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Posted by 京つう運営事務局  at 

2023年12月01日

です…ッ」

です…ッ」

 大きな目からはポロポロと涙がとめどなく流れ落ちた。勿論面識のない桜司郎は戸惑いながらも首を横に振る。


「その、恐らく人違いではないですか……?私は"おうのすけ"さんという方ではありません」

 そう言えば、"歌"と名乗る女性は明らかに落胆の色を滲ませた。涙を拭うと、深々と頭を下げる。


 「も、申し訳ございませぬ。https://janessa.e-monsite.com/blog/--79.html https://www.evernote.com/shard/s330/sh/5d4a946b-4aa3-7564-5621-7752158d9900/GTm4QB2Vbj8U6cj05rma-MFjOowBs4_q8DjlJHXpPithC-9vmaDaGeBtwQ https://blog.udn.com/79ce0388/180108912 人違いでございましたか。お恥ずかしゅうございます……。その、貴方様が知人によう似てまして」

「他人の空似という奴ですかね。気にしていませんよ。では、これで」


 桜司郎はそう言うと、何処か後ろ髪を引かれる思いを感じながらも、笑みを浮かべて去ろうとした。
だが、その袖を歌が引っ張る。


「あ、あの。本当に、私のことは知りませんか。御生まれはどちらに……?」

 余程似ているのだろうか、歌は諦めきれないといった様子だった。桜司郎は自分に記憶が無いことを伝える。すると、歌は未だ潤んだ瞳で桜司郎を見詰めた。


「記憶が……。そのような事があるのですね。お可哀相に……。そうだ、お時間があれば我が家に来て頂けませんか。母も驚きます故。此方です」

 歌はそう言うと、返事も聞かずに先に歩き出す。置いていかれた桜司郎は考える間もなく、その後を着いて行った。このせっかちで天然気質な女性がどうにも赤の他人と思えなかったのだ。 歌について東に向かって歩いていくと、やがて小さな敷地の屋敷が集中するように建ち並んでいた。そこは、将軍の警護を担うや鉄砲組同心などの下級幕臣の住む町、通称はという。

「我が家はこちらです。狭くて申し訳のうございますが……。少々お待ち頂けますか」

 思わず着いて来てしまったが、良かったのだろうかと思いつつ桜司郎は辺りを見渡した。

 近くには三味線掘と呼ばれる堀があった。上野のから忍川を流れた水が、この三味線堀を経由して、隅田川へと通じていた。堀には船着場があり、木材や野菜、砂利などを輸送する船が隅田川方面から往来している。


 下町ならではの生活感、活気、その全てが心を満たしていった。風に誘われるように、どこかの家の庭に植えてある小さな梅の木の香が鼻腔を掠める。

──初めて来た筈なのに、初めてじゃない気がする。どうしてこんなにも懐かしいの。どうして泣きたいような気持ちになるの。

 郷愁の念というのはこの様なことを云うのだろうか。理由も分からずに胸がいっぱいになり、鼻の奥が熱い。


 やがて、時も経たずに屋敷の中から白髪混じりの女性が出て来た。桜司郎は気配を感じて振り向く。すると、女性は歌と同じようにこれでもかと目を見開いた。

「おうのすけ……。お前さま、生きておられたのですか。にしても、まるで時を止めたかのように見目が変わらないと云うのはどういう事でしょう……。この様なところで立ち話も何です。家へお入りなさいな」


 人違いという前に桜司郎は背を押されて室内へ入る。茶を出され、桜司郎は女性──琴と歌の前に正座をして向かい合っていた。

 話しを聞いてみると、こうである。
桜司郎によく似た男は"おうのすけ"といい、漢字は桜之丞と書くらしい。近所に住んでおり、この榎本家とは家族ぐるみで親交があった。特にこの歌を許嫁にしようという話しが挙がっていた程である。

だが、十年前の安政の大地震に伴う火事で、人命救助に行くといい飛び出した後、命を落としてしまったという。


「そんなにも私は、その桜之丞さんに似ていますか……?」
  

Posted by Curryson  at 17:31Comments(0)

2023年12月01日

そこで夢は途切れた。

そこで夢は途切れた。土方の意識が覚醒したからである。

随分と懐かしい夢を見たものだと思いつつ、土方は起き上がり額に手を当てた。

日が明けた頃くらいだろうか、障子の向こうからはほんのりと光が差し込む。烏の鳴き声が何処からか聞こえた。


──あの侍の名は何と云っただろうか。ガキの頃の話だから思い出せねえ。

思えば、あの頃から武士になるために強くなりたいという明確な目標を持ったのだろう。記憶の片隅に押し込める程度の出会いだったが、あれは人生において確かな意味を持っていたのだ。


ぼんやりとした頭を振るい、ふと隣に目を向けると既に桜司郎の姿が無い。https://www.bloglovin.com/@freelancer10/12242671 https://lefuz.pixnet.net/blog/post/120771775 https://janessa.e-monsite.com/blog/--76.html きっちりと寝間着が枕元に畳まれていた。

「あいつ……何処に」

土方は斎藤を起こさないように立ち上がると、寝間着を脱ぎ捨て、着物をサッと着流す。

そして廊下に出た。すると既に起きていた彦五郎と出会す。

「おう、歳三か。随分と早いな。おはようさん」

「おはよう。うちの隊士……鈴木を知らねえか?起きたらもう居なくてよ」

そう問いかけると、彦五郎はアアと声を漏らした。


「稽古がしたいって云うもんだから、うちの道場を勧めたんだが。それは申し訳ないと断られちまってよ。多摩川も悪くねえと思ってそっちを紹介しといたぜ」

相変わらず稽古の虫か、と土方は苦笑いをすると彦五郎へ礼を言って玄関へ向かう。草履を適当に引っ掛けて、直ぐ近くの多摩川へ足を運んだ。


朝陽に照らされて、水面が煌めいている。眩しさに目を細めると、河原で木刀を振るう人影を見付けた。

ここまで真面目に剣術と向き合う奴も珍しいと目を細め、近付いていく。
足音に気付いたのか、桜司郎は額の汗を手で拭い、土方の方をった。

「あ……おはようございます。土方副長」

川を背に笑みを浮かべる桜司郎に、土方はふと無意識のうちに夢の中の男を重ねる。


「……おはよう。お前さんはいつでも真面目だな。何故、そんなに剣術を極めようとするんだ?」

「うーん……。何でしょうね、こうしていると魂が安らぐというか、安心するんです」


そう言って困ったように微笑む桜司郎が土方には眩しく見えた。川の水面に陽光が反射しているからか、桜司郎そのものが眩しいのかは分からない。

そうか、と一言呟くと土方は近くに腰を下ろした。稽古を再開すべきか、それとも戻るべきかと迷う桜司郎へ隣に座るように促す。
桜司郎はその通りに横に座り、川を眺めた。

「どうだ、石田村は。悪かァねえだろ」

「はい。居心地が良いところだと思います。副長のお姉さんもお義兄さんも優しいですし……」

「とく姉さんは俺の親代わりだったからな。姉弟でもあり、親でもあり……。兎に角世話になったんだ」

そう話す土方の横顔は穏やかそのものである。

「親……か」

「お前さんも早く記憶が戻って、おっ母さんや故郷の事……思い出せるといいな」


その声音は今までで一番優しかった。桜司郎は小さく頷くと、抱き抱えた膝に顔を埋める。その日は土方と斎藤は連れ立って、石田村とその周囲の新撰組の後援者達に挨拶回りに行った。

手持ち無沙汰になった桜司郎は縁側で柱に凭れかかり、心地好い春の陽射しを全身で受けている。

遠くに来客を告げる声が聞こえたが、うとうとと船を漕ぎ始めた桜司郎の耳には届いていなかった。


ふと気配がして、寝ぼけ眼を開けると目の前には自分を覗き込む男の姿がぼんやりと映る。

「う、わぁッ!」

それを認識した桜司郎は思わず悲鳴を上げた。男は面白そうに腹を抱えて笑い出す。眉間に刀傷を拵えた、端麗な顔立ちの男はニコリと人懐こい笑みを浮かべた。


「久しぶりッ!鈴木ッ。文届いたよ〜。入隊したんだねッ。嬉しいよ」
  

Posted by Curryson  at 16:55Comments(0)

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