2024年11月27日土方は後ろを向かない。
土方は後ろを向かない。
平静を装っているつもりだろうが、窓枠にさっき使った形跡がある硯と急いで隠したであろう『豊玉発句集』が足元からはみ出ている。
クスッ
山南は小さく笑った。
「美海くんは沖田くんが好きらしい」
バッ
「本人が言ったのか?」
土方は勢いよく振り向くと目を大きく見開いた。
「いや。本人は言うどころか気付いてもいないけどね」
「じゃあなんで…」
山南は先刻の話を土方にした。
「なるほど…。こりゃ総司と同じ種類だ。総司も何ヶ月か前までそんなこと言ってたな」
「相談されたのかい?」
「あぁ」
「なんて言ったんだ?」
「あいつは究極の鈍感だからはっきり言ってやったさ。そしたらあいつ急によそよそしくなりやがった」
土方は話ながら微笑している。
「二人共異常なぐらいに色恋に疎いからね…」
山南は苦笑いだ。
「で…。なんだ?あんたが悩みあるんじゃないか?」 https://mathewanderson.livedoor.blog/archives/5242866.html https://mathewanderson.blogg.se/2024/november/entry.html https://mathewanderson.asukablog.net/Entry/8/
土方は山南を真っ直ぐ見つめる。
「……ははっ。なんでもわかるんだね。土方くんには敵わない」
山南は一瞬びっくりしたような顔をして、すぐに苦笑いになった。
「まぁ伊達に新撰組副長してるわけじゃあるめぇよ」
「……近藤さんも呼んでくれ」
「…わかった」
山南の顔を見るとかなり思い詰めている。ただ事ではないと感じた土方は急いで近藤を呼びに行った。
ここまでとは…。
いったい何が彼をあんな顔にさせてるのか。土方さえ見当もつかなかった。
ガラッ
「サンナン!なんだ?」
近藤は急いで来たようで息が荒い。
土方からただ事ではないと聞いたのだろう。
「座ってくれ…」
山南が席を用意した。
座敷は前に土方、近藤、向かいに山南が座っている。
「率直に言う」
近藤と土方は息を呑んだ。
「私を降格させてくれ」
「…え?」
近藤はポカーンとしている。
なるほど。
土方はそう思った。
「私を元の副長職に戻してほしい」
かなり悩んだ結果なのだろう。冗談ではない。
「な…なんでだ?」
土方は黙っている。
「総長には私の居場所はない。参謀ができた今、なんの役に立つと言うのだ」
その通りなのだ。只でさえ近藤の相談役のような立場なのに『参謀』という位置ができたため、もはや山南はすることがない。飾り物だ。
山南が副長に戻りたい理由はまだあった。
まだあるというより一番の理由かもしれない。
隊士への指揮権が全くないのである。指令は局長、副長、助勤、隊士と流れるためだ。
「うむ…。確かに…」
近藤は頷く。
「戻してくれ」
「わかっ「駄目だ」
近藤の言葉を遮ったのは土方だ。
このまま副長に戻れると思っていた山南は目を見開いた。
「何故だ」
「指揮官が多ければ多いほど隊全体が混乱する」
副長は俺一人でいい。
そう言いたいのだろう。
「じゃあ土方くんが総長に格上げしてもらったらどうだ」
「それは無理な話だ」
いつもは温厚な山南も引かない。お互いがズケズケとした言い方になる。
近藤はオロオロとその場を見守るだけだ。
「土方くんは新撰組をいったいどうしたいんだ!本来は我々も志しているはずの攘夷を説く志士を見つけてはバサバサと斬り倒して!これじゃあ本当にただの人斬り集団じゃないか!」
「あんた。本当にそう思ってんのか…?」
土方は下を向いてフルフルと震えている。
「は?」
「本当にここを人斬り集団と思ってんのかよ!」
土方はいつになくキレている。
「あぁ!そうだ!」
お互い息を荒くしながら座っている。
「………失望したぜ」
「それはこっちの方だ」
「あんた…。伊東が来てからおかしくなったんじゃないか?」
「歳!」
近藤は土方が伊東と言ったことが気に障ったのだろう。
「なにを!」
ガタンと山南は立ち上がる。
「剣を握らない男に指揮官が務まるか」
平静を装っているつもりだろうが、窓枠にさっき使った形跡がある硯と急いで隠したであろう『豊玉発句集』が足元からはみ出ている。
クスッ
山南は小さく笑った。
「美海くんは沖田くんが好きらしい」
バッ
「本人が言ったのか?」
土方は勢いよく振り向くと目を大きく見開いた。
「いや。本人は言うどころか気付いてもいないけどね」
「じゃあなんで…」
山南は先刻の話を土方にした。
「なるほど…。こりゃ総司と同じ種類だ。総司も何ヶ月か前までそんなこと言ってたな」
「相談されたのかい?」
「あぁ」
「なんて言ったんだ?」
「あいつは究極の鈍感だからはっきり言ってやったさ。そしたらあいつ急によそよそしくなりやがった」
土方は話ながら微笑している。
「二人共異常なぐらいに色恋に疎いからね…」
山南は苦笑いだ。
「で…。なんだ?あんたが悩みあるんじゃないか?」 https://mathewanderson.livedoor.blog/archives/5242866.html https://mathewanderson.blogg.se/2024/november/entry.html https://mathewanderson.asukablog.net/Entry/8/
土方は山南を真っ直ぐ見つめる。
「……ははっ。なんでもわかるんだね。土方くんには敵わない」
山南は一瞬びっくりしたような顔をして、すぐに苦笑いになった。
「まぁ伊達に新撰組副長してるわけじゃあるめぇよ」
「……近藤さんも呼んでくれ」
「…わかった」
山南の顔を見るとかなり思い詰めている。ただ事ではないと感じた土方は急いで近藤を呼びに行った。
ここまでとは…。
いったい何が彼をあんな顔にさせてるのか。土方さえ見当もつかなかった。
ガラッ
「サンナン!なんだ?」
近藤は急いで来たようで息が荒い。
土方からただ事ではないと聞いたのだろう。
「座ってくれ…」
山南が席を用意した。
座敷は前に土方、近藤、向かいに山南が座っている。
「率直に言う」
近藤と土方は息を呑んだ。
「私を降格させてくれ」
「…え?」
近藤はポカーンとしている。
なるほど。
土方はそう思った。
「私を元の副長職に戻してほしい」
かなり悩んだ結果なのだろう。冗談ではない。
「な…なんでだ?」
土方は黙っている。
「総長には私の居場所はない。参謀ができた今、なんの役に立つと言うのだ」
その通りなのだ。只でさえ近藤の相談役のような立場なのに『参謀』という位置ができたため、もはや山南はすることがない。飾り物だ。
山南が副長に戻りたい理由はまだあった。
まだあるというより一番の理由かもしれない。
隊士への指揮権が全くないのである。指令は局長、副長、助勤、隊士と流れるためだ。
「うむ…。確かに…」
近藤は頷く。
「戻してくれ」
「わかっ「駄目だ」
近藤の言葉を遮ったのは土方だ。
このまま副長に戻れると思っていた山南は目を見開いた。
「何故だ」
「指揮官が多ければ多いほど隊全体が混乱する」
副長は俺一人でいい。
そう言いたいのだろう。
「じゃあ土方くんが総長に格上げしてもらったらどうだ」
「それは無理な話だ」
いつもは温厚な山南も引かない。お互いがズケズケとした言い方になる。
近藤はオロオロとその場を見守るだけだ。
「土方くんは新撰組をいったいどうしたいんだ!本来は我々も志しているはずの攘夷を説く志士を見つけてはバサバサと斬り倒して!これじゃあ本当にただの人斬り集団じゃないか!」
「あんた。本当にそう思ってんのか…?」
土方は下を向いてフルフルと震えている。
「は?」
「本当にここを人斬り集団と思ってんのかよ!」
土方はいつになくキレている。
「あぁ!そうだ!」
お互い息を荒くしながら座っている。
「………失望したぜ」
「それはこっちの方だ」
「あんた…。伊東が来てからおかしくなったんじゃないか?」
「歳!」
近藤は土方が伊東と言ったことが気に障ったのだろう。
「なにを!」
ガタンと山南は立ち上がる。
「剣を握らない男に指揮官が務まるか」
2024年11月27日「お!ええの?はっ!もしや美海ちゃんも!?」
「お!ええの?はっ!もしや美海ちゃんも!?」
「美海が提案したんだ」
「もしや美海ちゃん俺と撮りたくて……!」
ゴンッ!
「何アホなこと言ってるんですか。死んでください」
それを聞きつけた美海が山崎の頭にげんこつを落とした。最近美海の山崎への態度はますます酷くなっている。
永倉はドン引きした目で山崎を見ていた。
「うちにそんな金はねぇ!只でさえ貧乏なんだ」
土方が必死に言う。
「自分で言ってて虚しくなりませんか?」
美海は真顔で聞き返した。
「とにかく!駄目だ!」
「土方さん。ほとがらを撮ると聞いたのだが」
「斉藤くん!」
藤堂に連れられた胴着姿のままの斉藤が後ろにはいた。
藤堂に無理矢理連行されたのか、手には竹刀を持ったままだ。
「いいんですか?土方さんだけ撮らないんですか?仲間外れですよ?」
沖田がニヤニヤと言う。
もう辺りには試衛館派の幹部が集まってしまっていた。https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/5242509.html https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/5242528.html http://carinacyrill.blogg.se/2024/november/entry.html
「だー――!もう!わかったよ!」
土方はとうとう了承した。唯一の楽しみの島原に行けなくなるのは気の毒だ。
「よっしゃ!!」
「早く塗ろうぜ!」
「待ってよ~!」
原田、永倉、藤堂はお互いに白粉を塗りだした。明らか楽しんでいる。
何をしても楽しいのだろう。
「ほら!一も!」
斉藤も引っ張られ、三人に無理矢理押し付けられる。悲惨だ。
「よし!俺も参戦やぁ!」
山崎も入り、もはや雪合戦のようになっている。
「土方君は塗らないのかい?」
山南が聞く。
「いや。俺はいい。もともと色白だし…。大丈夫だろ。山南さんは?」
「私も……ね…」
二人は苦笑いで顔を見合わせる。
「「なに言ってんですかぁ!!」」
綺麗にハモった声が聞こえ、二人は振り向く。
「ぅわぁ!」
「キモッ!」
山南は美海に習った言葉を使った。振り向いた先にいたのは顔を真っ白に塗った沖田と美海だった。
まぁ美海に関しては変ではないのだが。
「土方さん!塗ってあげますよ~」
両手に白粉を着けた沖田がニヤニヤと土方に近寄る。
「く!来んじゃねぇ!」
土方は後退りする。
「原田さん!」
「おう!」
ガシッ
「ぅわっ!てめ左ノ!離せよ!」
原田に腕を固定され、土方はかなり焦っている。
絶体絶命とはまさにこのこと。
山南はこっそりとその場を離れようとする。
「山南さん?」
が、美海がにっこりと笑う。
ビクッ
「ななななんだい?」
山南は冷や汗をかきながら笑った。
「逃げられるとおもってんですか?」
「「ぅわぁぁぁぁぁあ!!」」
「よし出来た!」
美海は清々しい顔で言った。
暴れる二人を抑えながらなんとか塗ったのだ。
「いや~!土方さっ!変っじゃないですよっ!」
沖田はプルプルと震えながら口元を抑えている。
「く…そ!お前ら!後で覚えてろよ…」
土方はギラリと目を光らせた。
「お!歳もサンナンも出来たか!じゃあ撮ろう!」
近藤はにこにこしている。
「うおー―――!遂に!」
「どんな格好する!?どんな格好する!?」
「肩組もうぜ!」
永倉、藤堂、原田は相変わらず楽しそうだ。
「はーい。じゃあ詰めて並んでくださいね~」
カメラマンが声を掛けた。長い間待っていてくれたのだ。
内心、やっとかよ…と思っているに違いない。
真ん中にはもちろん局長の近藤が座り、右隣に副長の土方、左隣には総長の山南が着いた。
原田、永倉、藤堂はいつも通りくっついていて本当に肩を組んでいる。
ただ、後ろで中腰なのだからその体勢はかなりキツいと思うのだが…。
斉藤は土方に呼ばれ、隣にいる。
山崎と沖田は美海を取り合うように挟んでいた。
もう前列以外はグダグダである。
「はーい。じゃあ撮りますよ~!息を止めといてくださーい。吸っちゃ駄目ですよ~」
そうカメラマンに言われ、撮影が始まった。
「美海が提案したんだ」
「もしや美海ちゃん俺と撮りたくて……!」
ゴンッ!
「何アホなこと言ってるんですか。死んでください」
それを聞きつけた美海が山崎の頭にげんこつを落とした。最近美海の山崎への態度はますます酷くなっている。
永倉はドン引きした目で山崎を見ていた。
「うちにそんな金はねぇ!只でさえ貧乏なんだ」
土方が必死に言う。
「自分で言ってて虚しくなりませんか?」
美海は真顔で聞き返した。
「とにかく!駄目だ!」
「土方さん。ほとがらを撮ると聞いたのだが」
「斉藤くん!」
藤堂に連れられた胴着姿のままの斉藤が後ろにはいた。
藤堂に無理矢理連行されたのか、手には竹刀を持ったままだ。
「いいんですか?土方さんだけ撮らないんですか?仲間外れですよ?」
沖田がニヤニヤと言う。
もう辺りには試衛館派の幹部が集まってしまっていた。https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/5242509.html https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/5242528.html http://carinacyrill.blogg.se/2024/november/entry.html
「だー――!もう!わかったよ!」
土方はとうとう了承した。唯一の楽しみの島原に行けなくなるのは気の毒だ。
「よっしゃ!!」
「早く塗ろうぜ!」
「待ってよ~!」
原田、永倉、藤堂はお互いに白粉を塗りだした。明らか楽しんでいる。
何をしても楽しいのだろう。
「ほら!一も!」
斉藤も引っ張られ、三人に無理矢理押し付けられる。悲惨だ。
「よし!俺も参戦やぁ!」
山崎も入り、もはや雪合戦のようになっている。
「土方君は塗らないのかい?」
山南が聞く。
「いや。俺はいい。もともと色白だし…。大丈夫だろ。山南さんは?」
「私も……ね…」
二人は苦笑いで顔を見合わせる。
「「なに言ってんですかぁ!!」」
綺麗にハモった声が聞こえ、二人は振り向く。
「ぅわぁ!」
「キモッ!」
山南は美海に習った言葉を使った。振り向いた先にいたのは顔を真っ白に塗った沖田と美海だった。
まぁ美海に関しては変ではないのだが。
「土方さん!塗ってあげますよ~」
両手に白粉を着けた沖田がニヤニヤと土方に近寄る。
「く!来んじゃねぇ!」
土方は後退りする。
「原田さん!」
「おう!」
ガシッ
「ぅわっ!てめ左ノ!離せよ!」
原田に腕を固定され、土方はかなり焦っている。
絶体絶命とはまさにこのこと。
山南はこっそりとその場を離れようとする。
「山南さん?」
が、美海がにっこりと笑う。
ビクッ
「ななななんだい?」
山南は冷や汗をかきながら笑った。
「逃げられるとおもってんですか?」
「「ぅわぁぁぁぁぁあ!!」」
「よし出来た!」
美海は清々しい顔で言った。
暴れる二人を抑えながらなんとか塗ったのだ。
「いや~!土方さっ!変っじゃないですよっ!」
沖田はプルプルと震えながら口元を抑えている。
「く…そ!お前ら!後で覚えてろよ…」
土方はギラリと目を光らせた。
「お!歳もサンナンも出来たか!じゃあ撮ろう!」
近藤はにこにこしている。
「うおー―――!遂に!」
「どんな格好する!?どんな格好する!?」
「肩組もうぜ!」
永倉、藤堂、原田は相変わらず楽しそうだ。
「はーい。じゃあ詰めて並んでくださいね~」
カメラマンが声を掛けた。長い間待っていてくれたのだ。
内心、やっとかよ…と思っているに違いない。
真ん中にはもちろん局長の近藤が座り、右隣に副長の土方、左隣には総長の山南が着いた。
原田、永倉、藤堂はいつも通りくっついていて本当に肩を組んでいる。
ただ、後ろで中腰なのだからその体勢はかなりキツいと思うのだが…。
斉藤は土方に呼ばれ、隣にいる。
山崎と沖田は美海を取り合うように挟んでいた。
もう前列以外はグダグダである。
「はーい。じゃあ撮りますよ~!息を止めといてくださーい。吸っちゃ駄目ですよ~」
そうカメラマンに言われ、撮影が始まった。
2024年11月24日「そうですね」
「そうですね」
まぁ。ただの好奇心だし見れなくてもいいけど…。
ガラッ
「お待たせいたしました」
綺麗な芸姑が三人入ってきた。
「待ってたぜ!酌してくれ!」
原田がニカッと爽やかに笑う。
芸姑達もなんだか楽しそうだ。
相手が新撰組イケメン隊士達だからだろうか。
「美海!お前も呼ぶよな?」
永倉が美海に問う。
「あ。いえ。私は…。山南さんとこ見てきます!」
芸姑は色っぽく酌している。
藤堂も原田も楽しそうだ。
ガラッ
美海は急いでその場を去った。
やっぱ苦手だなぁ。
隣の部屋の前で立ち止まる。
山南さんもデヘデヘしてるのかな…?
カラ…
美海はこっそりと隙間を開ける。
目を隙間に当てると山南の姿が見えた。https://carinadarling.joomla.com/3-uncategorised/5-2024-11-23-21-14-29 https://johnsmith786.livedoor.blog/archives/5232146.html https://plaza.rakuten.co.jp/johnsmith786/diary/202411160000/
「明里」
「なんどすか?」
残念ながら明里の姿は見えない。
「最近苦労はないかい?」
「んー…。そやねぇ…。あるけど、山南さんに会えるから全然苦しくないんよ!」
なんだかほのぼのした空気だ。
「そっか。で。そこにいるのは誰だい?」
「?」
流石山南さん。
カラ…
「すいません…。お邪魔ですよね?」
「美海くん!?なんでここに?」
「永倉さんに誘われたんですよ」
美海は苦笑いだ。
「その髪…もしかして…立花美海さん!?」
「え…あ…はい」
美海がふとその声の主を見る。
かなりの美人だ。先程部屋に来た芸姑とは格段にレベルが違う。まるで人形のようだ。
あー。似てるって言われたけど…。
女装(女だけど)した時の私に似てなくもない。
「きゃー――!凄い!本物なん!?ほんまに茶髪なんやねぇ」
ガシガシと美海の頭を撫でる。
「あ…は…はぁ」
テンション…高っ。
「明里。美海くんが困ってるよ」
「あ!すいまへん!うちったらつい」
山南に言われ、明里は急いで手を止めた。
「あなたが明里さんですか?」
美海は念のため聞く。
「そうどす。紹介が遅れました。初めまして。天神の明里と申します」
明里は綺麗に正座すると美海にお辞儀した。
「あ!こちらこそ!新撰組一番隊隊長補佐の立花美海です。よろしくお願いします」
美海もついつい正座をしてお辞儀をした。
「ぷっ!立花さんはお辞儀せんでもええのに!そんな人あんまおらんわ」
明里はクスクスと笑っている。
かわいらしい笑顔だが、笑い方は上品だ。
「ははは…」
思わず美海も照れ笑いをする。
「しっかし…」
明里は美海に近寄りマジマジとまん前から顔を見る。
な…なに?
「失礼やけど女の子みたいやねぇ…。藤堂さんと似た美人さんや♪」
明里はニッと笑う。相変わらず笑った顔はかわいい。
「あ。ありがとうございます?」
喜んでいいのか分からない。今はあくまで男だ。
「おいおい明里。美海くんを気に入ってしまったかい?」
「やだわぁ山南さん!うちは山南さんが一番に決まってるやん!立花さんごめんねぇ」
「は…はぁ」
「いやぁ嬉しいねぇ。ははははは!」
「うふふふふ!」
二人は今にもハートの幻覚が見えそうな程ラブラブだ。
バカップル…。
この時代にもいるんだなぁ。
もう勝手にしてくれ。
「じゃあ…私はこれで…」
美海はげんなりとしている。
「もう行かはるん?」
「はい。明里さんを一目見たかっただけなんで」
「あらぁ!嬉しいこと言ってくれはるねぇ!」
「じゃあお二人は気になさらず楽しんでください!」
「美海くん悪いねぇ」
そういう山南さんは何処か嬉しそうだ。
幸せそうな顔しちゃって。
クスリと美海は笑った。
遊廓ってそんな悪いとこじゃないのかな?
こうして美海は山南の部屋を離れた。
ガラッ
美海はすぐ隣の原田達のいる部屋を開けた。
ワァァァァア!
中は山南と明里のようなほんわかした雰囲気は漂っておらずどんちゃん騒ぎだ。
何をどうしたらこの数分でこうなるんだか。「はぁ…」
美海は小さくため息を着いた。
まぁ。ただの好奇心だし見れなくてもいいけど…。
ガラッ
「お待たせいたしました」
綺麗な芸姑が三人入ってきた。
「待ってたぜ!酌してくれ!」
原田がニカッと爽やかに笑う。
芸姑達もなんだか楽しそうだ。
相手が新撰組イケメン隊士達だからだろうか。
「美海!お前も呼ぶよな?」
永倉が美海に問う。
「あ。いえ。私は…。山南さんとこ見てきます!」
芸姑は色っぽく酌している。
藤堂も原田も楽しそうだ。
ガラッ
美海は急いでその場を去った。
やっぱ苦手だなぁ。
隣の部屋の前で立ち止まる。
山南さんもデヘデヘしてるのかな…?
カラ…
美海はこっそりと隙間を開ける。
目を隙間に当てると山南の姿が見えた。https://carinadarling.joomla.com/3-uncategorised/5-2024-11-23-21-14-29 https://johnsmith786.livedoor.blog/archives/5232146.html https://plaza.rakuten.co.jp/johnsmith786/diary/202411160000/
「明里」
「なんどすか?」
残念ながら明里の姿は見えない。
「最近苦労はないかい?」
「んー…。そやねぇ…。あるけど、山南さんに会えるから全然苦しくないんよ!」
なんだかほのぼのした空気だ。
「そっか。で。そこにいるのは誰だい?」
「?」
流石山南さん。
カラ…
「すいません…。お邪魔ですよね?」
「美海くん!?なんでここに?」
「永倉さんに誘われたんですよ」
美海は苦笑いだ。
「その髪…もしかして…立花美海さん!?」
「え…あ…はい」
美海がふとその声の主を見る。
かなりの美人だ。先程部屋に来た芸姑とは格段にレベルが違う。まるで人形のようだ。
あー。似てるって言われたけど…。
女装(女だけど)した時の私に似てなくもない。
「きゃー――!凄い!本物なん!?ほんまに茶髪なんやねぇ」
ガシガシと美海の頭を撫でる。
「あ…は…はぁ」
テンション…高っ。
「明里。美海くんが困ってるよ」
「あ!すいまへん!うちったらつい」
山南に言われ、明里は急いで手を止めた。
「あなたが明里さんですか?」
美海は念のため聞く。
「そうどす。紹介が遅れました。初めまして。天神の明里と申します」
明里は綺麗に正座すると美海にお辞儀した。
「あ!こちらこそ!新撰組一番隊隊長補佐の立花美海です。よろしくお願いします」
美海もついつい正座をしてお辞儀をした。
「ぷっ!立花さんはお辞儀せんでもええのに!そんな人あんまおらんわ」
明里はクスクスと笑っている。
かわいらしい笑顔だが、笑い方は上品だ。
「ははは…」
思わず美海も照れ笑いをする。
「しっかし…」
明里は美海に近寄りマジマジとまん前から顔を見る。
な…なに?
「失礼やけど女の子みたいやねぇ…。藤堂さんと似た美人さんや♪」
明里はニッと笑う。相変わらず笑った顔はかわいい。
「あ。ありがとうございます?」
喜んでいいのか分からない。今はあくまで男だ。
「おいおい明里。美海くんを気に入ってしまったかい?」
「やだわぁ山南さん!うちは山南さんが一番に決まってるやん!立花さんごめんねぇ」
「は…はぁ」
「いやぁ嬉しいねぇ。ははははは!」
「うふふふふ!」
二人は今にもハートの幻覚が見えそうな程ラブラブだ。
バカップル…。
この時代にもいるんだなぁ。
もう勝手にしてくれ。
「じゃあ…私はこれで…」
美海はげんなりとしている。
「もう行かはるん?」
「はい。明里さんを一目見たかっただけなんで」
「あらぁ!嬉しいこと言ってくれはるねぇ!」
「じゃあお二人は気になさらず楽しんでください!」
「美海くん悪いねぇ」
そういう山南さんは何処か嬉しそうだ。
幸せそうな顔しちゃって。
クスリと美海は笑った。
遊廓ってそんな悪いとこじゃないのかな?
こうして美海は山南の部屋を離れた。
ガラッ
美海はすぐ隣の原田達のいる部屋を開けた。
ワァァァァア!
中は山南と明里のようなほんわかした雰囲気は漂っておらずどんちゃん騒ぎだ。
何をどうしたらこの数分でこうなるんだか。「はぁ…」
美海は小さくため息を着いた。
2024年11月21日ついでに、酒も失敬してきて壷に降りかけた。
ついでに、酒も失敬してきて壷に降りかけた。
封印したので中を見た者はおるまい。
お神酒と勘違いしている者もいるだろう。
燃え上がった火の先に、その壷が見えた。
中は二重にして油紙の中に藁や縄、端布、木っ端などを入れ、中身がこぼれ出た時に燃えやすくした。
転がっていた太刀を投げつけ破壊すると、中身が飛び散り火の勢いが増した。
さらに手前にあった壺も破壊し、痛みを覚悟で二層目の狭間から下流側の道に飛び降りた。
そこへ矢が飛んできた。
すんでのところで身をかわし、近くに転がっていた矛を、五間先で弓を手にしていた兵の太もも目がけて投げつけた。
兵が倒れ、視界が開けると蹄の音を鳴り響かせながら砦に向かってくる馬たちの姿が見えた。
最後尾の馬上には義久と姫の姿があった。
下流側の兵の注意は、そちらに向いていた。https://bloggererica.doorblog.jp/archives/35600233.html https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/11/21/202932?_gl=1*1qzxi2v*_gcl_au*LTPe21veLZJBRJPdfAmRozqD1N1yu8xRDZ. https://bloggererica.doorblog.jp/archives/35600280.html
砦の屋上に目をやると、階下の火に気づいた兵が避難のための縄梯子を板壁に沿って投げ落とした。
それでもすぐに退避しようとはせずに五人の兵が弓を手にした。
痛む足を引きずり、先ほど、背負子とともに落とした革の筒袋と弓を拾いあげ、こぼれ落ちていた自分の矢と敵の矢、四本のうち二本を筒袋に放り込む。
下流側に歩を進めながら連射した。
屋上の兵四人を倒した。だが、ここで矢がなくなった。
火だるまになった兵が二層目から飛び降りてきた。
着地もできずに叩きつけられ、嫌な匂いをまき散らした。
三郎の最後の匂いだった。
三層目からも火の手は上がったものの、仕掛けが遅れたために火の回りが遅い。
このままでは姫と義久は格好の的になるだろう。
かといって、再び火をかけて回っている時はない。
――姫の胸に足に、義久の目に腹に、次々と矢が降り注ぐ――その光景が目に浮かんだ。
気がつくと雄叫びを上げていた。
呼応するように谷底から吹き上がった風が真っ紅な髪を舞い上げた。
風は、炎をも舞い上げた。
炎が縄梯子に燃え移ると状況は一変した。
縄が火を噴き、まるで踊ってでもいるかのように尻を振り、矢のような速さで砦をなめまわした。
*屋上の中ほどにいた兵が、あわてて戦勝祈願の符だを貼った油壺に足を突っ込み、割って転がした。
さらに倒れ際に、もう一つの壺を割った。
こぼれ出た油が滑るように広がり、板壁を伝い、柱を伝い、谷底に流れ落ちて行った。
そこに縄の火と二層目と三層目の狭間から吹き上がる火が燃え移った。
地獄に滝があるのなら、かようであろうと思うほどの流れと勢いに、その場にいた者たちは一人残らず息を飲んだ。
*巨大な砦の中央が、あっという間に炎に包まれた。
尋常な勢いではない。
イダテンが、なにやら細工でもしたのだろう。
あやつが動けば信じ難いことが次々と起こる。
だが、馬は、臆病な動物だ。
これ以上、燃え広がれば脚を止めるだろう。
幸運なことに道の上の砦は、まだ火に包まれていない。
黒駒の腹を蹴り、勢いをつけた。
*
逃げ回る兵どもが油壺を蹴倒し、割って混乱に拍車をかけた。
筒状の通路を伝い、火が横に広がった。
燃え広がる炎が、これまでとは違う形の壺を包みこんだ。
壺の小さな口からのぞいている紐が勢いよく火を噴いた。
その炎が壷の中に吸い込まれると、それは、閃光を放った。
近くで見た者は目を焼いた。
音を失い、炎に包まれた。
封印したので中を見た者はおるまい。
お神酒と勘違いしている者もいるだろう。
燃え上がった火の先に、その壷が見えた。
中は二重にして油紙の中に藁や縄、端布、木っ端などを入れ、中身がこぼれ出た時に燃えやすくした。
転がっていた太刀を投げつけ破壊すると、中身が飛び散り火の勢いが増した。
さらに手前にあった壺も破壊し、痛みを覚悟で二層目の狭間から下流側の道に飛び降りた。
そこへ矢が飛んできた。
すんでのところで身をかわし、近くに転がっていた矛を、五間先で弓を手にしていた兵の太もも目がけて投げつけた。
兵が倒れ、視界が開けると蹄の音を鳴り響かせながら砦に向かってくる馬たちの姿が見えた。
最後尾の馬上には義久と姫の姿があった。
下流側の兵の注意は、そちらに向いていた。https://bloggererica.doorblog.jp/archives/35600233.html https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/11/21/202932?_gl=1*1qzxi2v*_gcl_au*LTPe21veLZJBRJPdfAmRozqD1N1yu8xRDZ. https://bloggererica.doorblog.jp/archives/35600280.html
砦の屋上に目をやると、階下の火に気づいた兵が避難のための縄梯子を板壁に沿って投げ落とした。
それでもすぐに退避しようとはせずに五人の兵が弓を手にした。
痛む足を引きずり、先ほど、背負子とともに落とした革の筒袋と弓を拾いあげ、こぼれ落ちていた自分の矢と敵の矢、四本のうち二本を筒袋に放り込む。
下流側に歩を進めながら連射した。
屋上の兵四人を倒した。だが、ここで矢がなくなった。
火だるまになった兵が二層目から飛び降りてきた。
着地もできずに叩きつけられ、嫌な匂いをまき散らした。
三郎の最後の匂いだった。
三層目からも火の手は上がったものの、仕掛けが遅れたために火の回りが遅い。
このままでは姫と義久は格好の的になるだろう。
かといって、再び火をかけて回っている時はない。
――姫の胸に足に、義久の目に腹に、次々と矢が降り注ぐ――その光景が目に浮かんだ。
気がつくと雄叫びを上げていた。
呼応するように谷底から吹き上がった風が真っ紅な髪を舞い上げた。
風は、炎をも舞い上げた。
炎が縄梯子に燃え移ると状況は一変した。
縄が火を噴き、まるで踊ってでもいるかのように尻を振り、矢のような速さで砦をなめまわした。
*屋上の中ほどにいた兵が、あわてて戦勝祈願の符だを貼った油壺に足を突っ込み、割って転がした。
さらに倒れ際に、もう一つの壺を割った。
こぼれ出た油が滑るように広がり、板壁を伝い、柱を伝い、谷底に流れ落ちて行った。
そこに縄の火と二層目と三層目の狭間から吹き上がる火が燃え移った。
地獄に滝があるのなら、かようであろうと思うほどの流れと勢いに、その場にいた者たちは一人残らず息を飲んだ。
*巨大な砦の中央が、あっという間に炎に包まれた。
尋常な勢いではない。
イダテンが、なにやら細工でもしたのだろう。
あやつが動けば信じ難いことが次々と起こる。
だが、馬は、臆病な動物だ。
これ以上、燃え広がれば脚を止めるだろう。
幸運なことに道の上の砦は、まだ火に包まれていない。
黒駒の腹を蹴り、勢いをつけた。
*
逃げ回る兵どもが油壺を蹴倒し、割って混乱に拍車をかけた。
筒状の通路を伝い、火が横に広がった。
燃え広がる炎が、これまでとは違う形の壺を包みこんだ。
壺の小さな口からのぞいている紐が勢いよく火を噴いた。
その炎が壷の中に吸い込まれると、それは、閃光を放った。
近くで見た者は目を焼いた。
音を失い、炎に包まれた。
2024年11月20日だが、イダテンは、あっさりと首を横に振った
だが、イダテンは、あっさりと首を横に振った。
「物と違い、人は重心が取りにくい」
なにより、捨てて逃げるわけにはいかない。
音をたてただけでも矢が降り注ごう――イダテンは、他に方法はないのだ、とばかりに話を続けた。「門の代わりに丸太の柵が三つ並んでいる。谷側の一つを壊せばなんとかなろう。おれが、あの柵を開ける。いつでも走り抜けられるよう馬の用意をしておけ。砦まではおよそ八町(※約870m)。いうまでもないが上り坂だ。馬の脚も重かろう」
「待て、待て」
と、思わず大声を上げた。
「馬鹿なことを言うな。それは策とも、打ち合わせともいえぬぞ」
が、こいつができるというのなら、できるような気がしてくるのも確かである。
何より義久の出番もある。
「存分に働いてください。義久も、あなたに負けぬ働きで応えましょう」
突然、割り込んできた姫が自信ありげに微笑んでいる。
当の本人には何の成算もないというのに。
「四半刻もせぬうちに騒ぎになろう。それを合図に走り出せ」
イダテンは、そう言い捨てると、櫓の端に置いていた背負子を取りに向かった。
姫や義久の言うことなどまったく意に介していない。https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/11/16/221222?_gl=1*fcbbd3*_gcl_au*LTPe21veLZJBRJPdfAmRozqD1N1yu8xRDZ. https://ameblo.jp/freelance12/entry-12875399924.html https://debsy.e-monsite.com/blog/--18.html
まさに唯我独尊だ。
「ふん、無愛想なやつじゃ」
櫓を降り、腹立ちまぎれにつぶやいた。
後ろから苦しげな声が聞こえてくる。
姫が口元を袂で隠し、涙を溜めている。
先ほど襲われたときに、どこか痛めたのだろうか。
「どうされました。どこか痛むところでも」
あわてる義久をしり目に、姫は鈴を転がすように笑った。
「邸にいたときは、義久も、そう言われていたのではありませんか」
不本意ではあったが、事実であった。
愛想を振りまくなど、男の風上にも置けぬと思っていた。
加えて当時の覚悟も想い出した。
なんとしても、この笑顔を守らねばならない。
イダテンと組めば、あの巨大な砦の柵もこじ開けることができよう。
根拠などないが、そう思った。
何より、出たとこ勝負は自分の性にあっている。
義久は口端を上げてにやりと笑った。
「ところで、あやつは、姫様の遊びに付きおうたのですか」
自分のことは棚に上げて、あえて、そう尋ねた。
姫は、笑顔で応じた。
「ええ、読み書きを教えました。もともと知識はあったようですが、とても覚えが良かったのですよ」
思わず鼻を鳴らした。
期待した応えではなかった。
「ふん、頭も良いのか、かわいげのないやつじゃ……それにしても、よくまわりが許しましたな。まあ、うちのおじじ……忠信様が手を回したのでしょうが」
姫は、淋しそうに微笑んだ。
「……じいは、よくやってくれました」
あの性根である。
どれほど兵力に差があろうとも孤軍奮闘したに違いない。
姫にとっては、実の父母より遥かに近しい存在だったはずだ。
雰囲気を変えようと声を張り上げ、自慢げに口にした。
「わたしとて、いつまでも悪童のままではありませぬぞ。九九(※掛け算)も多少は覚えましたゆえ」
続けて、少々節をはずしながら歌を詠んだ。
『若草の 新手枕を 巻き初めて――』
「誰に教わったのです」
眉をひそめた姫が、ぴしゃりと制した。
「いや、それは……」
『万葉集』とやらには『九九』を利用した読み方がいくつかある、と言う。
この歌も『憎く』を『二八十一』と表記しているらしい。
だが、女と情を交わしたあとの歌である。
裳着も済ませていない姫を前に披露する歌ではなかった。
機嫌を損ねたかと、そっと顔色をうかがうと、姫は笑いをこらえていた。
その襟元から紐のようなものが覗き、その先に何か小さな物がついていた。
イモリのように見えた。
今にも動き出しそうだったからだ。
姫が気づく前に払おうとして、そうではないことが分かった。
細工物のようだ。
「何です。それは? ずいぶんとやせた獣ですな。山猫ですか?」
「『唐猫』です。名を『美夜』といいます」
姫が目じりをさげて微笑んだ。
「イダテンが彫ったのですよ」
*
なんと言っても、多勢に無勢。
しかも砦の柵は固く閉じられていよう。
イダテンの力と知恵には兜を脱ぐ。
とはいえ、今日の今日まで、あいつが人と争ったという話は聞いたことが無い。
こたびも、崖の上から岩や材木を落とし、矢を射かけただけだ。
血しぶきを浴びるほどの修羅場をくぐったわけではない。
つまらぬことで頓挫するやもしれぬ。
ここは、山賊たちと幾たびも刃を交えてきた、わしが力を貸してやらねばなるまい。
だてに悪童と呼ばれていたわけではない。
それも、姫の前で披露できよう。
さて、と義久は頭をひねる。
馬は黒駒で決まりだが――闇雲に走らせれば何とかなるというものではない。
「物と違い、人は重心が取りにくい」
なにより、捨てて逃げるわけにはいかない。
音をたてただけでも矢が降り注ごう――イダテンは、他に方法はないのだ、とばかりに話を続けた。「門の代わりに丸太の柵が三つ並んでいる。谷側の一つを壊せばなんとかなろう。おれが、あの柵を開ける。いつでも走り抜けられるよう馬の用意をしておけ。砦まではおよそ八町(※約870m)。いうまでもないが上り坂だ。馬の脚も重かろう」
「待て、待て」
と、思わず大声を上げた。
「馬鹿なことを言うな。それは策とも、打ち合わせともいえぬぞ」
が、こいつができるというのなら、できるような気がしてくるのも確かである。
何より義久の出番もある。
「存分に働いてください。義久も、あなたに負けぬ働きで応えましょう」
突然、割り込んできた姫が自信ありげに微笑んでいる。
当の本人には何の成算もないというのに。
「四半刻もせぬうちに騒ぎになろう。それを合図に走り出せ」
イダテンは、そう言い捨てると、櫓の端に置いていた背負子を取りに向かった。
姫や義久の言うことなどまったく意に介していない。https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/11/16/221222?_gl=1*fcbbd3*_gcl_au*LTPe21veLZJBRJPdfAmRozqD1N1yu8xRDZ. https://ameblo.jp/freelance12/entry-12875399924.html https://debsy.e-monsite.com/blog/--18.html
まさに唯我独尊だ。
「ふん、無愛想なやつじゃ」
櫓を降り、腹立ちまぎれにつぶやいた。
後ろから苦しげな声が聞こえてくる。
姫が口元を袂で隠し、涙を溜めている。
先ほど襲われたときに、どこか痛めたのだろうか。
「どうされました。どこか痛むところでも」
あわてる義久をしり目に、姫は鈴を転がすように笑った。
「邸にいたときは、義久も、そう言われていたのではありませんか」
不本意ではあったが、事実であった。
愛想を振りまくなど、男の風上にも置けぬと思っていた。
加えて当時の覚悟も想い出した。
なんとしても、この笑顔を守らねばならない。
イダテンと組めば、あの巨大な砦の柵もこじ開けることができよう。
根拠などないが、そう思った。
何より、出たとこ勝負は自分の性にあっている。
義久は口端を上げてにやりと笑った。
「ところで、あやつは、姫様の遊びに付きおうたのですか」
自分のことは棚に上げて、あえて、そう尋ねた。
姫は、笑顔で応じた。
「ええ、読み書きを教えました。もともと知識はあったようですが、とても覚えが良かったのですよ」
思わず鼻を鳴らした。
期待した応えではなかった。
「ふん、頭も良いのか、かわいげのないやつじゃ……それにしても、よくまわりが許しましたな。まあ、うちのおじじ……忠信様が手を回したのでしょうが」
姫は、淋しそうに微笑んだ。
「……じいは、よくやってくれました」
あの性根である。
どれほど兵力に差があろうとも孤軍奮闘したに違いない。
姫にとっては、実の父母より遥かに近しい存在だったはずだ。
雰囲気を変えようと声を張り上げ、自慢げに口にした。
「わたしとて、いつまでも悪童のままではありませぬぞ。九九(※掛け算)も多少は覚えましたゆえ」
続けて、少々節をはずしながら歌を詠んだ。
『若草の 新手枕を 巻き初めて――』
「誰に教わったのです」
眉をひそめた姫が、ぴしゃりと制した。
「いや、それは……」
『万葉集』とやらには『九九』を利用した読み方がいくつかある、と言う。
この歌も『憎く』を『二八十一』と表記しているらしい。
だが、女と情を交わしたあとの歌である。
裳着も済ませていない姫を前に披露する歌ではなかった。
機嫌を損ねたかと、そっと顔色をうかがうと、姫は笑いをこらえていた。
その襟元から紐のようなものが覗き、その先に何か小さな物がついていた。
イモリのように見えた。
今にも動き出しそうだったからだ。
姫が気づく前に払おうとして、そうではないことが分かった。
細工物のようだ。
「何です。それは? ずいぶんとやせた獣ですな。山猫ですか?」
「『唐猫』です。名を『美夜』といいます」
姫が目じりをさげて微笑んだ。
「イダテンが彫ったのですよ」
*
なんと言っても、多勢に無勢。
しかも砦の柵は固く閉じられていよう。
イダテンの力と知恵には兜を脱ぐ。
とはいえ、今日の今日まで、あいつが人と争ったという話は聞いたことが無い。
こたびも、崖の上から岩や材木を落とし、矢を射かけただけだ。
血しぶきを浴びるほどの修羅場をくぐったわけではない。
つまらぬことで頓挫するやもしれぬ。
ここは、山賊たちと幾たびも刃を交えてきた、わしが力を貸してやらねばなるまい。
だてに悪童と呼ばれていたわけではない。
それも、姫の前で披露できよう。
さて、と義久は頭をひねる。
馬は黒駒で決まりだが――闇雲に走らせれば何とかなるというものではない。
2024年11月18日「言葉に気をつけろ。
「言葉に気をつけろ。国親様の側近に聞かれたら首が飛ぶぞ」喧騒が耳に届き、鎬を削る音が聞こえてきた。
視界の隅に、南二の門の櫓の上で何本もの矢を受けて横木にもたれかかっている味方の姿が映った。
暗い空も見える。
命運が尽きかけているにも関わらず恐怖心はなかった。
叩きつけられた体同様、心も麻痺しているのだろうか。
喜八郎たちは無事だろうか。
吹晴山に逃げ込んでいれば可能性はある。
あの岩の下の穴に潜り込み、入口を塞げばよいのだ。
三人で熊を燻り出したあの岩だ。
――だが、二人ともたどり着けなかったようだ。
目と鼻の先で血まみれになり、折り重なるように倒れていた。
三郎は、その中にまぎれて、見過ごされたのだろう。
すまぬ、と心の中で手を合わせた。
もう一働きして、わしもすぐにそちらへ行く。
だが、その機会は与えられそうになかった。
腹巻姿の兵が倒れている童たちに止めを刺しに回ってきたのだ。
すぐに順番が回ってきた。
穂を向けられ、これまでか、と観念した。
が、その時、 https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/e95c0b3a100519e2c2be69415739ccb4 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/11/16/214619?_gl=1*2rumuz*_gcl_au*LTPe21veLZJBRJPdfAmRozqD1N1yu8xRDZ. https://ameblo.jp/freelance12/entry-12875398729.html
「先に進むぞ」
と、兵に声がかかった。
「しかし、皆殺しにせよと……」
「生きていたところで逃げ場もないのだ。なにより手柄にもならぬ」
その言葉に納得したのだろう。
兵は血に濡れた穂を三郎の衣で拭うにとどめた。声をかけた兵は周りを見回し舌打ちする。
梯子のかかった二の郭は、ほぼ制圧されている。
一の郭にはほとんど兵がいない。
混乱を避けるため邸攻めの数はあらかじめ決められていたようだ。
「ここまで一方的になると戦とは言えぬのう」
「楽でよいではないか」
「それはそうじゃが、手柄も立てられぬではないか」
「鬼の子がおろう」
「おお、たいそうな恩賞がかかっておるそうじゃな?」
尋ねられた兵が、それよ、と続けた。
「十二町歩の田が手に入ると聞いたぞ」
相手は、なんと、と言って言葉を失った。
「……ちょっとした領主ではないか。イダテンとは、それほどのものか?」
「知らぬ……が、あやつの親は桁違いに強かったというぞ。なんでも、得物を持った兵、十人を素手で殴り倒したとか」
「一対一は御免じゃな。われらで取り囲んでみるか?」
「おお、こたびは、こわっぱじゃ。四、五人で囲めば間違いはあるまい」
「ならば急ごう」
――おお、イダテン。やはり、おまえはたいしたものだ。
わしと同じ年で首に恩賞がかかるとは。
しかも、皇子さまを守って死んだという、我が、ご先祖様に引けを取らぬほどの恩賞ぞ。邸の背後にある吹晴山と長者山に目をやった。
連なる尾根沿いに旗は立っていない。
逃げられまいとたかをくくっているのだ。
ならば、姫様のもとに駆けつけ、山に登ってわずかなりとも時を稼ごう。
イダテンは必ず帰ってくる。
あいつはそういう男だ。
それまで持ちこたえるのだ。
左手の指が動いた。
首が動いた。
かたわらに転がっていた矛に手を伸ばし、それを杖代わりに山を見上げ、震える足を叱咤して、ようやく立ち上がった。
――突然、左足に火箸を突きたてられたような衝撃が走った。
棒のようになって顔から地面に倒れ落ちた。
郭の外から降り注いできた矢の一本が、三郎の左のふくらはぎに突き刺さったのだ。
痛いなどという言葉では表せない。
頭の中が針で掻き混ぜられたようだ。
足が、視界が、あっというまに真っ赤に染まる。
あってはならぬことだった。
後方から矢が突き刺さったのだ――これでは敵に後ろを見せたようではないか。
動けぬ。
くそ、動け、動くのじゃ。
くそっ、なんということじゃ!
姫様を助けに行かねばならぬのじゃ。
ミコとおかあを助けに行かねばならぬのじゃ。
たのむ。
動け、動いてくれ!
左目に血が入り込む。
目が霞む。
目が見えぬ。
せめて姫様を守らねば……兄者と約束したのじゃ。
わしは武門の子じゃ。
わが身を盾にしてでも主人を守らねばならぬのだ。
視界の隅に、南二の門の櫓の上で何本もの矢を受けて横木にもたれかかっている味方の姿が映った。
暗い空も見える。
命運が尽きかけているにも関わらず恐怖心はなかった。
叩きつけられた体同様、心も麻痺しているのだろうか。
喜八郎たちは無事だろうか。
吹晴山に逃げ込んでいれば可能性はある。
あの岩の下の穴に潜り込み、入口を塞げばよいのだ。
三人で熊を燻り出したあの岩だ。
――だが、二人ともたどり着けなかったようだ。
目と鼻の先で血まみれになり、折り重なるように倒れていた。
三郎は、その中にまぎれて、見過ごされたのだろう。
すまぬ、と心の中で手を合わせた。
もう一働きして、わしもすぐにそちらへ行く。
だが、その機会は与えられそうになかった。
腹巻姿の兵が倒れている童たちに止めを刺しに回ってきたのだ。
すぐに順番が回ってきた。
穂を向けられ、これまでか、と観念した。
が、その時、 https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/e95c0b3a100519e2c2be69415739ccb4 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/11/16/214619?_gl=1*2rumuz*_gcl_au*LTPe21veLZJBRJPdfAmRozqD1N1yu8xRDZ. https://ameblo.jp/freelance12/entry-12875398729.html
「先に進むぞ」
と、兵に声がかかった。
「しかし、皆殺しにせよと……」
「生きていたところで逃げ場もないのだ。なにより手柄にもならぬ」
その言葉に納得したのだろう。
兵は血に濡れた穂を三郎の衣で拭うにとどめた。声をかけた兵は周りを見回し舌打ちする。
梯子のかかった二の郭は、ほぼ制圧されている。
一の郭にはほとんど兵がいない。
混乱を避けるため邸攻めの数はあらかじめ決められていたようだ。
「ここまで一方的になると戦とは言えぬのう」
「楽でよいではないか」
「それはそうじゃが、手柄も立てられぬではないか」
「鬼の子がおろう」
「おお、たいそうな恩賞がかかっておるそうじゃな?」
尋ねられた兵が、それよ、と続けた。
「十二町歩の田が手に入ると聞いたぞ」
相手は、なんと、と言って言葉を失った。
「……ちょっとした領主ではないか。イダテンとは、それほどのものか?」
「知らぬ……が、あやつの親は桁違いに強かったというぞ。なんでも、得物を持った兵、十人を素手で殴り倒したとか」
「一対一は御免じゃな。われらで取り囲んでみるか?」
「おお、こたびは、こわっぱじゃ。四、五人で囲めば間違いはあるまい」
「ならば急ごう」
――おお、イダテン。やはり、おまえはたいしたものだ。
わしと同じ年で首に恩賞がかかるとは。
しかも、皇子さまを守って死んだという、我が、ご先祖様に引けを取らぬほどの恩賞ぞ。邸の背後にある吹晴山と長者山に目をやった。
連なる尾根沿いに旗は立っていない。
逃げられまいとたかをくくっているのだ。
ならば、姫様のもとに駆けつけ、山に登ってわずかなりとも時を稼ごう。
イダテンは必ず帰ってくる。
あいつはそういう男だ。
それまで持ちこたえるのだ。
左手の指が動いた。
首が動いた。
かたわらに転がっていた矛に手を伸ばし、それを杖代わりに山を見上げ、震える足を叱咤して、ようやく立ち上がった。
――突然、左足に火箸を突きたてられたような衝撃が走った。
棒のようになって顔から地面に倒れ落ちた。
郭の外から降り注いできた矢の一本が、三郎の左のふくらはぎに突き刺さったのだ。
痛いなどという言葉では表せない。
頭の中が針で掻き混ぜられたようだ。
足が、視界が、あっというまに真っ赤に染まる。
あってはならぬことだった。
後方から矢が突き刺さったのだ――これでは敵に後ろを見せたようではないか。
動けぬ。
くそ、動け、動くのじゃ。
くそっ、なんということじゃ!
姫様を助けに行かねばならぬのじゃ。
ミコとおかあを助けに行かねばならぬのじゃ。
たのむ。
動け、動いてくれ!
左目に血が入り込む。
目が霞む。
目が見えぬ。
せめて姫様を守らねば……兄者と約束したのじゃ。
わしは武門の子じゃ。
わが身を盾にしてでも主人を守らねばならぬのだ。
2024年11月18日「心配するな。おかあは、すぐに帰ってくる
「心配するな。おかあは、すぐに帰ってくる。イダテンも、すぐに帰ってくる。あやつは情にもろいでな。いっぱい泣いて、抱きついてやれ。そうすれば、もう出てはいけまいて」
「ほんと?」
「おお、兄者を信じろ」
と、いって、南二の門を指差した。
ミコが振り返ると、ミコの名を呼びながら、門から出てくるヨシの姿が見えた。
「ほれ、おかあが戻ってきたぞ。兄者の言った通りであろう。さあ」
といって、手のひらで軽く背中を押した。
ミコは、涙をぽろぽろとこぼし、嗚咽しながら駆け出した。三郎は目の前にある東一の門の横に建つ櫓によじ登った。
梯子はついていない。
櫓そのものの高さは二間ほどだが、邸を囲む郭も高所にあるので見晴らしは良い。
国府の街並みと田畑と川、そして三方を囲む山々と、その先にある海を見つめる。
イダテンが狼煙だといった煙が、またひとつ増えていた。
向洋の方向だ。
イダテンがおればと、弱気になった。https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202411160005/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/ce0c737b0742b6412295dfa2c2440203 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/11/16/203319?_gl=1*5z1lgi*_gcl_au*LTPe21veLZJBRJPdfAmRozqD1N1yu8xRDZ.
「三郎、何をしている」
と、いう声に振り返ると、櫓の下に九郎や喜八郎の姿があった。
仲間も入れれば十五人はいるだろう。
見れば宗我部に親や親族を討たれた者ばかりだ。
喜八郎が怒ったように訊ねてきた。
「赤目の国親が攻めてくるとは、まことのことか?」
侍や下男たちとのやり取りを聞いた者がいたのだろう。
姫様の唐猫の死にざまも耳にしていよう。
目の前にいる者たちは皆、国親がいかに残虐な男かを知っている。
皆が固唾を飲んで三郎の答えを待っていた。
欲しているのは、国親が攻めてくる理由ではない。
背筋に冷や汗が流れる。
三郎は、覚悟を決めて答えた。
「間違うておれば、この首を差し出そう」
そこにいる者すべてが息を飲んだ。「いつだ?」
と、訊いてきた喜八郎に、高く上がる黒い煙を指差した。
「今宵か?」
三郎がうなずくと、皆の間に動揺が走った。
「まことか?」
と、声を上げる者もいる。
硬い表情の喜八郎が手で制する。
「ならば……わしらも手伝おう」
つばを飲み込んで九郎もうなずいた。
決意が見て取れた。
三郎と同様、恨みは深い。
「おおっ、おまえ達が力を貸してくれれば百人力じゃ」
「おう、とも! われらが恩を返すはこのときじゃ」
「むろん、積もり積もった恨みもな」
目頭が、つんと熱くなる。
これが武門に生まれた者の絆というものだ。
「頼む……まずはこれじゃ」
鍵がついた板を景気よく放り投げた。
受け取った喜八郎は、にやりと笑う。
どこの鍵かわかったのだ。
「やりおったな」
「ミコの手柄じゃ」
「鷲尾にばかり手柄をあげさせるわけにはいかぬ。次は、わしらの番じゃ!」
喜八郎が振り返ると、
「おう!」と、皆が声をあげた。
やってくれるに違いない。
笑みを浮かべ指図する。
「喜八郎は武器庫を開けてくれ。十人で持ち出し、要所要所に置いて回れ。門の近くには多めにな」
「おう、援軍も増やし、あっという間に、やり遂げて見せよう。馬で乗りこまれぬよう、牛車橋も上げておくで」 「九郎は、五人ほどで手分けして忠信様を探してくれ。忠信様にお伝えするのじゃ。姫様を連れて逃げる算段をせよと。三郎とイダテンが言うておった、と」
「そのイダテンは何をしておる」
九郎が、苛立たしげに口にした。
「国司様を助けに薬王寺へ向こうた」
その一言で、いかに切迫しているかが分かったのだろう。
皆が黙り込んだ。
それでも九郎だけは、鼻をふんと鳴らし強がって見せた。
「――よし、わかった。必ず伝えよう……おい、喜八郎。どちらが先か競おうぞ」
「おう!」
「ほんと?」
「おお、兄者を信じろ」
と、いって、南二の門を指差した。
ミコが振り返ると、ミコの名を呼びながら、門から出てくるヨシの姿が見えた。
「ほれ、おかあが戻ってきたぞ。兄者の言った通りであろう。さあ」
といって、手のひらで軽く背中を押した。
ミコは、涙をぽろぽろとこぼし、嗚咽しながら駆け出した。三郎は目の前にある東一の門の横に建つ櫓によじ登った。
梯子はついていない。
櫓そのものの高さは二間ほどだが、邸を囲む郭も高所にあるので見晴らしは良い。
国府の街並みと田畑と川、そして三方を囲む山々と、その先にある海を見つめる。
イダテンが狼煙だといった煙が、またひとつ増えていた。
向洋の方向だ。
イダテンがおればと、弱気になった。https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202411160005/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/ce0c737b0742b6412295dfa2c2440203 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/11/16/203319?_gl=1*5z1lgi*_gcl_au*LTPe21veLZJBRJPdfAmRozqD1N1yu8xRDZ.
「三郎、何をしている」
と、いう声に振り返ると、櫓の下に九郎や喜八郎の姿があった。
仲間も入れれば十五人はいるだろう。
見れば宗我部に親や親族を討たれた者ばかりだ。
喜八郎が怒ったように訊ねてきた。
「赤目の国親が攻めてくるとは、まことのことか?」
侍や下男たちとのやり取りを聞いた者がいたのだろう。
姫様の唐猫の死にざまも耳にしていよう。
目の前にいる者たちは皆、国親がいかに残虐な男かを知っている。
皆が固唾を飲んで三郎の答えを待っていた。
欲しているのは、国親が攻めてくる理由ではない。
背筋に冷や汗が流れる。
三郎は、覚悟を決めて答えた。
「間違うておれば、この首を差し出そう」
そこにいる者すべてが息を飲んだ。「いつだ?」
と、訊いてきた喜八郎に、高く上がる黒い煙を指差した。
「今宵か?」
三郎がうなずくと、皆の間に動揺が走った。
「まことか?」
と、声を上げる者もいる。
硬い表情の喜八郎が手で制する。
「ならば……わしらも手伝おう」
つばを飲み込んで九郎もうなずいた。
決意が見て取れた。
三郎と同様、恨みは深い。
「おおっ、おまえ達が力を貸してくれれば百人力じゃ」
「おう、とも! われらが恩を返すはこのときじゃ」
「むろん、積もり積もった恨みもな」
目頭が、つんと熱くなる。
これが武門に生まれた者の絆というものだ。
「頼む……まずはこれじゃ」
鍵がついた板を景気よく放り投げた。
受け取った喜八郎は、にやりと笑う。
どこの鍵かわかったのだ。
「やりおったな」
「ミコの手柄じゃ」
「鷲尾にばかり手柄をあげさせるわけにはいかぬ。次は、わしらの番じゃ!」
喜八郎が振り返ると、
「おう!」と、皆が声をあげた。
やってくれるに違いない。
笑みを浮かべ指図する。
「喜八郎は武器庫を開けてくれ。十人で持ち出し、要所要所に置いて回れ。門の近くには多めにな」
「おう、援軍も増やし、あっという間に、やり遂げて見せよう。馬で乗りこまれぬよう、牛車橋も上げておくで」 「九郎は、五人ほどで手分けして忠信様を探してくれ。忠信様にお伝えするのじゃ。姫様を連れて逃げる算段をせよと。三郎とイダテンが言うておった、と」
「そのイダテンは何をしておる」
九郎が、苛立たしげに口にした。
「国司様を助けに薬王寺へ向こうた」
その一言で、いかに切迫しているかが分かったのだろう。
皆が黙り込んだ。
それでも九郎だけは、鼻をふんと鳴らし強がって見せた。
「――よし、わかった。必ず伝えよう……おい、喜八郎。どちらが先か競おうぞ」
「おう!」