京つう

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2024年04月12日

「その……喧嘩別れした相手ってのは……。」

「その……喧嘩別れした相手ってのは……。」


「桂様よ。」


「は!?」


文の一言にさらに目を見開いて三津を見た。この反応を予測出来てた四人はとりあえず食べようかと合掌をして箸を手に持った。


「一之助さんは呑んで落ち着き。」


文がしれっとお猪口を持たせて酒を注いだ。一之助は動揺を隠せずにその酒を一気に飲み干した。


「ほっ本当に桂様の?」


「嘘ついてごめんなさい……。」


三津がしゅんと背中を丸くして謝った。https://note.com/carinacyril786/n/n2a8f005df863?sub_rt=share_pb https://community.joomla.org/events/my-events/o-qian-guisan-jui-weiunka.html https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/2531144.html


「三津さんは悪くない。私が勝手についた嘘やけぇ。ただでさえ京から来たってだけで珍しがられるのは目に見えちょったし,それに加えて桂様の相手やなんて知れたらもっと好奇の目に晒されたやろうから……。一之助さんごめんね。」


文に頭を下げられて一之助はとんでもないとぶんぶん首を振った。


「文ちゃんがそうするのは理解出来る。それで良かったと思う。やけん俺もこの事は他言せん……。ただ入江さんと本当に恋仲に見えたけそれがびっくりしたって言うか……。」


「フサも入江さんと姉上はお似合いと思ってます。」


「それで昨日は愚兄と進展あったそ?」


すみの単刀直入な質問に全員の視線が三津に向けられた。


「あの……そう言う雰囲気にはなったんですけど……私が……。私が……九一さんを小五郎さんって呼んでしまって……。言葉と仕草が重なって……無意識にそう呼んで……。私最低……。」


三津が膝の上で拳を握り肩を揺らして泣き出した。


「三津さん,悪い事は呑んで忘れり。」


文はすかさず三津に酒を手渡して呑ませた。素直にそれを呑んだ三津は溢れる涙を必死に拭った。すみも傍によって大丈夫大丈夫と唱えながら頭を撫でた。


「うちの愚兄それで何か言った?」


「笑って許してくれました……。私の覚悟が決まるまで最後まではしないって……。」


「……最後まではせんかったけど何かはされたん?」


妙な言い方が気になったすみが問うと三津は素直に頷いた。


「胸は舐められました……。」


「はぁー!やっぱど変態やな!三津さんごめん。うちの愚兄がごめん。」


すみは怒りに震えたが文とフサはちょっと頑張ったのね入江さんと悠長に呟いた。一之助はどう反応していいか分からず輪の中で硬直していた。


「大丈夫……やめてって言ったらやめてくれたんで……。それに今回は私も覚悟してたつもりやのにあの人の名前呼んじゃったし……。それでも怒らんかった入江さんが優し過ぎる……。」


そう言って泣き続けるから文は呑んで忘れろと更にお酒を呑ませた。「桂様に未練はないそ?」


あれから一月ほど経って三津の心境はどう変わったのか確かめたい。文が静かに話しかけると三津はしばらく黙り込んでから口を開いた。


「分かりません……。また迎えに来てくれるんちゃうかって思う時もたまにあります……。でもここにいる方が確実に幸せなんです。あの人の傍は苦しいだけ……。」


最後の一言にまだ桂への未練を感じた。きっとそう言い聞かせて忘れようとしてるだけなのだと。


「今も苦しいんやろ?」


「苦っ……しいっ!九一さんの事は好きなのに……あの人の面影をどこかに探してるのっ……。あんな終わり方したのにっ私の事,大事にしてくれてた時の思い出が重なるのっ……。まだ……そこに居るの……。」


三津は泣きじゃくって本音を吐き出した。普段の姿からでは想像できない本音だった。
いつもの振る舞いを見てるともうすでに記憶の片隅に居るか居ないかの過去の人になってるように思えていた。
だけど本心は忘れてないどころか想いも断ち切れてないように聞こえた。


「ごめんねごめんね。辛いこと聞いてごめんね。もうゆっくり休んだらいいけぇ。」


文は三津の背中を擦りながら寝ていいよと膝を貸した。三津はいつものようにすぐに眠りに落ちた。


「えっ寝たん?」


一之助は目の前の光景が異様すぎて呆気にとられた。



Posted by Curryson  at 00:29 │Comments(0)

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