腔を香が掠める。控えめで優しい匂い。桜司郎が抱き着いてきたのだと直ぐに分かった。
その肩は大きく震え、縋るように馬越の肩口へ顔を埋めている。三年の付き合いとなるが、桜司郎がこのように弱さを見せるのは初めてだった。松原の時ですら、気丈に振舞っていたのだから。
「ごめ、ッ、ごめん……ごめんね……。馬越君ひとりに、全部、背負わせてしまったッ……」
何度も謝罪の言葉を続けた細い身体を抱き締め返す。https://johnsmith786.mystrikingly.com/blog/5c3cdf1896a https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/1003149.html https://note.com/carinacyril786/n/na5d803a97efe?sub_rt=share_pb 口を開けば自身も泣いてしまいそうだったため、代わりにその背をぽんぽんと撫でた。
誰からも愛され、かつ最強と謳われる沖田の後継という重圧をひとりで背負っているのだ。尊敬こそすれ、誰が恨み言など言えようか。
温い風が頬を撫で、涙を攫っていく。どれだけ時を惜しもうとも、待ってはくれないのだ。 馬越が隊を去り、やがて暑い夏が来た。この年は例年に比べて猛暑日が続き、屈強な新撰組隊士と言えども体調を崩す者が増えた。
特に病床の身である沖田をみ、何日も起き上がれぬ時すらあった。
やっとの思いで夏を越え、風が涼しさを帯びる頃。土方は沖田の部屋を訪れていた。
沖田は部屋の真ん中に敷かれた布団で寝ていたが、話し声に気付き、薄らと目を開けては傍らに座る土方と桜司郎へ視線を向ける。
「ひじ、かた……さん?どうしましたか……」
「ああ、起こしちまったか。具合は……良くは無さそうだな」
「身体は……言うことを聞いてくれませんが……。気分は良いですよ。さっきも夢を、見て……」
熱い息を吐きながら穏やかに笑う男が、やけに幼く見えた。昔を思い出した土方は、その頭を撫でる。
「夢か。どんなモンだ」
「江戸に居た頃の夢です……。皆と道場で稽古をして、水を浴びて、縁側で西瓜を食べました……」
病に冒されているせいか、寂しいのだろう。やけに昔の夢ばかり見るのだ。
「そりゃあ……良いな。西瓜が食いてえのか?まだどっかに売ってんだろう。買って来させる」
そう言うと、土方は部屋の隅に控える市村へ目配せをする。すっかり小姓役が板についた彼は素早く立ち上がると、部屋を出て行った。
「……催促したみたいで悪いなァ…………。あの子は?昔の平助みたいな子ですね」
「最近入った隊士でな、俺の小姓の市村鉄之助ってんだ。よく茶は零すし、剣の腕も良くないが気は効く」
「…………ふふ。貴方が褒めるなんて、良い子なんですね。ああ……斎藤君と平助は元気にしているかな」
その言葉に桜司郎はドキリとする。御陵衛士については、触れることを許されないような空気が流れているのだ。隊務から離れているとはいえ、沖田も知らぬわけでは無い。
だが、土方は咎める訳でもなく、むしろ申し訳無さそうに目を細めた。
「どうだろうな」
「ふたりとも、帰ってくればいいのに……」
心からの言葉なのだろう。熱で潤んだ瞳は真剣な色を湛えていた。普段は冗談でもこのようなことは言わなかったはずなのだが、何かが不安なのだろう。
桜司郎はそれに心当たりがあった。新撰組と御陵衛士の関係性が更に悪化しているのである。公然と伊東は新撰組を非難していると聞くが、それに対して意外と新撰組は御陵衛士を無視している。逆にそれが嵐の前の静けさのようで不気味だった。
この部屋に出入りしているのは桜司郎だけではない。故に風の噂で沖田の耳にも入っていたのかも知れない。
不安の色を隠さない沖田を見るのは初めてで、桜司郎の中に何かが芽生え始めた。
言い切る前に、身体に衝撃が走った。ふわりと鼻腔を香が掠める。控えめで優しい匂い。桜司郎が抱き着いてきたのだと直ぐに分かった。
その肩は大きく震え、縋るように馬越の肩口へ顔を埋めている。三年の付き合いとなるが、桜司郎がこのように弱さを見せるのは初めてだった。松原の時ですら、気丈に振舞っていたのだから。
「ごめ、ッ、ごめん……ごめんね……。馬越君ひとりに、全部、背負わせてしまったッ……」
何度も謝罪の言葉を続けた細い身体を抱き締め返す。https://johnsmith786.mystrikingly.com/blog/5c3cdf1896a https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/1003149.html https://note.com/carinacyril786/n/na5d803a97efe?sub_rt=share_pb 口を開けば自身も泣いてしまいそうだったため、代わりにその背をぽんぽんと撫でた。
誰からも愛され、かつ最強と謳われる沖田の後継という重圧をひとりで背負っているのだ。尊敬こそすれ、誰が恨み言など言えようか。
温い風が頬を撫で、涙を攫っていく。どれだけ時を惜しもうとも、待ってはくれないのだ。 馬越が隊を去り、やがて暑い夏が来た。この年は例年に比べて猛暑日が続き、屈強な新撰組隊士と言えども体調を崩す者が増えた。
特に病床の身である沖田をみ、何日も起き上がれぬ時すらあった。
やっとの思いで夏を越え、風が涼しさを帯びる頃。土方は沖田の部屋を訪れていた。
沖田は部屋の真ん中に敷かれた布団で寝ていたが、話し声に気付き、薄らと目を開けては傍らに座る土方と桜司郎へ視線を向ける。
「ひじ、かた……さん?どうしましたか……」
「ああ、起こしちまったか。具合は……良くは無さそうだな」
「身体は……言うことを聞いてくれませんが……。気分は良いですよ。さっきも夢を、見て……」
熱い息を吐きながら穏やかに笑う男が、やけに幼く見えた。昔を思い出した土方は、その頭を撫でる。
「夢か。どんなモンだ」
「江戸に居た頃の夢です……。皆と道場で稽古をして、水を浴びて、縁側で西瓜を食べました……」
病に冒されているせいか、寂しいのだろう。やけに昔の夢ばかり見るのだ。
「そりゃあ……良いな。西瓜が食いてえのか?まだどっかに売ってんだろう。買って来させる」
そう言うと、土方は部屋の隅に控える市村へ目配せをする。すっかり小姓役が板についた彼は素早く立ち上がると、部屋を出て行った。
「……催促したみたいで悪いなァ…………。あの子は?昔の平助みたいな子ですね」
「最近入った隊士でな、俺の小姓の市村鉄之助ってんだ。よく茶は零すし、剣の腕も良くないが気は効く」
「…………ふふ。貴方が褒めるなんて、良い子なんですね。ああ……斎藤君と平助は元気にしているかな」
その言葉に桜司郎はドキリとする。御陵衛士については、触れることを許されないような空気が流れているのだ。隊務から離れているとはいえ、沖田も知らぬわけでは無い。
だが、土方は咎める訳でもなく、むしろ申し訳無さそうに目を細めた。
「どうだろうな」
「ふたりとも、帰ってくればいいのに……」
心からの言葉なのだろう。熱で潤んだ瞳は真剣な色を湛えていた。普段は冗談でもこのようなことは言わなかったはずなのだが、何かが不安なのだろう。
桜司郎はそれに心当たりがあった。新撰組と御陵衛士の関係性が更に悪化しているのである。公然と伊東は新撰組を非難していると聞くが、それに対して意外と新撰組は御陵衛士を無視している。逆にそれが嵐の前の静けさのようで不気味だった。
この部屋に出入りしているのは桜司郎だけではない。故に風の噂で沖田の耳にも入っていたのかも知れない。
不安の色を隠さない沖田を見るのは初めてで、桜司郎の中に何かが芽生え始めた。
2023年12月10日 それを聞いた瞬間、桜司郎は目を見開く。
それを聞いた瞬間、桜司郎は目を見開く。
「どこの男が……、惚れた女子に情けない姿を見せたいと思いますか……」
ついに言ってしまったと沖田は視線を逸らす。桜司郎の瞳を見続けることが出来なかった。
「……本当は、この想いも墓場まで持っていくつもりだったんです。伝えたところで、長く生きてあげられないから。ですが、貴女が土方さんの好い人だと思った途端に……抑えきれなくなってしまった。……独り善がりで、臆病で、卑怯で、どうしようもない男なんですよ……私は──ッ!?」
桜司郎は腕をのばし沖田の袖を引くと、ぐいと引き寄せた。突然のことに体勢を崩した沖田は、そのまま暖かいものに包まれる。
頭を抱え込まれるようにして、https://www.keepandshare.com/discuss4/10887/ https://www.tumblr.com/carinadarling/736120850704646144/%E3%81%A4%E3%81%BE%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A8%E6%80%9D%E3%81%86%E9%AB%98%E6%9D%89%E3%81%AE%E6%B0%97%E6%8C%81?source=share http://johnsmith786.zohosites.com/ 抱き締められていると暫くしてから脳が理解した。
「桜花……さ、」
規則正しく、けれどもいつもよりも速く鳴る鼓動が沖田の鼓膜に響き、無性に安らかな心地になる。まるで母の胸に抱かれているようだ。
「やめて……。私の好きな人を悪く言わないで……。いくら沖田先生でも、それ以上言うなら怒りますよ……」
震える声を聞き、顔を上げれば清らかな雫が落ちてくる。美しい、と思った。
一体、他人のために泣ける人間が世にどれだけいるのだろう。この涙を見れただけでも、勇気を振り絞った甲斐があったなどと沖田はぼんやりと思った。
「…………桜花さん……」
切なげな沖田の声に、一度は捨てたはずの愛しさが込み上げる。今まで我慢してきた分の想いが涙となって止めどなく溢れた。
「……好き、好きです、沖田先生……」
「…………私は、貴女よりずっと早く死にますよ。来年の桜すら共に見られないかもしれない……。それでも、好きだと言ってくれますか……?」
「ええ、好きです。病なんて関係ない。それを言うなら、私だっていつ死ぬか分かりません……ッ」
頭を抱える腕の力が緩んだ隙に、沖田は座り直す。頬を伝う涙をそっと掬うと、身を乗り出して傷に障らないように気を使いながら抱き寄せた。
気が付けば、自身の頬にも熱いものが流れる。悲しさではなく、愛しさでも涙は出るものなのかと驚いた。
「……貴女は、生きて。誰かを庇うのではなく、自分が生き残ることを考えて下さい。良いですか?」
「…………はい」
有難うと、後頭部を撫でる。
「…………私はね。貴女を私だけのものにしたいとは言わない。生き生きとしている貴女が好きだから」
つまり、想いが通じようともこれからも関係性は変わらないということだ。妻にと望むことは簡単だが、それでは籠の鳥のように縛ることになってしまう。
そして近いうちに自分が死んだ時に、桜司郎が一人になってしまうことを恐れた。少なくとも新撰組であれば、誰かはいる。
「ああ……でも、勘違いしないで下さいね。私は存外に欲張りだから、他の誰にも渡すつもりは有りませんよ」
「はい……ッ」
桜司郎は何度も頷いた。 幸せだと桜司郎は言った。たった一言、好きだと伝えるだけでこのようにも喜ばせてあげられるのなら、もっと早く言えば良かったと沖田は切なげに目を細める。
抱き締める身体を離し、羽二重餅のように白く滑らかな頬を手でなぞった。そしてに額にかかる前髪を分けると、そこへ唇を落とす。
すると、ぴたりと涙は止まり、代わりに餌を強請る鯉のように口をパクパクとさせた。
「沖田先生、今……ッ」
「……ふふ。つい。あまりにも貴女が愛らしいのがいけないですよ」
そのように言えば、眉尻を下げて困ったように狼狽えている。感情というものは不思議なもので、自覚すれば更に増していく。
そこへ煌々とした朝日が差し込み、薄暗かった部屋が明るくなった。
「どこの男が……、惚れた女子に情けない姿を見せたいと思いますか……」
ついに言ってしまったと沖田は視線を逸らす。桜司郎の瞳を見続けることが出来なかった。
「……本当は、この想いも墓場まで持っていくつもりだったんです。伝えたところで、長く生きてあげられないから。ですが、貴女が土方さんの好い人だと思った途端に……抑えきれなくなってしまった。……独り善がりで、臆病で、卑怯で、どうしようもない男なんですよ……私は──ッ!?」
桜司郎は腕をのばし沖田の袖を引くと、ぐいと引き寄せた。突然のことに体勢を崩した沖田は、そのまま暖かいものに包まれる。
頭を抱え込まれるようにして、https://www.keepandshare.com/discuss4/10887/ https://www.tumblr.com/carinadarling/736120850704646144/%E3%81%A4%E3%81%BE%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A8%E6%80%9D%E3%81%86%E9%AB%98%E6%9D%89%E3%81%AE%E6%B0%97%E6%8C%81?source=share http://johnsmith786.zohosites.com/ 抱き締められていると暫くしてから脳が理解した。
「桜花……さ、」
規則正しく、けれどもいつもよりも速く鳴る鼓動が沖田の鼓膜に響き、無性に安らかな心地になる。まるで母の胸に抱かれているようだ。
「やめて……。私の好きな人を悪く言わないで……。いくら沖田先生でも、それ以上言うなら怒りますよ……」
震える声を聞き、顔を上げれば清らかな雫が落ちてくる。美しい、と思った。
一体、他人のために泣ける人間が世にどれだけいるのだろう。この涙を見れただけでも、勇気を振り絞った甲斐があったなどと沖田はぼんやりと思った。
「…………桜花さん……」
切なげな沖田の声に、一度は捨てたはずの愛しさが込み上げる。今まで我慢してきた分の想いが涙となって止めどなく溢れた。
「……好き、好きです、沖田先生……」
「…………私は、貴女よりずっと早く死にますよ。来年の桜すら共に見られないかもしれない……。それでも、好きだと言ってくれますか……?」
「ええ、好きです。病なんて関係ない。それを言うなら、私だっていつ死ぬか分かりません……ッ」
頭を抱える腕の力が緩んだ隙に、沖田は座り直す。頬を伝う涙をそっと掬うと、身を乗り出して傷に障らないように気を使いながら抱き寄せた。
気が付けば、自身の頬にも熱いものが流れる。悲しさではなく、愛しさでも涙は出るものなのかと驚いた。
「……貴女は、生きて。誰かを庇うのではなく、自分が生き残ることを考えて下さい。良いですか?」
「…………はい」
有難うと、後頭部を撫でる。
「…………私はね。貴女を私だけのものにしたいとは言わない。生き生きとしている貴女が好きだから」
つまり、想いが通じようともこれからも関係性は変わらないということだ。妻にと望むことは簡単だが、それでは籠の鳥のように縛ることになってしまう。
そして近いうちに自分が死んだ時に、桜司郎が一人になってしまうことを恐れた。少なくとも新撰組であれば、誰かはいる。
「ああ……でも、勘違いしないで下さいね。私は存外に欲張りだから、他の誰にも渡すつもりは有りませんよ」
「はい……ッ」
桜司郎は何度も頷いた。 幸せだと桜司郎は言った。たった一言、好きだと伝えるだけでこのようにも喜ばせてあげられるのなら、もっと早く言えば良かったと沖田は切なげに目を細める。
抱き締める身体を離し、羽二重餅のように白く滑らかな頬を手でなぞった。そしてに額にかかる前髪を分けると、そこへ唇を落とす。
すると、ぴたりと涙は止まり、代わりに餌を強請る鯉のように口をパクパクとさせた。
「沖田先生、今……ッ」
「……ふふ。つい。あまりにも貴女が愛らしいのがいけないですよ」
そのように言えば、眉尻を下げて困ったように狼狽えている。感情というものは不思議なもので、自覚すれば更に増していく。
そこへ煌々とした朝日が差し込み、薄暗かった部屋が明るくなった。
2023年12月10日です。皆言っていますが、先生の下で
です。皆言っていますが、先生の下で働けて幸せですよ」
それを聞いた沖田は複雑そうに微笑む。まるで気持ちが伝わっていないのではないかと、モヤモヤとした。まあ良いか、と思ったその時、
『沖田さん、あんた後悔するぞ。己の気持ちに向き合えない人間は、それ以上成長出来ぬ』
と斎藤の言葉が浮かぶ。
──分かってますよ、斎藤君。私も鈍いと散々言われてきましたが、この子も大概なのではないですか。
ハア、と小さく溜息を吐くと沖田は片腕で背を支えたまま、桜司郎の横へ移動した。
まさに一世一代の大勝負である。https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986481513&owner_id=68426994 https://carinadarling.usite.pro/blog/2023-12-06-1 https://www.keepandshare.com/discuss2/13251/ 池田屋へ突入した時よりも、はるかに緊張が走った。
「桜司郎──いや、桜花さん」
「はい?」
──なんと言えば良い。好きだ、惚れています……?否、それよりも先に言わねばならぬことがあるではないか。
沖田は、今は大人しくともざわつく胸に手を当てる。その目には静かな熱が宿っている。見た事のないそれに、桜司郎は息を飲む。「……貴女に言わなければならないことがあります」
「なん、でしょう……」
真剣な眼差しを受けて、桜司郎の鼓動は徐々に早まっていく。
だが、ふと沖田は瞳に哀を浮かべた。
「私の病…………。聡い貴女のことだから、もう気付いているとは思います」
病、の言葉に桜司郎は瞳を揺らす。ずっと気になりながらも目を逸らし続けたそれを、今聞かされることに心の準備が追い付いていなかった。
「……それ、は。今じゃなければいけませんか?」
「はい。私はもう貴女へ隠し事はしたくない……」
「…………分かりました」
急に胸がざわつき始める。このような心地になる時は、大体良くないことの前兆なのだ。
有難う、と沖田は微笑む。
「……私はね。労咳、なんです」
「…………ろう、がい……?」
先程まで幸せな気持ちで満たされていたというのに、目の前が真っ暗になる。その脳裏には痩せ衰え、大量の血を吐き、我を失う高杉の姿が浮かんでは消えた。
薄々とは分かっていた。分かっていたのだ。それでもではないと信じたかった。やっと話してくれたという少しの嬉しさと、なぜこの人が病にという憎らしさがせめぎ合う。
何も言葉が出てこない。目の前の現実が受け入れられず、ただ視線を彷徨わせるだけだった。
「そして昨日、血も吐きました。故に、そう永くは無いでしょう」
あくまでも沖田は他人事のように淡々と話す。死病だと分かって平気な人間が、この世の何処にいるだろうか。ここまで受け入れるために、どれだけの悲しみを越えてきたのかと思うだけで、胸が張り裂けそうに痛む。
──遠い。沖田先生、貴方が遠い。こんなにも近くにいるのに、ずっとずっと手の届かないところへ行ってしまっている気がする。
「……わたし、は。私では、貴方の力には……なれませんでしたか……?」
桜司郎は震える声で問い掛ける。少なくともそこらの平隊士よりは近くにいたつもりでいた。隣に立つことは叶わずとも、堂々と背を追うために努力を尽くしてきた。
だが、沖田はたったひとりで孤独を背負うことを決めてしまったのかと思うと、やり切れない気持ちになる。
表情を暗くした桜司郎を見た沖田は、首を振りながら僅かに身体を乗り出した。
「……違う!私は、私が労咳だと知れることでこの関係が崩れてしまうのが……そう、怖かったんだ。新撰組にいるためには……貴女と共に歩むためには、一番組組長で在り続けなければならない。床に臥せる病人では駄目だった……!」
「どうして…………?」
その問い掛けに、沖田は拳を固めると覚悟を決めたように、桜司郎の瞳を見詰める。頬や耳を薄らと朱に染め、ずっと抑えてきた思いを腹の底から押し上げた。
──もう後戻りは出来ない。
「──あ、あなたに惚れているからです!」
それを聞いた沖田は複雑そうに微笑む。まるで気持ちが伝わっていないのではないかと、モヤモヤとした。まあ良いか、と思ったその時、
『沖田さん、あんた後悔するぞ。己の気持ちに向き合えない人間は、それ以上成長出来ぬ』
と斎藤の言葉が浮かぶ。
──分かってますよ、斎藤君。私も鈍いと散々言われてきましたが、この子も大概なのではないですか。
ハア、と小さく溜息を吐くと沖田は片腕で背を支えたまま、桜司郎の横へ移動した。
まさに一世一代の大勝負である。https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986481513&owner_id=68426994 https://carinadarling.usite.pro/blog/2023-12-06-1 https://www.keepandshare.com/discuss2/13251/ 池田屋へ突入した時よりも、はるかに緊張が走った。
「桜司郎──いや、桜花さん」
「はい?」
──なんと言えば良い。好きだ、惚れています……?否、それよりも先に言わねばならぬことがあるではないか。
沖田は、今は大人しくともざわつく胸に手を当てる。その目には静かな熱が宿っている。見た事のないそれに、桜司郎は息を飲む。「……貴女に言わなければならないことがあります」
「なん、でしょう……」
真剣な眼差しを受けて、桜司郎の鼓動は徐々に早まっていく。
だが、ふと沖田は瞳に哀を浮かべた。
「私の病…………。聡い貴女のことだから、もう気付いているとは思います」
病、の言葉に桜司郎は瞳を揺らす。ずっと気になりながらも目を逸らし続けたそれを、今聞かされることに心の準備が追い付いていなかった。
「……それ、は。今じゃなければいけませんか?」
「はい。私はもう貴女へ隠し事はしたくない……」
「…………分かりました」
急に胸がざわつき始める。このような心地になる時は、大体良くないことの前兆なのだ。
有難う、と沖田は微笑む。
「……私はね。労咳、なんです」
「…………ろう、がい……?」
先程まで幸せな気持ちで満たされていたというのに、目の前が真っ暗になる。その脳裏には痩せ衰え、大量の血を吐き、我を失う高杉の姿が浮かんでは消えた。
薄々とは分かっていた。分かっていたのだ。それでもではないと信じたかった。やっと話してくれたという少しの嬉しさと、なぜこの人が病にという憎らしさがせめぎ合う。
何も言葉が出てこない。目の前の現実が受け入れられず、ただ視線を彷徨わせるだけだった。
「そして昨日、血も吐きました。故に、そう永くは無いでしょう」
あくまでも沖田は他人事のように淡々と話す。死病だと分かって平気な人間が、この世の何処にいるだろうか。ここまで受け入れるために、どれだけの悲しみを越えてきたのかと思うだけで、胸が張り裂けそうに痛む。
──遠い。沖田先生、貴方が遠い。こんなにも近くにいるのに、ずっとずっと手の届かないところへ行ってしまっている気がする。
「……わたし、は。私では、貴方の力には……なれませんでしたか……?」
桜司郎は震える声で問い掛ける。少なくともそこらの平隊士よりは近くにいたつもりでいた。隣に立つことは叶わずとも、堂々と背を追うために努力を尽くしてきた。
だが、沖田はたったひとりで孤独を背負うことを決めてしまったのかと思うと、やり切れない気持ちになる。
表情を暗くした桜司郎を見た沖田は、首を振りながら僅かに身体を乗り出した。
「……違う!私は、私が労咳だと知れることでこの関係が崩れてしまうのが……そう、怖かったんだ。新撰組にいるためには……貴女と共に歩むためには、一番組組長で在り続けなければならない。床に臥せる病人では駄目だった……!」
「どうして…………?」
その問い掛けに、沖田は拳を固めると覚悟を決めたように、桜司郎の瞳を見詰める。頬や耳を薄らと朱に染め、ずっと抑えてきた思いを腹の底から押し上げた。
──もう後戻りは出来ない。
「──あ、あなたに惚れているからです!」
2023年12月10日襦袢の肩口に沖田の手がかかり
襦袢の肩口に沖田の手がかかり、するりと解かれそうになるのを、桜司郎は赤い顔をしながら袷を引き寄せて抵抗する。
「嫌、ですか……?それなら無理強いは出来ません……」
寂しげな声音を出されると、途端に自分が間違っているような感覚に陥る。これも惚れた弱みなのだろうか。桜司郎は羞恥心を何とか打ち払うと、自ら襦袢を肩から落とした。
これも全て、都合の良い幸せな夢なのかも知れないと思いながら。
「それなら……背中……だけ、お願いします」
そのように言えば、沖田は純粋な笑みを浮かべて頷いた。
固く搾った手拭いで首筋から肩、https://www.keepandshare.com/discuss4/10885/ https://www.tumblr.com/mathewanderson786/735964431867117568/%E3%81%88%E3%81%88-%E3%81%88%E3%81%88%E6%A1%9C%E5%8F%B8%E9%83%8E%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AF%E5%B7%B1%E3%81%8C%E5%8B%99%E3%82%81%E3%82%92%E6%9E%9C%E3%81%9F%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%94%E7%AB%8B%E6%B4%BE%E3%81%AA%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99-%E3%81%9D%E3%81%86%E8%A8%80%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%8C?source=share https://carinadarling78.zohosites.com/ 背にかけて拭っていく。安芸や稽古で負ったと思われる傷痕が痛々しい。柔らかな朝の光が射し込み、薄く白い肌をより透き通らせた。
──思えば、あの夜も傷の手当を手伝ったな。
ぼんやりとそう思いながら、沖田は刀傷に沿うように指を這わせた。すると、びくりと肩が跳ねる。
桜司郎から抗議の言葉が飛んでくる前に、口を開いた。
「桜司郎さん……。もう二度と、自分を犠牲にしないと約束して下さい」
背を拭き終わり、新しい襦袢を肩へ掛けてやる。
「それは…………」
桜司郎はドキリとしながらも口ごもった。まるで、今回負傷した時に考えていたことがバレているようなそれに内心焦る。
それに隊士として生きている以上、このように怪我を負うことはこれからもあるだろう。場しのぎの返事はいくらでも出来るが、沖田へ嘘を吐くのは嫌だった。
「いきなりどうしました?隊務で怪我をするなんて、有り得ることじゃないですか」
誤魔化すようなそれに、沖田は眉間に皺を寄せる。
「……"身代わりになってあげたかった"。貴女は……確かにそう言いました」
何故それを沖田が知っているのかと言葉を失った。確かそれは山野へ言った筈なのだ。 山野はああ見えて口が硬い。告げ口をするようにも思えなかった。
桜司郎は昨夜のとの会話を何とか思い出そうとする。すると、ひとつ違和感に気付いた。
『……何故、自身を犠牲にするんだ。沖田にそのような価値など無いだろうに』
沖田を崇拝する山野が、"沖田"などと呼び捨てにする訳がないのである。
──まさか。あれは、八十八君ではなくて……。
「お、沖田先生……いつから、居たのです……?」
どくんどくんと鼓動が高鳴った。もしあれが山野ではなく、沖田であるとするならば、本人へ好きだと言ってしまったことになる。
肩に掛けられた新しいそれに袖を通すことも忘れ、落ち着かない気持ちを抑えるように敷布の裾を掴んだ。
「昨夜からですよ。南部先生は会津中将様の元へ行かねばならなくなってしまい、代わりに私が残ったのです」
その回答に、桜司郎は目を丸くしながら顔を上げる。引き攣れるような脇腹の痛みが襲うが、それすらも気にならない。
──もしかすると、あれは……あのは、夢じゃなかったの……?
『…………私も、貴女のことが好きだ……』
朧気ながらも、その優しい響きはずっと残っている。だがそれを確かめる勇気が無かった。勘違いだとしたら、立ち直れないと思ったのだ。
「そう、でしたか……」
「ええ。斬り合いをして怪我をするのは仕方の無いことだとは思います。しかし、誰かを庇うこととは話しが違う。……もう、貴女が傷付くのを見るのはつらい」
切なる言葉に、桜司郎の心は揺れる。その意味が部下に対する親愛だとしても、嬉しかった。
「本当に、沖田先生は良い
「嫌、ですか……?それなら無理強いは出来ません……」
寂しげな声音を出されると、途端に自分が間違っているような感覚に陥る。これも惚れた弱みなのだろうか。桜司郎は羞恥心を何とか打ち払うと、自ら襦袢を肩から落とした。
これも全て、都合の良い幸せな夢なのかも知れないと思いながら。
「それなら……背中……だけ、お願いします」
そのように言えば、沖田は純粋な笑みを浮かべて頷いた。
固く搾った手拭いで首筋から肩、https://www.keepandshare.com/discuss4/10885/ https://www.tumblr.com/mathewanderson786/735964431867117568/%E3%81%88%E3%81%88-%E3%81%88%E3%81%88%E6%A1%9C%E5%8F%B8%E9%83%8E%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AF%E5%B7%B1%E3%81%8C%E5%8B%99%E3%82%81%E3%82%92%E6%9E%9C%E3%81%9F%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%94%E7%AB%8B%E6%B4%BE%E3%81%AA%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99-%E3%81%9D%E3%81%86%E8%A8%80%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%8C?source=share https://carinadarling78.zohosites.com/ 背にかけて拭っていく。安芸や稽古で負ったと思われる傷痕が痛々しい。柔らかな朝の光が射し込み、薄く白い肌をより透き通らせた。
──思えば、あの夜も傷の手当を手伝ったな。
ぼんやりとそう思いながら、沖田は刀傷に沿うように指を這わせた。すると、びくりと肩が跳ねる。
桜司郎から抗議の言葉が飛んでくる前に、口を開いた。
「桜司郎さん……。もう二度と、自分を犠牲にしないと約束して下さい」
背を拭き終わり、新しい襦袢を肩へ掛けてやる。
「それは…………」
桜司郎はドキリとしながらも口ごもった。まるで、今回負傷した時に考えていたことがバレているようなそれに内心焦る。
それに隊士として生きている以上、このように怪我を負うことはこれからもあるだろう。場しのぎの返事はいくらでも出来るが、沖田へ嘘を吐くのは嫌だった。
「いきなりどうしました?隊務で怪我をするなんて、有り得ることじゃないですか」
誤魔化すようなそれに、沖田は眉間に皺を寄せる。
「……"身代わりになってあげたかった"。貴女は……確かにそう言いました」
何故それを沖田が知っているのかと言葉を失った。確かそれは山野へ言った筈なのだ。 山野はああ見えて口が硬い。告げ口をするようにも思えなかった。
桜司郎は昨夜のとの会話を何とか思い出そうとする。すると、ひとつ違和感に気付いた。
『……何故、自身を犠牲にするんだ。沖田にそのような価値など無いだろうに』
沖田を崇拝する山野が、"沖田"などと呼び捨てにする訳がないのである。
──まさか。あれは、八十八君ではなくて……。
「お、沖田先生……いつから、居たのです……?」
どくんどくんと鼓動が高鳴った。もしあれが山野ではなく、沖田であるとするならば、本人へ好きだと言ってしまったことになる。
肩に掛けられた新しいそれに袖を通すことも忘れ、落ち着かない気持ちを抑えるように敷布の裾を掴んだ。
「昨夜からですよ。南部先生は会津中将様の元へ行かねばならなくなってしまい、代わりに私が残ったのです」
その回答に、桜司郎は目を丸くしながら顔を上げる。引き攣れるような脇腹の痛みが襲うが、それすらも気にならない。
──もしかすると、あれは……あのは、夢じゃなかったの……?
『…………私も、貴女のことが好きだ……』
朧気ながらも、その優しい響きはずっと残っている。だがそれを確かめる勇気が無かった。勘違いだとしたら、立ち直れないと思ったのだ。
「そう、でしたか……」
「ええ。斬り合いをして怪我をするのは仕方の無いことだとは思います。しかし、誰かを庇うこととは話しが違う。……もう、貴女が傷付くのを見るのはつらい」
切なる言葉に、桜司郎の心は揺れる。その意味が部下に対する親愛だとしても、嬉しかった。
「本当に、沖田先生は良い
2023年12月06日「鈴木君。
「鈴木君。何か熱心に見詰めていたようだけれど、珍しい物でもいたのですか?」
伊東のその質問に、桜司郎は少しだけ驚いた表情になった。よく人を観察していると感心する。
「え、ええ。白い──」
白岩のことを言おうとしたが、口を噤んだ。思い起こせば彼は隊を脱走した身である。言えば捕まり、処断されてしまうのではないか。も見たかったですよ」
「残念ながらもう飛んで行ってしまいました。また見付けたら教えますね」
伊東と桜司郎は穏やかな会話を繰り広げているが、https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/12/04/185530 https://william-l.cocolog-nifty.com/blog/2023/12/post-44b74a.html https://community.joomla.org/events/my-events/huaikashii-mengwo-jianteimashita.html
それとは反対に近藤は落胆の色を濃くする。深い溜息と共に白い霧が広がった。
帰路に着くも、断られて万策も尽きた悲しみからか、近藤は何処か上の空である。
国泰寺へ向かう林道はこの三人以外に誰もおらず、ただ風の泣く声だけが響いていた。背の高い木々には雪が積もり、突風が吹けば落ちそうである。
「近藤局長。致し方ありませんよ。そもそもが駄目で元々だったではありませんか。また策を練りましょう」
「う、うむぅ……。そうだな……」
伊東に慰められつつ、近藤は歩みを進めた。いつもであれば、近藤は直ぐに気持ちを切り替えられる。だが、今回ばかりは引き摺っていた。何故なら此度の訊問使同行に命を賭け、地元には遺書すら送っている。土方や沖田の反対をも振り切って来ただけに、何の成果も上げられずに帰るのは屈辱でしか無かった。
池田屋事件以来、これといった目覚ましい活躍もなく市中見回りと不逞浪士の取り締まりだけに精を出すしかない日々に焦りを感じていた。長州へ立ち入り、何らかの情報を引き出すことが出来れば、もっと新撰組の名を上げることが出来るのではないかと期待していただけに落胆も強い。
「鈴木君、どうしましたか」
背中で聞いていた雪を踏む音が消えたため、伊東は足を止めて振り返った。桜司郎は真剣な顔付きで視線を彷徨わせ、辺りを伺っている。伊東もそれに倣うが、まるで何も分からなかった。
「……においませんか」
桜司郎はそう言うと、鼻を動かす。歩いていた時にふと冬の空気の匂いに混じって、変なそれが鼻腔を掠めたのである。普段であれば気に留めないのだが、それには覚えがあった。
──これは。
壬生寺での銃の調練を遠目から見ていた時に、嗅いだ記憶が蘇った。間違いなくそれが硝煙のものだと気付き、視線を動かすが木々に囲まれた道であるため分かりづらい。
目を瞑り、耳を澄ませば風の音が滞る場所が左右合わせて二箇所ほどあった。間違いなく誰かが潜んでいると確信を得る。
その時だった。突然背後から雪を激しく踏む音が近付いてくる。桜司郎は振り向きざまに抜刀した。キン、と金属音が辺りに鳴り響く。気付くのが遅れれば今頃地に伏していただろう。目の前には狐の面を付けた男が立っていた。
「鈴木君!」
「大丈夫ですッ。局長は新手に注意して下さいッ」
迫る刀を受け流せば、男は飛び退いて間合いを取る。男の斬撃は重く、刀を持つ腕がジンと痺れた。かなりの使い手だということが一太刀で分かる。
休む間もなく、男は何度も斬撃を繰り出し、桜司郎はそれを受け流した。まともに刃をぶつからせれば間違いなく折れてしまう。そうすれば護衛など出来ない。
伊東のその質問に、桜司郎は少しだけ驚いた表情になった。よく人を観察していると感心する。
「え、ええ。白い──」
白岩のことを言おうとしたが、口を噤んだ。思い起こせば彼は隊を脱走した身である。言えば捕まり、処断されてしまうのではないか。も見たかったですよ」
「残念ながらもう飛んで行ってしまいました。また見付けたら教えますね」
伊東と桜司郎は穏やかな会話を繰り広げているが、https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/12/04/185530 https://william-l.cocolog-nifty.com/blog/2023/12/post-44b74a.html https://community.joomla.org/events/my-events/huaikashii-mengwo-jianteimashita.html
それとは反対に近藤は落胆の色を濃くする。深い溜息と共に白い霧が広がった。
帰路に着くも、断られて万策も尽きた悲しみからか、近藤は何処か上の空である。
国泰寺へ向かう林道はこの三人以外に誰もおらず、ただ風の泣く声だけが響いていた。背の高い木々には雪が積もり、突風が吹けば落ちそうである。
「近藤局長。致し方ありませんよ。そもそもが駄目で元々だったではありませんか。また策を練りましょう」
「う、うむぅ……。そうだな……」
伊東に慰められつつ、近藤は歩みを進めた。いつもであれば、近藤は直ぐに気持ちを切り替えられる。だが、今回ばかりは引き摺っていた。何故なら此度の訊問使同行に命を賭け、地元には遺書すら送っている。土方や沖田の反対をも振り切って来ただけに、何の成果も上げられずに帰るのは屈辱でしか無かった。
池田屋事件以来、これといった目覚ましい活躍もなく市中見回りと不逞浪士の取り締まりだけに精を出すしかない日々に焦りを感じていた。長州へ立ち入り、何らかの情報を引き出すことが出来れば、もっと新撰組の名を上げることが出来るのではないかと期待していただけに落胆も強い。
「鈴木君、どうしましたか」
背中で聞いていた雪を踏む音が消えたため、伊東は足を止めて振り返った。桜司郎は真剣な顔付きで視線を彷徨わせ、辺りを伺っている。伊東もそれに倣うが、まるで何も分からなかった。
「……においませんか」
桜司郎はそう言うと、鼻を動かす。歩いていた時にふと冬の空気の匂いに混じって、変なそれが鼻腔を掠めたのである。普段であれば気に留めないのだが、それには覚えがあった。
──これは。
壬生寺での銃の調練を遠目から見ていた時に、嗅いだ記憶が蘇った。間違いなくそれが硝煙のものだと気付き、視線を動かすが木々に囲まれた道であるため分かりづらい。
目を瞑り、耳を澄ませば風の音が滞る場所が左右合わせて二箇所ほどあった。間違いなく誰かが潜んでいると確信を得る。
その時だった。突然背後から雪を激しく踏む音が近付いてくる。桜司郎は振り向きざまに抜刀した。キン、と金属音が辺りに鳴り響く。気付くのが遅れれば今頃地に伏していただろう。目の前には狐の面を付けた男が立っていた。
「鈴木君!」
「大丈夫ですッ。局長は新手に注意して下さいッ」
迫る刀を受け流せば、男は飛び退いて間合いを取る。男の斬撃は重く、刀を持つ腕がジンと痺れた。かなりの使い手だということが一太刀で分かる。
休む間もなく、男は何度も斬撃を繰り出し、桜司郎はそれを受け流した。まともに刃をぶつからせれば間違いなく折れてしまう。そうすれば護衛など出来ない。