2024年04月12日「これにて失礼する。」
「これにて失礼する。」
「西郷。」
障子に手をかけ出ようとしたところを桂が呼び止めた。西郷は何だと顔だけ桂に向けた。
「待たせてすまなかった。これからよろしく頼む。」
畳に擦り付けるまでは行かないが桂は深く頭を下げた。
一瞬目を見開いた西郷は“あぁ”と一言だけ残して部屋を出た。
西郷の足音が消えたのを確認して桂は部屋を飛び出した。一目散に三津の居る部屋に走った。
「桂さん!待ってくれ!」
その後を坂本が追いかけると取り乱した桂が女中を捕まえて声を荒げていた。
「ここに居た娘は!?」
「あっあっあのお方なら中岡様ともう屋敷を出られましたっ……!」 https://community.joomla.org/events/my-events/zuo-rino-shi-jueechoran.html https://mathewanderson.livedoor.blog/archives/2550853.html http://mathewanderson.zohosites.com/
凄い剣幕で詰め寄られた女中は泣きそうな顔でそう告げた。殺される!と言わんばかりの怯えっぷり。
「いつだ!?いつ出た!?」
「半刻ほど前に……。」
「そんな前にっ!坂本さん!三津はずっと中岡君がついてるんだね!?一人になる事はないんだね!?」
今度はくるりと振り返って坂本に掴みかかった。
「落ち着いてくれ!お嬢ちゃんをこんな危険な土地で一人にはせん!中岡が責任持ってこっちが用意した宿に連れてっとるけん安心せい。」
「どこの宿ですか!」
桂は早く連れて行けと坂本を引きずりながら小松邸を飛び出した。
坂本が自分達の世話になっている宿だから大丈夫だと宥めながら桂を案内した。
「遅かったな。何を長々話しとったんや。」
宿の部屋では中岡がどうせまた何か熱弁してたんだろうと呆れ顔で寛いでいた。
「中岡君!三津は!?」
「お嬢ちゃんは別の場所に。」
「何処だ!」
桂は中岡の両肩を掴んでずいっと顔を寄せた。その必死さに中岡も坂本も苦笑いするしかなかった。
「桂さん,三津さんと何があったかは知らんがここに来る条件として居場所は絶対に教えんっちゅう約束なんです。
向こうでも探すのに苦労した。奇兵隊の面々も全然居場所は言うてくれんかったき。」
「どうやって見つけたんですか……。」
自分に教えてくれないのは分かるが中岡にも言わないなんて,絶対に三津と会わせたくないと言う強い意志を感じて胸が痛かった。
「明確な場所は教えてくれなんだが探し方は教えてくれたき。じゃけぇ私も助言だけ。三津さんは京で唯一安心出来るっちゅう場所に帰りました。」
「唯一安心出来る場所……。中岡君,恩に着る。」
それだけで充分だ。桂は中岡と坂本に一礼するとすぐに宿を飛び出した。
それを見た坂本は豪快に笑った。あの色男でさえ三津の事となるとただの男だ。『三津が唯一安心出来る場所……。』
新選組を警戒してるなら功助とトキの元へは帰らない。だったら三津の帰る場所はただ一つ。桂は全力で京の町を駆け抜けた。
『明かりが……灯ってる……。』
ここへ帰るのはいつぶりだろうか。三津も京を離れ主の居ない家なのにその様子は住んでいた時のまま。
『そうだ……サヤさんだ……。』
三津はサヤとアヤメに留守を託していた。時折お礼の品を贈っていたのを思い出した。
中に居るのはサヤだろうか。桂は恐る恐る玄関の前に立った。微かに中から声が洩れてくる。その声に耳を澄ませた。
女子達の笑う声。その中に愛しい声を見つけた。確信を得たと同時に桂は中に踏み込んでいた。
突然戸の開いた音と中に駆け込んでくる足音に三人は体と顔を強張らせて部屋の隅で身を寄せていた。
「西郷。」
障子に手をかけ出ようとしたところを桂が呼び止めた。西郷は何だと顔だけ桂に向けた。
「待たせてすまなかった。これからよろしく頼む。」
畳に擦り付けるまでは行かないが桂は深く頭を下げた。
一瞬目を見開いた西郷は“あぁ”と一言だけ残して部屋を出た。
西郷の足音が消えたのを確認して桂は部屋を飛び出した。一目散に三津の居る部屋に走った。
「桂さん!待ってくれ!」
その後を坂本が追いかけると取り乱した桂が女中を捕まえて声を荒げていた。
「ここに居た娘は!?」
「あっあっあのお方なら中岡様ともう屋敷を出られましたっ……!」 https://community.joomla.org/events/my-events/zuo-rino-shi-jueechoran.html https://mathewanderson.livedoor.blog/archives/2550853.html http://mathewanderson.zohosites.com/
凄い剣幕で詰め寄られた女中は泣きそうな顔でそう告げた。殺される!と言わんばかりの怯えっぷり。
「いつだ!?いつ出た!?」
「半刻ほど前に……。」
「そんな前にっ!坂本さん!三津はずっと中岡君がついてるんだね!?一人になる事はないんだね!?」
今度はくるりと振り返って坂本に掴みかかった。
「落ち着いてくれ!お嬢ちゃんをこんな危険な土地で一人にはせん!中岡が責任持ってこっちが用意した宿に連れてっとるけん安心せい。」
「どこの宿ですか!」
桂は早く連れて行けと坂本を引きずりながら小松邸を飛び出した。
坂本が自分達の世話になっている宿だから大丈夫だと宥めながら桂を案内した。
「遅かったな。何を長々話しとったんや。」
宿の部屋では中岡がどうせまた何か熱弁してたんだろうと呆れ顔で寛いでいた。
「中岡君!三津は!?」
「お嬢ちゃんは別の場所に。」
「何処だ!」
桂は中岡の両肩を掴んでずいっと顔を寄せた。その必死さに中岡も坂本も苦笑いするしかなかった。
「桂さん,三津さんと何があったかは知らんがここに来る条件として居場所は絶対に教えんっちゅう約束なんです。
向こうでも探すのに苦労した。奇兵隊の面々も全然居場所は言うてくれんかったき。」
「どうやって見つけたんですか……。」
自分に教えてくれないのは分かるが中岡にも言わないなんて,絶対に三津と会わせたくないと言う強い意志を感じて胸が痛かった。
「明確な場所は教えてくれなんだが探し方は教えてくれたき。じゃけぇ私も助言だけ。三津さんは京で唯一安心出来るっちゅう場所に帰りました。」
「唯一安心出来る場所……。中岡君,恩に着る。」
それだけで充分だ。桂は中岡と坂本に一礼するとすぐに宿を飛び出した。
それを見た坂本は豪快に笑った。あの色男でさえ三津の事となるとただの男だ。『三津が唯一安心出来る場所……。』
新選組を警戒してるなら功助とトキの元へは帰らない。だったら三津の帰る場所はただ一つ。桂は全力で京の町を駆け抜けた。
『明かりが……灯ってる……。』
ここへ帰るのはいつぶりだろうか。三津も京を離れ主の居ない家なのにその様子は住んでいた時のまま。
『そうだ……サヤさんだ……。』
三津はサヤとアヤメに留守を託していた。時折お礼の品を贈っていたのを思い出した。
中に居るのはサヤだろうか。桂は恐る恐る玄関の前に立った。微かに中から声が洩れてくる。その声に耳を澄ませた。
女子達の笑う声。その中に愛しい声を見つけた。確信を得たと同時に桂は中に踏み込んでいた。
突然戸の開いた音と中に駆け込んでくる足音に三人は体と顔を強張らせて部屋の隅で身を寄せていた。
2024年04月12日年が明けて三津は一之助と約束通り初詣に来た。
年が明けて三津は一之助と約束通り初詣に来た。
「本当に俺なんかと来て良かったんか?」
「はい!私は嬉しいですけど……一之助さんこそ毎日お店で顔合わせてるのに新年早々私と一緒でいいんですか?たまには別の女の子と出掛けたり……。」
三津が最後まで言い終わる前にカッと目を見開いて,
「絶対嫌じゃ!」
と声を張り上げた。その気迫に三津はすみませんと仰け反りながら謝った。
「女子は好かん……。」
「あー私は女として色気欠けてるのは自負してます。」
「違っ!女として見とらんって意味やなくてっ!いや!だからと言ってそういう目で見ちょるんでもなくてっ!」
急にあたふたしだした姿にぽかんとしてからふっと吹き出した。http://carinacyril.blogg.se/2024/april/entry.html https://paul.asukablog.net/Entry/4/ https://paul.3rin.net/Entry/4/
「分かってますよ。女とかやなくて仕事仲間として見てくれてはるんですよね?」
「まぁ……そう言う事や……。去年は入江さんとお参りしたんか?」
「去年……そうです。九一さんと二人で迎えた元日でしたね。その時私は幕府側に追われてたんで外に出るのが憚られたんですけど,九一さんは私の事考えながらあちこち連れ出してくれて……。」
三津はその思い出に目を細めた。その穏やかな横顔に一之助の胸は締め付けられた。入江を思い浮かべてあの顔をしてるのかと思うと苦しくなった。
「桂様との思い出は……。」
そこまで言葉にしてハッと口を手で押さえた。
「あの人とは……。あるようなないような……。」
『あの人って……。』
酔って本音を出した時は“小五郎さん”と言っていたのに今はその名すら言わない。
「すまん……。あっ三津さん甘酒好き?お参りしたら飲んでかん?」
一之助はおどおどしながらすぐ近くの茶屋を指差した。三津はにっと笑って飲みたいと言った。その表情に一之助はほっと胸を撫で下ろした。
参拝した後で二人は甘酒片手に長椅子に腰を下ろした。一之助は湯気の立つ器にふぅふぅと息をかけて口をつける姿を眺めた。
『咄嗟に思いついて飲んどるけど……。これ子孫繁栄とかの縁起物やったような……。』
「三津さん甘酒飲む意味知っとる?」
「体に良いですよね。夏によく飲んでましたよ。」
『良かった……変な意味に捉えられとらんかった……。』
ただ誰かに見られていたら冷やかしの元になる。それは厄介だ。
でもちらりと横目で見れば,美味しいねと無邪気に笑う顔にどうにでもなるかと思ってしまった。
「飲んだら帰ろか。」
「はい。」
「ちょっと散歩して帰ろか。」
ちょっとだけ欲を出した。少しだけ川沿いを散歩した。三津はにこにこしながらついて来たが,たまに物憂げに川を見つめた。その様子が一之助には引っかかった。
「川に何か思い出あるんか?」
「ちょっとだけ……。ここやなくて京の川ですけど……。」
「まだ好きやのにそんな無理して忘れないけんそ?」
一之助はまたハッとして手で口を押さえた。何でもかんでも思った事を吐き出す癖を何とかしなければと思いながら三津の様子を窺った。
「九一さんには忘れるんやなくて思い出として置いておける場所を作ればいいって言われました。なので思い出を整理してる最中です。
思い出して感傷に浸るんやなくて,あーそんな事あったなぁって他人事みたいに思えるぐらいにしようとしてて……。」
三津は今の状態を誠実に答えた。そう思う為には桂がくれた思い出以上の物をどんどん増やしていきたいのだと言った。だから今日誘ってもらえたのは凄く嬉しかったんだと。
「そう言う手伝いならいくらでもしちゃる。入江さんがおらん分,俺も手助けしちゃるけぇ。」
遠慮なんかするなと真っ直ぐな言葉をぶつけた。目の前の三津は驚いたような目で見てきたが,すぐにいつものように目を細めた。
「ありがとうございます。」
「思っとる事も言うて。」
入江がどんな言葉をかけてどんな風に接してきたかは分からない。今まで女子を避けてきたからどんな言葉をかければ喜ぶかも知らない。
それでも力になりたいと一之助には精一杯気持ちをぶつけた。
すると三津は表情に影を落としてぽつりぽつりと話し始めた。
「本当に俺なんかと来て良かったんか?」
「はい!私は嬉しいですけど……一之助さんこそ毎日お店で顔合わせてるのに新年早々私と一緒でいいんですか?たまには別の女の子と出掛けたり……。」
三津が最後まで言い終わる前にカッと目を見開いて,
「絶対嫌じゃ!」
と声を張り上げた。その気迫に三津はすみませんと仰け反りながら謝った。
「女子は好かん……。」
「あー私は女として色気欠けてるのは自負してます。」
「違っ!女として見とらんって意味やなくてっ!いや!だからと言ってそういう目で見ちょるんでもなくてっ!」
急にあたふたしだした姿にぽかんとしてからふっと吹き出した。http://carinacyril.blogg.se/2024/april/entry.html https://paul.asukablog.net/Entry/4/ https://paul.3rin.net/Entry/4/
「分かってますよ。女とかやなくて仕事仲間として見てくれてはるんですよね?」
「まぁ……そう言う事や……。去年は入江さんとお参りしたんか?」
「去年……そうです。九一さんと二人で迎えた元日でしたね。その時私は幕府側に追われてたんで外に出るのが憚られたんですけど,九一さんは私の事考えながらあちこち連れ出してくれて……。」
三津はその思い出に目を細めた。その穏やかな横顔に一之助の胸は締め付けられた。入江を思い浮かべてあの顔をしてるのかと思うと苦しくなった。
「桂様との思い出は……。」
そこまで言葉にしてハッと口を手で押さえた。
「あの人とは……。あるようなないような……。」
『あの人って……。』
酔って本音を出した時は“小五郎さん”と言っていたのに今はその名すら言わない。
「すまん……。あっ三津さん甘酒好き?お参りしたら飲んでかん?」
一之助はおどおどしながらすぐ近くの茶屋を指差した。三津はにっと笑って飲みたいと言った。その表情に一之助はほっと胸を撫で下ろした。
参拝した後で二人は甘酒片手に長椅子に腰を下ろした。一之助は湯気の立つ器にふぅふぅと息をかけて口をつける姿を眺めた。
『咄嗟に思いついて飲んどるけど……。これ子孫繁栄とかの縁起物やったような……。』
「三津さん甘酒飲む意味知っとる?」
「体に良いですよね。夏によく飲んでましたよ。」
『良かった……変な意味に捉えられとらんかった……。』
ただ誰かに見られていたら冷やかしの元になる。それは厄介だ。
でもちらりと横目で見れば,美味しいねと無邪気に笑う顔にどうにでもなるかと思ってしまった。
「飲んだら帰ろか。」
「はい。」
「ちょっと散歩して帰ろか。」
ちょっとだけ欲を出した。少しだけ川沿いを散歩した。三津はにこにこしながらついて来たが,たまに物憂げに川を見つめた。その様子が一之助には引っかかった。
「川に何か思い出あるんか?」
「ちょっとだけ……。ここやなくて京の川ですけど……。」
「まだ好きやのにそんな無理して忘れないけんそ?」
一之助はまたハッとして手で口を押さえた。何でもかんでも思った事を吐き出す癖を何とかしなければと思いながら三津の様子を窺った。
「九一さんには忘れるんやなくて思い出として置いておける場所を作ればいいって言われました。なので思い出を整理してる最中です。
思い出して感傷に浸るんやなくて,あーそんな事あったなぁって他人事みたいに思えるぐらいにしようとしてて……。」
三津は今の状態を誠実に答えた。そう思う為には桂がくれた思い出以上の物をどんどん増やしていきたいのだと言った。だから今日誘ってもらえたのは凄く嬉しかったんだと。
「そう言う手伝いならいくらでもしちゃる。入江さんがおらん分,俺も手助けしちゃるけぇ。」
遠慮なんかするなと真っ直ぐな言葉をぶつけた。目の前の三津は驚いたような目で見てきたが,すぐにいつものように目を細めた。
「ありがとうございます。」
「思っとる事も言うて。」
入江がどんな言葉をかけてどんな風に接してきたかは分からない。今まで女子を避けてきたからどんな言葉をかければ喜ぶかも知らない。
それでも力になりたいと一之助には精一杯気持ちをぶつけた。
すると三津は表情に影を落としてぽつりぽつりと話し始めた。
2024年04月12日「その……喧嘩別れした相手ってのは……。」
「その……喧嘩別れした相手ってのは……。」
「桂様よ。」
「は!?」
文の一言にさらに目を見開いて三津を見た。この反応を予測出来てた四人はとりあえず食べようかと合掌をして箸を手に持った。
「一之助さんは呑んで落ち着き。」
文がしれっとお猪口を持たせて酒を注いだ。一之助は動揺を隠せずにその酒を一気に飲み干した。
「ほっ本当に桂様の?」
「嘘ついてごめんなさい……。」
三津がしゅんと背中を丸くして謝った。https://note.com/carinacyril786/n/n2a8f005df863?sub_rt=share_pb https://community.joomla.org/events/my-events/o-qian-guisan-jui-weiunka.html https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/2531144.html
「三津さんは悪くない。私が勝手についた嘘やけぇ。ただでさえ京から来たってだけで珍しがられるのは目に見えちょったし,それに加えて桂様の相手やなんて知れたらもっと好奇の目に晒されたやろうから……。一之助さんごめんね。」
文に頭を下げられて一之助はとんでもないとぶんぶん首を振った。
「文ちゃんがそうするのは理解出来る。それで良かったと思う。やけん俺もこの事は他言せん……。ただ入江さんと本当に恋仲に見えたけそれがびっくりしたって言うか……。」
「フサも入江さんと姉上はお似合いと思ってます。」
「それで昨日は愚兄と進展あったそ?」
すみの単刀直入な質問に全員の視線が三津に向けられた。
「あの……そう言う雰囲気にはなったんですけど……私が……。私が……九一さんを小五郎さんって呼んでしまって……。言葉と仕草が重なって……無意識にそう呼んで……。私最低……。」
三津が膝の上で拳を握り肩を揺らして泣き出した。
「三津さん,悪い事は呑んで忘れり。」
文はすかさず三津に酒を手渡して呑ませた。素直にそれを呑んだ三津は溢れる涙を必死に拭った。すみも傍によって大丈夫大丈夫と唱えながら頭を撫でた。
「うちの愚兄それで何か言った?」
「笑って許してくれました……。私の覚悟が決まるまで最後まではしないって……。」
「……最後まではせんかったけど何かはされたん?」
妙な言い方が気になったすみが問うと三津は素直に頷いた。
「胸は舐められました……。」
「はぁー!やっぱど変態やな!三津さんごめん。うちの愚兄がごめん。」
すみは怒りに震えたが文とフサはちょっと頑張ったのね入江さんと悠長に呟いた。一之助はどう反応していいか分からず輪の中で硬直していた。
「大丈夫……やめてって言ったらやめてくれたんで……。それに今回は私も覚悟してたつもりやのにあの人の名前呼んじゃったし……。それでも怒らんかった入江さんが優し過ぎる……。」
そう言って泣き続けるから文は呑んで忘れろと更にお酒を呑ませた。「桂様に未練はないそ?」
あれから一月ほど経って三津の心境はどう変わったのか確かめたい。文が静かに話しかけると三津はしばらく黙り込んでから口を開いた。
「分かりません……。また迎えに来てくれるんちゃうかって思う時もたまにあります……。でもここにいる方が確実に幸せなんです。あの人の傍は苦しいだけ……。」
最後の一言にまだ桂への未練を感じた。きっとそう言い聞かせて忘れようとしてるだけなのだと。
「今も苦しいんやろ?」
「苦っ……しいっ!九一さんの事は好きなのに……あの人の面影をどこかに探してるのっ……。あんな終わり方したのにっ私の事,大事にしてくれてた時の思い出が重なるのっ……。まだ……そこに居るの……。」
三津は泣きじゃくって本音を吐き出した。普段の姿からでは想像できない本音だった。
いつもの振る舞いを見てるともうすでに記憶の片隅に居るか居ないかの過去の人になってるように思えていた。
だけど本心は忘れてないどころか想いも断ち切れてないように聞こえた。
「ごめんねごめんね。辛いこと聞いてごめんね。もうゆっくり休んだらいいけぇ。」
文は三津の背中を擦りながら寝ていいよと膝を貸した。三津はいつものようにすぐに眠りに落ちた。
「えっ寝たん?」
一之助は目の前の光景が異様すぎて呆気にとられた。
「桂様よ。」
「は!?」
文の一言にさらに目を見開いて三津を見た。この反応を予測出来てた四人はとりあえず食べようかと合掌をして箸を手に持った。
「一之助さんは呑んで落ち着き。」
文がしれっとお猪口を持たせて酒を注いだ。一之助は動揺を隠せずにその酒を一気に飲み干した。
「ほっ本当に桂様の?」
「嘘ついてごめんなさい……。」
三津がしゅんと背中を丸くして謝った。https://note.com/carinacyril786/n/n2a8f005df863?sub_rt=share_pb https://community.joomla.org/events/my-events/o-qian-guisan-jui-weiunka.html https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/2531144.html
「三津さんは悪くない。私が勝手についた嘘やけぇ。ただでさえ京から来たってだけで珍しがられるのは目に見えちょったし,それに加えて桂様の相手やなんて知れたらもっと好奇の目に晒されたやろうから……。一之助さんごめんね。」
文に頭を下げられて一之助はとんでもないとぶんぶん首を振った。
「文ちゃんがそうするのは理解出来る。それで良かったと思う。やけん俺もこの事は他言せん……。ただ入江さんと本当に恋仲に見えたけそれがびっくりしたって言うか……。」
「フサも入江さんと姉上はお似合いと思ってます。」
「それで昨日は愚兄と進展あったそ?」
すみの単刀直入な質問に全員の視線が三津に向けられた。
「あの……そう言う雰囲気にはなったんですけど……私が……。私が……九一さんを小五郎さんって呼んでしまって……。言葉と仕草が重なって……無意識にそう呼んで……。私最低……。」
三津が膝の上で拳を握り肩を揺らして泣き出した。
「三津さん,悪い事は呑んで忘れり。」
文はすかさず三津に酒を手渡して呑ませた。素直にそれを呑んだ三津は溢れる涙を必死に拭った。すみも傍によって大丈夫大丈夫と唱えながら頭を撫でた。
「うちの愚兄それで何か言った?」
「笑って許してくれました……。私の覚悟が決まるまで最後まではしないって……。」
「……最後まではせんかったけど何かはされたん?」
妙な言い方が気になったすみが問うと三津は素直に頷いた。
「胸は舐められました……。」
「はぁー!やっぱど変態やな!三津さんごめん。うちの愚兄がごめん。」
すみは怒りに震えたが文とフサはちょっと頑張ったのね入江さんと悠長に呟いた。一之助はどう反応していいか分からず輪の中で硬直していた。
「大丈夫……やめてって言ったらやめてくれたんで……。それに今回は私も覚悟してたつもりやのにあの人の名前呼んじゃったし……。それでも怒らんかった入江さんが優し過ぎる……。」
そう言って泣き続けるから文は呑んで忘れろと更にお酒を呑ませた。「桂様に未練はないそ?」
あれから一月ほど経って三津の心境はどう変わったのか確かめたい。文が静かに話しかけると三津はしばらく黙り込んでから口を開いた。
「分かりません……。また迎えに来てくれるんちゃうかって思う時もたまにあります……。でもここにいる方が確実に幸せなんです。あの人の傍は苦しいだけ……。」
最後の一言にまだ桂への未練を感じた。きっとそう言い聞かせて忘れようとしてるだけなのだと。
「今も苦しいんやろ?」
「苦っ……しいっ!九一さんの事は好きなのに……あの人の面影をどこかに探してるのっ……。あんな終わり方したのにっ私の事,大事にしてくれてた時の思い出が重なるのっ……。まだ……そこに居るの……。」
三津は泣きじゃくって本音を吐き出した。普段の姿からでは想像できない本音だった。
いつもの振る舞いを見てるともうすでに記憶の片隅に居るか居ないかの過去の人になってるように思えていた。
だけど本心は忘れてないどころか想いも断ち切れてないように聞こえた。
「ごめんねごめんね。辛いこと聞いてごめんね。もうゆっくり休んだらいいけぇ。」
文は三津の背中を擦りながら寝ていいよと膝を貸した。三津はいつものようにすぐに眠りに落ちた。
「えっ寝たん?」
一之助は目の前の光景が異様すぎて呆気にとられた。
2024年04月02日入江の心の痛みが声を通して伝わってくる
入江の心の痛みが声を通して伝わってくる。好きと言うたったこれだけの感情がどうしてこんなに苦しみを与えてくるんだ。
入江の腕の中でふと父親がかけてくれたまじないを思い出した。
幼い頃,転んで痛いと泣いていた自分にかけてくれた言葉。
痛いの痛いの飛んでいけ。
これは心にも有効だろうか。今してあげられる事が分からなくて,子供騙しなまじないを心で唱えながらゆっくりと入江の背中を撫でた。
入江にこの痛みを与えているのは紛れもなく自分だと自覚はしている。 http://kiya.blog.jp/archives/24341447.html https://note.com/ayumu6567/n/n260d3e885a3f?sub_rt=share_pb https://community.joomla.org/events/my-events/ru-jiangno-wanno-zhongdefuto-fu-qingakaketekuretamajinaiwo-sii-chushita.html
入江を楽にするのも苦しめるのもこの私なんだ。自分でも酷い女だとしか言いようがない。
しばらく撫でていると徐々に腕が緩んできた。それから入江は三津の手を取り無言で歩き出した。
二人は海へ出て肩を並べて座り,何を言う事もなくずっと前だけを見ていた。
「私達のこの先に正解はあるんか?」
「分かりません……。多分正解なんてないと思います。でも答えはあると思うんです。
その答えも一つだけやなくて何通りもあって,それが正しいのか間違いなのか誰にも分からんから,選んだ答えが正しかったって自分で肯定するしかないんちゃいますかねぇ……。」
「難しいわ。考えるの嫌になって来たから帰ろ。」
三津も苦笑いでそうですねと立ち上がった。それから二人で大きな溜息をついた。
「文ちゃんに問い詰められたら素直に答えるか……。」
「それがいいです……。誤魔化しは効きませんから……。何か答えに繋がるお告げとかくれそう……。」
二人は閻魔のお告げを貰いに帰路を辿った。二人が家に戻ると文がちょうど洗濯物を取り込んでいたからそれを手伝って居間で三人で畳み始めた。
「で?重苦しい空気引っ提げて帰って来てどうしたん?」
「昨日の夜お前に言われた事真剣に考えて三津さんに伝えたそっちゃ。結局二人で悩んでも何も前に進まんかったそ。」
「似た者同士で悩んでもそりゃ何も進展せんわ。二人共何だかんだ言って今の関係がちょうどいいんやろ?」
二人は驚いた顔で頷いた。文はやっぱりなとからから笑った。分かりやすくて助かるとまで言った。
「三津さんは桂様の事許せそう?他の女抱いて孕ませたって言うの帳消しにして営み出来る?」
相変わらず文は鋭い所を突くなと二人は苦笑したがそこも重要な所だ。
「そう言われると許せる気がしいひん……。私根に持つんで。多分喧嘩したり嫌な事あるとすぐ思い出してまいそう……。」
「普通はそうよ。私も今だにこの人から受けた嫌がらせ根に持っとるぐらいやけぇ。」
文はどす黒い笑みで入江を見たが入江はすぐさま視線を外した。
「引きずりながら傍に居って嫌な思いするぐらいならこの際二人とも選ばんって言う手もあるで?その代わり二人には絶対体を許しちゃいけんけど。許したらただの都合のいい女にされてしまうけ。」
「どっちも選ばない……。あぁ悩むぐらいなら一人の方が楽かもですね。」
「やろ?私も主人と結婚して七年やけど主人がこの家におったのたった二年やけぇほぼ一人よ。もうそれに慣れたけぇ一人がいいわ楽で。」
「たった二年……。」
別に驚く事でもない。忙しくあちこち足を運んでる姿を見れば想像はつく。もし桂と夫婦になったとしても自分も文と同じ立場になるんだろう。
だとしたら夫婦である意味は?と思ってしまう。
「夫婦で良かったと思える事って何ですか?」
長く一緒に暮らしてもない,子もいない文にこんな事を聞くのは失礼になるのではと思ったが文はそうねぇと嫌な顔もせず考えた。
「同じ名字をもらえた事やろか。悲しいけどこれだけが私が主人の妻って証やから。
別に良かったのはこれだけやないのよ?思い出ももらってるし届く便りからも愛情は感じたし。
でも何が一番って言われたら,主人亡くした今は名前やろか。あとは私ら二人にしか分からん時間を共有出来た事。」
「名前かぁ。」
「入江三津になる?」
にっと笑って三津の顔を覗き込む入江の頭を文は拳で殴った。
「それがいけんそっちゃ!何で冗談みたく言うかね?」
ゴツンと音がして入江は頭を抱えて踞った。
入江の腕の中でふと父親がかけてくれたまじないを思い出した。
幼い頃,転んで痛いと泣いていた自分にかけてくれた言葉。
痛いの痛いの飛んでいけ。
これは心にも有効だろうか。今してあげられる事が分からなくて,子供騙しなまじないを心で唱えながらゆっくりと入江の背中を撫でた。
入江にこの痛みを与えているのは紛れもなく自分だと自覚はしている。 http://kiya.blog.jp/archives/24341447.html https://note.com/ayumu6567/n/n260d3e885a3f?sub_rt=share_pb https://community.joomla.org/events/my-events/ru-jiangno-wanno-zhongdefuto-fu-qingakaketekuretamajinaiwo-sii-chushita.html
入江を楽にするのも苦しめるのもこの私なんだ。自分でも酷い女だとしか言いようがない。
しばらく撫でていると徐々に腕が緩んできた。それから入江は三津の手を取り無言で歩き出した。
二人は海へ出て肩を並べて座り,何を言う事もなくずっと前だけを見ていた。
「私達のこの先に正解はあるんか?」
「分かりません……。多分正解なんてないと思います。でも答えはあると思うんです。
その答えも一つだけやなくて何通りもあって,それが正しいのか間違いなのか誰にも分からんから,選んだ答えが正しかったって自分で肯定するしかないんちゃいますかねぇ……。」
「難しいわ。考えるの嫌になって来たから帰ろ。」
三津も苦笑いでそうですねと立ち上がった。それから二人で大きな溜息をついた。
「文ちゃんに問い詰められたら素直に答えるか……。」
「それがいいです……。誤魔化しは効きませんから……。何か答えに繋がるお告げとかくれそう……。」
二人は閻魔のお告げを貰いに帰路を辿った。二人が家に戻ると文がちょうど洗濯物を取り込んでいたからそれを手伝って居間で三人で畳み始めた。
「で?重苦しい空気引っ提げて帰って来てどうしたん?」
「昨日の夜お前に言われた事真剣に考えて三津さんに伝えたそっちゃ。結局二人で悩んでも何も前に進まんかったそ。」
「似た者同士で悩んでもそりゃ何も進展せんわ。二人共何だかんだ言って今の関係がちょうどいいんやろ?」
二人は驚いた顔で頷いた。文はやっぱりなとからから笑った。分かりやすくて助かるとまで言った。
「三津さんは桂様の事許せそう?他の女抱いて孕ませたって言うの帳消しにして営み出来る?」
相変わらず文は鋭い所を突くなと二人は苦笑したがそこも重要な所だ。
「そう言われると許せる気がしいひん……。私根に持つんで。多分喧嘩したり嫌な事あるとすぐ思い出してまいそう……。」
「普通はそうよ。私も今だにこの人から受けた嫌がらせ根に持っとるぐらいやけぇ。」
文はどす黒い笑みで入江を見たが入江はすぐさま視線を外した。
「引きずりながら傍に居って嫌な思いするぐらいならこの際二人とも選ばんって言う手もあるで?その代わり二人には絶対体を許しちゃいけんけど。許したらただの都合のいい女にされてしまうけ。」
「どっちも選ばない……。あぁ悩むぐらいなら一人の方が楽かもですね。」
「やろ?私も主人と結婚して七年やけど主人がこの家におったのたった二年やけぇほぼ一人よ。もうそれに慣れたけぇ一人がいいわ楽で。」
「たった二年……。」
別に驚く事でもない。忙しくあちこち足を運んでる姿を見れば想像はつく。もし桂と夫婦になったとしても自分も文と同じ立場になるんだろう。
だとしたら夫婦である意味は?と思ってしまう。
「夫婦で良かったと思える事って何ですか?」
長く一緒に暮らしてもない,子もいない文にこんな事を聞くのは失礼になるのではと思ったが文はそうねぇと嫌な顔もせず考えた。
「同じ名字をもらえた事やろか。悲しいけどこれだけが私が主人の妻って証やから。
別に良かったのはこれだけやないのよ?思い出ももらってるし届く便りからも愛情は感じたし。
でも何が一番って言われたら,主人亡くした今は名前やろか。あとは私ら二人にしか分からん時間を共有出来た事。」
「名前かぁ。」
「入江三津になる?」
にっと笑って三津の顔を覗き込む入江の頭を文は拳で殴った。
「それがいけんそっちゃ!何で冗談みたく言うかね?」
ゴツンと音がして入江は頭を抱えて踞った。
2024年04月02日「私達にも優しくて目が合うと微笑んでくださる
「私達にも優しくて目が合うと微笑んでくださるんですが,たまに何を考えていらっしゃるか分からない謎めいた感じがいいと。」
すると文はフサの両肩に手を置いてしっかりと顔を合わせて諭すように言った。
「あれはねとりあえず目を見て微笑めば女は落ちるって思っとるんと,何考えちょるか分からん顔の時は大抵助平な事考えちょるそ騙されちゃいけん。いい?あれはただの変態。」
『酷い言われよう……。』
そう思いながらも三津も入江に暴言を吐き,変態呼ばわりしてるので人の事は言えない。
「入江さんは姉上とどうなりたいのでしょうね?」 https://note.com/ayumu6567/n/n703c85225f70?sub_rt=share_pb https://community.joomla.org/events/my-events/igami-heu-er-renwo-jiao-huni-jiantekara-san-jinha-ru-jiangno-muwo-jiante-xiaotta.html http://kiya.blog.jp/archives/24341394.html
変態なのは分かった。考え方も普通じゃないのならその彼が望むものは何でしょう?とフサは小首を傾げた。
「うーん……つげの櫛を贈りたいとは言われたし家族になろうとか言われるけど本心なのかふざけてるのか見極めが難しくて。」
三津が唸り声をあげている横で文は盛大な溜息をついて額に手を当てた。
「不器用が出ちょるわ。それ本心よ。今まで見て来たけどあの人自分から女口説く事せんそっちゃ。
来るもの拒まず去る者追わずやけ。」
そんな男がとうとう人を好きになる事を覚えたかと文はちょっと嬉しくもあった。やっと自ら人を好きになったのにまともな付き合い方をしてない男が世間で言う普通の恋とやらが出来るはずもない。
加えて相手は一癖も二癖もある男の想い人で一筋縄ではいかない女子。
『みんなで幸せになると言うのは難しいですねぇ兄上。』
文は海原に目を向け,こんな時あの兄ならどんな言葉をくれただろうかと思った。
それともう一つ。
『飛脚に頼んだあの文そろそろ届いたやろか。』
さて,これがどう転ぶかなと考えながら文は口角を上げた。
文の送った便りを高杉は無事に受取り部屋で一人で目を通した。
“ご無沙汰しております。高杉さんに対して時候の挨拶は私の労力の無駄になりますので省略させていただきます。”
「おう……相変わらずやな文の奴。」
高杉はその書き出しににやっと笑った。それから文の女性らしい文字を追って全てを読み終えた時,腹に手を当て大笑いをした。
「これは黙っちょらんな。くれぐれも桂さんによろしくか。」
最後の締めの一文を見返してからそれを手に赤禰と伊藤の所へ向かった。二人にそれを読めと手渡して二人が目を通すその脇でごろんと寝転がった。
「ふっ……相変わらず嫌われてんなお前。」
伊藤は冒頭の文を見て鼻で笑った。それから書かれてある内容に赤禰はおぉと声を漏らし伊藤はえー……と不満げに声を上げた。
「これ今日届いたそ?って事は二人が向こう着いてすぐ書いたんやない?」
赤禰は二人が出立してから今日までの日にちを指折り数えた。
「やろうな。二人から話聞いてすぐやろ。短時間でよう思いつくわ。血は争えんな。」
高杉はふんっと鼻を鳴らして笑った。そしてこれをいつ桂に見せようか思案した。
その夜,三津が眠ってから文は入江の部屋へ行った。
「起きてる?」
外から声をかければ少し不機嫌そうな顔をした入江が襖を開けた。
「起きとるわ。そっちが起きとけ言うたやろが。」
三津には内緒で話があるから起きて待ってろと告げられずっと起きて待っていた。
「また何か仕返しか?」
ムスッとしながら布団の上に胡座をかくと文は布団の脇に正座した。
「入江さんは三津さんどうするつもりなん?本気で嫁にするん?それともただ傍におりたいだけなん?」
「そんなん文ちゃんには関係ない事や。」
痛いところを突いてくる。触れてほしくない部分なだけに入江は文を突っぱねようとしたがそれで引き下がる文でもない目を合わそうとしない入江をまっすぐ見据えて文は口を開いた。
「もしよ?身分揃えられて上からの縁組の許しが出て正式に桂様と夫婦になったらどうするそ?それだけ好きで一緒に居たくて戻って来たのに離れられる?
それとも傍に居るつもり?不義密通なんかになったらどうなるか分かるやろ?」
すると文はフサの両肩に手を置いてしっかりと顔を合わせて諭すように言った。
「あれはねとりあえず目を見て微笑めば女は落ちるって思っとるんと,何考えちょるか分からん顔の時は大抵助平な事考えちょるそ騙されちゃいけん。いい?あれはただの変態。」
『酷い言われよう……。』
そう思いながらも三津も入江に暴言を吐き,変態呼ばわりしてるので人の事は言えない。
「入江さんは姉上とどうなりたいのでしょうね?」 https://note.com/ayumu6567/n/n703c85225f70?sub_rt=share_pb https://community.joomla.org/events/my-events/igami-heu-er-renwo-jiao-huni-jiantekara-san-jinha-ru-jiangno-muwo-jiante-xiaotta.html http://kiya.blog.jp/archives/24341394.html
変態なのは分かった。考え方も普通じゃないのならその彼が望むものは何でしょう?とフサは小首を傾げた。
「うーん……つげの櫛を贈りたいとは言われたし家族になろうとか言われるけど本心なのかふざけてるのか見極めが難しくて。」
三津が唸り声をあげている横で文は盛大な溜息をついて額に手を当てた。
「不器用が出ちょるわ。それ本心よ。今まで見て来たけどあの人自分から女口説く事せんそっちゃ。
来るもの拒まず去る者追わずやけ。」
そんな男がとうとう人を好きになる事を覚えたかと文はちょっと嬉しくもあった。やっと自ら人を好きになったのにまともな付き合い方をしてない男が世間で言う普通の恋とやらが出来るはずもない。
加えて相手は一癖も二癖もある男の想い人で一筋縄ではいかない女子。
『みんなで幸せになると言うのは難しいですねぇ兄上。』
文は海原に目を向け,こんな時あの兄ならどんな言葉をくれただろうかと思った。
それともう一つ。
『飛脚に頼んだあの文そろそろ届いたやろか。』
さて,これがどう転ぶかなと考えながら文は口角を上げた。
文の送った便りを高杉は無事に受取り部屋で一人で目を通した。
“ご無沙汰しております。高杉さんに対して時候の挨拶は私の労力の無駄になりますので省略させていただきます。”
「おう……相変わらずやな文の奴。」
高杉はその書き出しににやっと笑った。それから文の女性らしい文字を追って全てを読み終えた時,腹に手を当て大笑いをした。
「これは黙っちょらんな。くれぐれも桂さんによろしくか。」
最後の締めの一文を見返してからそれを手に赤禰と伊藤の所へ向かった。二人にそれを読めと手渡して二人が目を通すその脇でごろんと寝転がった。
「ふっ……相変わらず嫌われてんなお前。」
伊藤は冒頭の文を見て鼻で笑った。それから書かれてある内容に赤禰はおぉと声を漏らし伊藤はえー……と不満げに声を上げた。
「これ今日届いたそ?って事は二人が向こう着いてすぐ書いたんやない?」
赤禰は二人が出立してから今日までの日にちを指折り数えた。
「やろうな。二人から話聞いてすぐやろ。短時間でよう思いつくわ。血は争えんな。」
高杉はふんっと鼻を鳴らして笑った。そしてこれをいつ桂に見せようか思案した。
その夜,三津が眠ってから文は入江の部屋へ行った。
「起きてる?」
外から声をかければ少し不機嫌そうな顔をした入江が襖を開けた。
「起きとるわ。そっちが起きとけ言うたやろが。」
三津には内緒で話があるから起きて待ってろと告げられずっと起きて待っていた。
「また何か仕返しか?」
ムスッとしながら布団の上に胡座をかくと文は布団の脇に正座した。
「入江さんは三津さんどうするつもりなん?本気で嫁にするん?それともただ傍におりたいだけなん?」
「そんなん文ちゃんには関係ない事や。」
痛いところを突いてくる。触れてほしくない部分なだけに入江は文を突っぱねようとしたがそれで引き下がる文でもない目を合わそうとしない入江をまっすぐ見据えて文は口を開いた。
「もしよ?身分揃えられて上からの縁組の許しが出て正式に桂様と夫婦になったらどうするそ?それだけ好きで一緒に居たくて戻って来たのに離れられる?
それとも傍に居るつもり?不義密通なんかになったらどうなるか分かるやろ?」