2024年05月09日「まだ乳繰りあっとる途中や。
「まだ乳繰りあっとる途中や。邪魔すんな。」
山縣はあえて入江の怒りを煽りに行った。すると分かりやすく入江の目元が引き攣った。ようやく日頃の仕返しが出来るとほくそ笑んだが,
「お前には千年早いわ。」
入江は刀を握ってない左手で山縣の髪を鷲掴みにした。
「いっ!いでぇぇぇ!!卑怯者ぉぉぉ!!」
てっきり刀で対抗してくるとばかり思っていた山縣は気持ち悪いほど綺麗に作られた笑みの入江に悪態をついた。
「は?卑怯?言っとる意味が分からん。三津離さんのやったらこのまま頭皮剥がすぞ。」
入江から飛び出したとんでもない発言に山縣と共に三津も体を震わせた。普段穏やかな入江からまさかそんな暴力的な発言が飛び出すとは。吉田じゃあるまいし。
「九っ……九一さん……その辺で止めてあげて……。」
「有朋が三津離すのが先。」 https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202405030000/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/29dfcc15c7477e214b10b7119453c90a https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/05/03/004647?_gl=1*1wq9vb7*_gcl_au*NjYyNTYyMDMxLjE3MDkwNDE3OTU.
それを聞いて山縣は即座に三津を解放した。入江はそれで良しと刀を収めて三津を自分の方へ引き寄せた。
「まだっ……嫁ちゃんと話の途中やったのに……。」
山縣は両手で頭を抱えながら声を震わせた。半泣きである。
「山縣さん,今すぐ気持ちが整う訳やないんで心に違和感を感じたらその都度お話聞きますから。だから今全て解決しようとせんでいいんですよ。」
「嫁ちゃん……。」
半泣きだった山縣の両目からぼたぼたと涙が零れ落ちた。その様子に入江はさっきの行動は流石に大人げなかったなと反省した。
「有朋,今まで私らは堪えんにゃいけんかったかもしらん。でも今ここではそうする必要は無い。」
入江の言葉に山縣は無言で何度も頷いた。ただ声を上げて泣くのはやはり抵抗があったのか,歯を食いしばって声を押し殺して泣いていた。
その夜,入江は布団に寝転がり天井を見つめたままぼんやりしていた。
「有朋のあんな姿見るとは思わんかったな。」
「本当は繊細な方なんですね。」
その左隣りの布団で横になっていた三津も同じ様に天井を見つめて呟いた。
「……よく分からんが何故こうなった?」
そして三津の左隣りに寝そべる桂。狭いこの部屋で何故か三津を真ん中にして三人川の字になっている。入江は桂の方へ体を向けて含みのある笑みを向けた。
「たまにはええやないですか。」
「良くない。あらぬ噂立てられて困るのは三津だ。」
桂は三津越しにじっとりした目で睨んだ。この部屋で三人で寝るだなんて何を言われるか分かるだろうと捲し立てた。
「確かに困るので私は九一さんの部屋行きますね。」
どうせお前が出てけの応酬がなされるのだからここは私がと三津は起き上がった。
「三津もたまには一人でゆっくり寝たいやろ。今日はあっちで寝り。」
入江から予想に反する事を言われて三津と桂は二人して目を丸くして言葉を失くした。
「……ではお言葉に甘えて。」
「えっ!?私を九一の餌食にする気か!?」
桂は取り乱し,素直に布団を運び出そうとする三津の腕を掴んで必死に引き留めようとした。
「たまには男同士でお話するのもいいと思いますよ?じゃあおやすみなさい。」
三津は布団を抱え,笑みを残して部屋を出た。
「木戸さんはいつまで私に襲われると思っちょるん?私は男に興味ないです。そっちの趣味ないです。」
入江は馬鹿な人だなと喉を鳴らして笑った。吉田もその辺は純粋に信じてたなと思い出した。
ずっと揶揄われてたと気付いた桂は顔を真っ赤にした。信じた自分が恥ずかしいやら情けないやら,ずっと騙してきた入江が腹立たしいやら。
色んな感情が渦巻いた結果,盛大な溜息を一つついた。
山縣はあえて入江の怒りを煽りに行った。すると分かりやすく入江の目元が引き攣った。ようやく日頃の仕返しが出来るとほくそ笑んだが,
「お前には千年早いわ。」
入江は刀を握ってない左手で山縣の髪を鷲掴みにした。
「いっ!いでぇぇぇ!!卑怯者ぉぉぉ!!」
てっきり刀で対抗してくるとばかり思っていた山縣は気持ち悪いほど綺麗に作られた笑みの入江に悪態をついた。
「は?卑怯?言っとる意味が分からん。三津離さんのやったらこのまま頭皮剥がすぞ。」
入江から飛び出したとんでもない発言に山縣と共に三津も体を震わせた。普段穏やかな入江からまさかそんな暴力的な発言が飛び出すとは。吉田じゃあるまいし。
「九っ……九一さん……その辺で止めてあげて……。」
「有朋が三津離すのが先。」 https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202405030000/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/29dfcc15c7477e214b10b7119453c90a https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/05/03/004647?_gl=1*1wq9vb7*_gcl_au*NjYyNTYyMDMxLjE3MDkwNDE3OTU.
それを聞いて山縣は即座に三津を解放した。入江はそれで良しと刀を収めて三津を自分の方へ引き寄せた。
「まだっ……嫁ちゃんと話の途中やったのに……。」
山縣は両手で頭を抱えながら声を震わせた。半泣きである。
「山縣さん,今すぐ気持ちが整う訳やないんで心に違和感を感じたらその都度お話聞きますから。だから今全て解決しようとせんでいいんですよ。」
「嫁ちゃん……。」
半泣きだった山縣の両目からぼたぼたと涙が零れ落ちた。その様子に入江はさっきの行動は流石に大人げなかったなと反省した。
「有朋,今まで私らは堪えんにゃいけんかったかもしらん。でも今ここではそうする必要は無い。」
入江の言葉に山縣は無言で何度も頷いた。ただ声を上げて泣くのはやはり抵抗があったのか,歯を食いしばって声を押し殺して泣いていた。
その夜,入江は布団に寝転がり天井を見つめたままぼんやりしていた。
「有朋のあんな姿見るとは思わんかったな。」
「本当は繊細な方なんですね。」
その左隣りの布団で横になっていた三津も同じ様に天井を見つめて呟いた。
「……よく分からんが何故こうなった?」
そして三津の左隣りに寝そべる桂。狭いこの部屋で何故か三津を真ん中にして三人川の字になっている。入江は桂の方へ体を向けて含みのある笑みを向けた。
「たまにはええやないですか。」
「良くない。あらぬ噂立てられて困るのは三津だ。」
桂は三津越しにじっとりした目で睨んだ。この部屋で三人で寝るだなんて何を言われるか分かるだろうと捲し立てた。
「確かに困るので私は九一さんの部屋行きますね。」
どうせお前が出てけの応酬がなされるのだからここは私がと三津は起き上がった。
「三津もたまには一人でゆっくり寝たいやろ。今日はあっちで寝り。」
入江から予想に反する事を言われて三津と桂は二人して目を丸くして言葉を失くした。
「……ではお言葉に甘えて。」
「えっ!?私を九一の餌食にする気か!?」
桂は取り乱し,素直に布団を運び出そうとする三津の腕を掴んで必死に引き留めようとした。
「たまには男同士でお話するのもいいと思いますよ?じゃあおやすみなさい。」
三津は布団を抱え,笑みを残して部屋を出た。
「木戸さんはいつまで私に襲われると思っちょるん?私は男に興味ないです。そっちの趣味ないです。」
入江は馬鹿な人だなと喉を鳴らして笑った。吉田もその辺は純粋に信じてたなと思い出した。
ずっと揶揄われてたと気付いた桂は顔を真っ赤にした。信じた自分が恥ずかしいやら情けないやら,ずっと騙してきた入江が腹立たしいやら。
色んな感情が渦巻いた結果,盛大な溜息を一つついた。
2024年05月09日そこまで言うなら一旦話し合おうか
そこまで言うなら一旦話し合おうか。いいぞ言い分くらい聞いてやる。三津は満面の笑みで吉田をチラつかせた。
「高杉さん,私すみさんが激怒した理由はよぉぉぉく分かります。サヤさんもね?女の敵は生かしておかない部類の方なんですよ。」
「待て!あの醜女を女として見てやってるのに何で怒る!?女として見られてる事を喜ぶべきやろ!?
ぬぁぁぁ!!待てっ!!振り上げ禁止!!三津さんの握力じゃ稔麿絶対手から離れるっ!!」
大刀より扱いやすいとは言え,使い慣れてない三津がそんな刃物を振り上げると振り下ろす前に手からすっ飛ぶ可能性は大いにある。
高杉は顔を真っ青にして自分を仕留めに来ようとする三津を必死に制した。
傍観していた入江は,それもそうだなと背後から振り上げた手首を掴んだ。そして耳元で甘ーく囁いた。
「三津の可愛い手が落ちてもいけん。怪我する前に貸して?」 https://carinacyril.livedoor.blog/archives/2774957.html https://carinacyril.blogg.se/2024/may/entry.html https://paul.asukablog.net/Entry/5/
「そっ!そんな耳元で言わんでも聞こえますっ!」
三津は顔を真っ赤にして入江から飛び退いた。相変わらずいい反応するなぁと笑いながら,入江は吉田の剣先を高杉へと向けた。
「罰なら私が与えよう。」
「満面の笑顔で言う事か。」
高杉は口をへの字に曲げたが,長年の付き合いでこれはじゃれ合いだと確信を持てるから多少なりとも安堵した。三津の場合は何を仕出かすか分からない怖さがある。
「前にも木戸さんにこてんぱんにやられたやろが。」
山縣は前回の粗末なブツ御開帳事件を思い出して懲りねぇなぁと鼻で笑った。文や三津に対する無礼は命取りだと言うのに。
「それが俺やろが。」
立てた親指でビシッと己を指す高杉に全員が“まぁねぇ”と笑った。
「それに罰なんか与えんでも勝手に死による。」
「……お前がその冗談言うのは狡いっちゃ。」
入江は他人事みたいに欠伸をする高杉の頭を軽く叩いた。
「別に気にする事でもないやろ。誰だっていつかは死ぬ。それが早いか遅いかだけの事。俺はたまたま時期が見えとるだけ。
もしかしたら今日の帰りに有朋が馬に蹴られて死ぬかもしれん。」
「おい,俺を殺すな。」
高杉は真顔で詰め寄る山縣をけたけた笑った。
「先生も言っちょったやん。今日と言う同じ日は二度と来ん。やけぇ俺は自分に嘘つく生き方したくなかったんじゃ。己に従って生きる。」
「だとしても文ちゃんに手ぇ出すのは命知らずもええとこやったけどな。あの時の先生の顔……。今でも忘れん……。般若……般若みたいな顔……。」
入江は手の甲を口に当てて込み上げて来る笑いを押し留めようとした。政で感情的に論じる師の姿は何度も見て来た。だが妹に関して感情を顕にして怒り狂う姿はある意味新鮮だった。
「そんな顔で怒り狂うってのはその……あれですよね。お酒呑ませて……事件ですよね。」
三津は男として以前に人として最低だからなと,おうのが居てもそこは責めずにいられなかった。
「それやったかな?呑ませんでも蔵に引きずり込んだりとかもしよったからな。」
「ホンマに猿以下ですね。」
文が根に持つのは当然だ。どうも一度や二度の話でもないらしい。おうのも呆れや嫉妬やもう何とも言いようのない顔で溜息をついていた。
「そう言う三津さんの旦那だって俺の事言えんからな。
それに先生が玄瑞より先に“妹と結婚せんか”って声掛けたん木戸さんやからな。
それを“考えときます〜”とか言って江戸に留学して逃げたんやぞ。」
「そうやったな。あいつ逃げたってぼやいとるの聞いた。」
入江はその時の恩師の顔も昨日の事のように思い出せると笑った。
「文さんにお似合いなのは兄上なんでそれで良かったんです。」
「高杉さん,私すみさんが激怒した理由はよぉぉぉく分かります。サヤさんもね?女の敵は生かしておかない部類の方なんですよ。」
「待て!あの醜女を女として見てやってるのに何で怒る!?女として見られてる事を喜ぶべきやろ!?
ぬぁぁぁ!!待てっ!!振り上げ禁止!!三津さんの握力じゃ稔麿絶対手から離れるっ!!」
大刀より扱いやすいとは言え,使い慣れてない三津がそんな刃物を振り上げると振り下ろす前に手からすっ飛ぶ可能性は大いにある。
高杉は顔を真っ青にして自分を仕留めに来ようとする三津を必死に制した。
傍観していた入江は,それもそうだなと背後から振り上げた手首を掴んだ。そして耳元で甘ーく囁いた。
「三津の可愛い手が落ちてもいけん。怪我する前に貸して?」 https://carinacyril.livedoor.blog/archives/2774957.html https://carinacyril.blogg.se/2024/may/entry.html https://paul.asukablog.net/Entry/5/
「そっ!そんな耳元で言わんでも聞こえますっ!」
三津は顔を真っ赤にして入江から飛び退いた。相変わらずいい反応するなぁと笑いながら,入江は吉田の剣先を高杉へと向けた。
「罰なら私が与えよう。」
「満面の笑顔で言う事か。」
高杉は口をへの字に曲げたが,長年の付き合いでこれはじゃれ合いだと確信を持てるから多少なりとも安堵した。三津の場合は何を仕出かすか分からない怖さがある。
「前にも木戸さんにこてんぱんにやられたやろが。」
山縣は前回の粗末なブツ御開帳事件を思い出して懲りねぇなぁと鼻で笑った。文や三津に対する無礼は命取りだと言うのに。
「それが俺やろが。」
立てた親指でビシッと己を指す高杉に全員が“まぁねぇ”と笑った。
「それに罰なんか与えんでも勝手に死による。」
「……お前がその冗談言うのは狡いっちゃ。」
入江は他人事みたいに欠伸をする高杉の頭を軽く叩いた。
「別に気にする事でもないやろ。誰だっていつかは死ぬ。それが早いか遅いかだけの事。俺はたまたま時期が見えとるだけ。
もしかしたら今日の帰りに有朋が馬に蹴られて死ぬかもしれん。」
「おい,俺を殺すな。」
高杉は真顔で詰め寄る山縣をけたけた笑った。
「先生も言っちょったやん。今日と言う同じ日は二度と来ん。やけぇ俺は自分に嘘つく生き方したくなかったんじゃ。己に従って生きる。」
「だとしても文ちゃんに手ぇ出すのは命知らずもええとこやったけどな。あの時の先生の顔……。今でも忘れん……。般若……般若みたいな顔……。」
入江は手の甲を口に当てて込み上げて来る笑いを押し留めようとした。政で感情的に論じる師の姿は何度も見て来た。だが妹に関して感情を顕にして怒り狂う姿はある意味新鮮だった。
「そんな顔で怒り狂うってのはその……あれですよね。お酒呑ませて……事件ですよね。」
三津は男として以前に人として最低だからなと,おうのが居てもそこは責めずにいられなかった。
「それやったかな?呑ませんでも蔵に引きずり込んだりとかもしよったからな。」
「ホンマに猿以下ですね。」
文が根に持つのは当然だ。どうも一度や二度の話でもないらしい。おうのも呆れや嫉妬やもう何とも言いようのない顔で溜息をついていた。
「そう言う三津さんの旦那だって俺の事言えんからな。
それに先生が玄瑞より先に“妹と結婚せんか”って声掛けたん木戸さんやからな。
それを“考えときます〜”とか言って江戸に留学して逃げたんやぞ。」
「そうやったな。あいつ逃げたってぼやいとるの聞いた。」
入江はその時の恩師の顔も昨日の事のように思い出せると笑った。
「文さんにお似合いなのは兄上なんでそれで良かったんです。」
2024年05月09日入江に優しく宥められて,おうのはか
入江に優しく宥められて,おうのはか細い声で“はい”とだけ答えた。
重い足取りで高杉の元へ帰るおうのを見送って,三津はふらりと海岸へ向かった。その後を入江と山縣がついて歩いた。
「何で有朋も付いてくるそ?ここは私に任せて二人きりにするのが普通やろ。相変わらず空気読めん奴やな。」
「俺も嫁ちゃん心配なんやけぇええやろが。」
「あの……そっと一人にしておくって選択肢もありますけど。」
三津は泣いてぐちゃぐちゃの顔だから出来れば放っておいてはくれないかと思いながら後ろを振り返った。
すると二人はきりっとした顔で,https://community.joomla.org/events/my-events/yi-qini-nuriga-yongitekitaga-gan-xinnaanoo-tsu.html https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/2774933.html https://carina.zohosites.com/
「それはいけん。」
と声を揃えた。
「別に身投げしたりしませんよ?」
息ぴったりだった二人に,仲が良いのか悪いのか……面白い二人だとうっすら笑みを浮かべた。
「そうかもしれんけどいつも嫁ちゃんに支えてもらっちょるのにこういう時に何も出来んのは癪に障る。」
山縣がいつに無く真剣な顔で,俺が全て受け止めるなんて言うから三津は思わず吹き出した。
「は?それは私の役目やけぇ有朋は必要ない。と言うかお前を必要やと思った事はない。稔麿から見たお前はただの棒きれやけんな。」
「あ?昔の話引っ張りだすなや。俺の何処が棒きれじゃ。」
三津の事などそっちのけで二人は胸ぐらを掴み合った。『私には無理や……。』
もし出石の一件の“あの二人”に対峙した時,雅のような凛々しさで『夫を匿ってくださりありがとうございました。』なんて言えやしない。
『私はまだまだ子供なんかな……。』
三津は複雑な心境でおうのの方にちらりと目をやった。おうのは目に涙を溜めて無言でこちらも深く頭を下げた。
「私には……もったいないお言葉です……。」
おうのからすればお礼を言われる事などしていない。愛する人の側にいる者として当たり前の事をしてただけだ。
それが高杉の親にはそれが余計な事と責められ,高杉の側から排除された。
「私は……。」
どんなに頑張っても妾だ。
高杉からの愛情は充分に受け取っている。雅よりも側に居る。それでも本妻にはなれない。雅には勝てないのだ。
「私は一言お礼を伝えに来ただけなのでこれで。」
雅はお邪魔しましたとみんなに頭を下げて,梅の進と手を繋いで部屋を出た。おうのはその場で頭を下げてその背中を見送り,他の面々で玄関まで見送りに行った。
「雅さんはいつまでこちらに?」
「多分明日にはこちらを発つのでは……。お義父様は勘当を言い渡しましたので最期を見届けるおつもりはないかと……。」
入江の問いかけに雅は伏し目がちに答えた。そして軽く会釈をして屯所を出た。
『雅さんホンマは高杉さんの傍におりたいんちゃうん?』
その場に立ち尽くしていた三津だが,体は思わず玄関を飛び出して雅を追いかけていた。
「雅さんっ!」
その声に雅は立ち止まり,驚いた顔で振り返った。
「どうしましたか?」
「どうって……ホンマは高杉さんの傍に居りたいんちゃうんですか?心配なんちゃうんですか?」
雅は一瞬顔を歪めたが,すぐに表情を引き締めて微笑した。
「そうですね。ですがこればっかりは……。」
「そんな……。高杉さんのお父上は自分の息子が心配やないんですか!?」
「お義父様の実の心情は私には分かりません。ですが高杉家の名に傷を付けた事へのお怒りなのは間違いありませんし,跡継ぎにこの子がおりますので……。」
武士の家系だから。またそれかと三津の怒りは頂点に達したが,寂しそうに我が子を見下ろす雅の横顔にその怒りはみるみる鎮まっていった。
『私がこんなに怒ってどうする……。当事者の雅さんの方が何倍も苦しいのに……。』
それでも自分の立場を理解し本音を殺して全てを飲み込んで,高杉晋作の妻として努める姿に三津は何より虚しさが込み上げた。
重い足取りで高杉の元へ帰るおうのを見送って,三津はふらりと海岸へ向かった。その後を入江と山縣がついて歩いた。
「何で有朋も付いてくるそ?ここは私に任せて二人きりにするのが普通やろ。相変わらず空気読めん奴やな。」
「俺も嫁ちゃん心配なんやけぇええやろが。」
「あの……そっと一人にしておくって選択肢もありますけど。」
三津は泣いてぐちゃぐちゃの顔だから出来れば放っておいてはくれないかと思いながら後ろを振り返った。
すると二人はきりっとした顔で,https://community.joomla.org/events/my-events/yi-qini-nuriga-yongitekitaga-gan-xinnaanoo-tsu.html https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/2774933.html https://carina.zohosites.com/
「それはいけん。」
と声を揃えた。
「別に身投げしたりしませんよ?」
息ぴったりだった二人に,仲が良いのか悪いのか……面白い二人だとうっすら笑みを浮かべた。
「そうかもしれんけどいつも嫁ちゃんに支えてもらっちょるのにこういう時に何も出来んのは癪に障る。」
山縣がいつに無く真剣な顔で,俺が全て受け止めるなんて言うから三津は思わず吹き出した。
「は?それは私の役目やけぇ有朋は必要ない。と言うかお前を必要やと思った事はない。稔麿から見たお前はただの棒きれやけんな。」
「あ?昔の話引っ張りだすなや。俺の何処が棒きれじゃ。」
三津の事などそっちのけで二人は胸ぐらを掴み合った。『私には無理や……。』
もし出石の一件の“あの二人”に対峙した時,雅のような凛々しさで『夫を匿ってくださりありがとうございました。』なんて言えやしない。
『私はまだまだ子供なんかな……。』
三津は複雑な心境でおうのの方にちらりと目をやった。おうのは目に涙を溜めて無言でこちらも深く頭を下げた。
「私には……もったいないお言葉です……。」
おうのからすればお礼を言われる事などしていない。愛する人の側にいる者として当たり前の事をしてただけだ。
それが高杉の親にはそれが余計な事と責められ,高杉の側から排除された。
「私は……。」
どんなに頑張っても妾だ。
高杉からの愛情は充分に受け取っている。雅よりも側に居る。それでも本妻にはなれない。雅には勝てないのだ。
「私は一言お礼を伝えに来ただけなのでこれで。」
雅はお邪魔しましたとみんなに頭を下げて,梅の進と手を繋いで部屋を出た。おうのはその場で頭を下げてその背中を見送り,他の面々で玄関まで見送りに行った。
「雅さんはいつまでこちらに?」
「多分明日にはこちらを発つのでは……。お義父様は勘当を言い渡しましたので最期を見届けるおつもりはないかと……。」
入江の問いかけに雅は伏し目がちに答えた。そして軽く会釈をして屯所を出た。
『雅さんホンマは高杉さんの傍におりたいんちゃうん?』
その場に立ち尽くしていた三津だが,体は思わず玄関を飛び出して雅を追いかけていた。
「雅さんっ!」
その声に雅は立ち止まり,驚いた顔で振り返った。
「どうしましたか?」
「どうって……ホンマは高杉さんの傍に居りたいんちゃうんですか?心配なんちゃうんですか?」
雅は一瞬顔を歪めたが,すぐに表情を引き締めて微笑した。
「そうですね。ですがこればっかりは……。」
「そんな……。高杉さんのお父上は自分の息子が心配やないんですか!?」
「お義父様の実の心情は私には分かりません。ですが高杉家の名に傷を付けた事へのお怒りなのは間違いありませんし,跡継ぎにこの子がおりますので……。」
武士の家系だから。またそれかと三津の怒りは頂点に達したが,寂しそうに我が子を見下ろす雅の横顔にその怒りはみるみる鎮まっていった。
『私がこんなに怒ってどうする……。当事者の雅さんの方が何倍も苦しいのに……。』
それでも自分の立場を理解し本音を殺して全てを飲み込んで,高杉晋作の妻として努める姿に三津は何より虚しさが込み上げた。
2024年05月08日5月8日の記事
「何故泣かすような事を言う……。」
「また泣いてるの?私の泣き虫が小五郎さんにうつった?」
自分も甘味屋に居た頃や,新選組に身を置いていた時も泣き虫だったもんなぁと懐かしく思う。
「君達の愛が綺麗すぎるから。」
「なんですかそれ。」
愛が綺麗だなんて初めて聞いたと三津は笑う。でも桂は真剣に美しいんだと訴えた。https://community.joomla.org/events/my-events/san-jinha-xiang-shounishitetara-yu-jini-shi-jiangaka.html https://mathewanderson.livedoor.blog/archives/2774962.html
http://mathewanderson.zohosites.com/
「互いを思い遣る気持ちが,元々の心が綺麗だと言う事だ。私が汚れ過ぎてるのもあるから余計に胸が痛いよ……。」
桂の脳裏には去り際に“怒らんでやってくれ”と言い残した入江の表情が浮かんでいた。
「玄関であんなんされると流石に困る。他の隊士も気ぃ遣うでしょう。」
「分かっとるわ。ちょっと悪ふざけが過ぎただけや。もうやらんっちゃ。」
入江はお前には説経されたくないと伊藤を一睨みしてからそっぽを向いた。
「結局三津さんとはどうなってるんです?」
「それは私らだけが理解出来る関係や。」
珍しく入江の機嫌が悪い。だからと言って自分が機嫌を取る必要もなく,普段話せない本音でもぶつけようかと思った。
「まぁそりゃそうですけど。策士が策に溺れてるんですか?
藩邸でもちょくちょく隠れて三津さんにちょっかい出しといて本気になったらなす術無しですか。」
すると入江に横目で睨まれた。
『図星か。』
こんなに分かりやすい入江も珍しく,伊藤は面白くなっていた。塾生の頃から飄々として久坂や高杉達とはまた違った感性を持つ男が,こんなにも分かりやすく人間らしくあるのが新鮮で面白い。
「一応木戸さんの密偵してましたから,ある程度は知ってますよ。」
「……別に知られて困る事はしちょらんし。あれはあれで楽しかったからまたやっとるだけやし。」
「あぁなるほどね。その時の楽しさ思い出して寂しさ紛らわしてると。」
そう言えば更に眼光の鋭さが増した。これも図星らしい。
「別に手ぇ出したらいいやないですか。木戸さんも認めとるんやし。」
「それは出来ん……。」
『今の私はあの時の稔麿と同じやな。あの時は小馬鹿にしちょったけど,正攻法やないと三津が傷付くのを稔麿は気にしとったんやな……。』
深い溜息をつく自分を伊藤が信じられないと言った目で見てくるから思わず舌打ちをした。
「好きな人が傷付くんは見たくないやろ?……あぁ,お前はうちのすみを傷付けて捨てとるから何とも思わんか。」
「待って,今その話は狡い。」
思わぬ飛び火に伊藤は急に焦り始めた。
「狡くない。私が三津に手を出せん理由を明確に説明しとるだけや。私は三津を傷付けたくない。
体だけで満たされる間柄と思わせたくない。妻にしたいのは三津だけやと言うのを示したい。」
「ほっ本当に生涯独りのまま三津さんの傍に居るつもりですかっ!?」
「当たり前や。その為に死に物狂いで帰って来た。……まぁ傍から見りゃあ死に損なっての方が正しいんやろうけどな。」
すると伊藤は焦っていた態度を急変させて姿勢を正した。
「死に物狂いで合ってるでしょう。久坂さんが生かそうとしたんでしょ?だったら死に損ないではない。生きる為に戻って来たのだから間違ってない。
それにしても入江さんにここまで言わせる三津さん怖っ!どんだけ影響力持ってるんですか。」
伊藤が真剣な目で生きて帰って来た事を肯定してくれたのを驚いた矢先,三津が怖いと身を震わせるのを見て入江は笑った。お前こそ充分影響を受けてるだろうと声を上げて笑った。
「本当に……今となっちゃあ木戸さんが三津の存在をひた隠しにしたのがすんごい分かる。」
「歩く問題児ですしね。」
「まぁな。」
常に問題のど真ん中に居る三津を二人で喉を鳴らして笑った。
「でも凄いのは間違いないです。」
「そうやな。晋作に頭突きしよるしな。」
「あの絶叫は忘れませんね。」
三津に関しての話題は尽きないと二人は顔を見合わせて笑った。
楽しい思い出なのに,ここに吉田と久坂の笑い声がないのが酷く寂しく思えた。
「また泣いてるの?私の泣き虫が小五郎さんにうつった?」
自分も甘味屋に居た頃や,新選組に身を置いていた時も泣き虫だったもんなぁと懐かしく思う。
「君達の愛が綺麗すぎるから。」
「なんですかそれ。」
愛が綺麗だなんて初めて聞いたと三津は笑う。でも桂は真剣に美しいんだと訴えた。https://community.joomla.org/events/my-events/san-jinha-xiang-shounishitetara-yu-jini-shi-jiangaka.html https://mathewanderson.livedoor.blog/archives/2774962.html
http://mathewanderson.zohosites.com/
「互いを思い遣る気持ちが,元々の心が綺麗だと言う事だ。私が汚れ過ぎてるのもあるから余計に胸が痛いよ……。」
桂の脳裏には去り際に“怒らんでやってくれ”と言い残した入江の表情が浮かんでいた。
「玄関であんなんされると流石に困る。他の隊士も気ぃ遣うでしょう。」
「分かっとるわ。ちょっと悪ふざけが過ぎただけや。もうやらんっちゃ。」
入江はお前には説経されたくないと伊藤を一睨みしてからそっぽを向いた。
「結局三津さんとはどうなってるんです?」
「それは私らだけが理解出来る関係や。」
珍しく入江の機嫌が悪い。だからと言って自分が機嫌を取る必要もなく,普段話せない本音でもぶつけようかと思った。
「まぁそりゃそうですけど。策士が策に溺れてるんですか?
藩邸でもちょくちょく隠れて三津さんにちょっかい出しといて本気になったらなす術無しですか。」
すると入江に横目で睨まれた。
『図星か。』
こんなに分かりやすい入江も珍しく,伊藤は面白くなっていた。塾生の頃から飄々として久坂や高杉達とはまた違った感性を持つ男が,こんなにも分かりやすく人間らしくあるのが新鮮で面白い。
「一応木戸さんの密偵してましたから,ある程度は知ってますよ。」
「……別に知られて困る事はしちょらんし。あれはあれで楽しかったからまたやっとるだけやし。」
「あぁなるほどね。その時の楽しさ思い出して寂しさ紛らわしてると。」
そう言えば更に眼光の鋭さが増した。これも図星らしい。
「別に手ぇ出したらいいやないですか。木戸さんも認めとるんやし。」
「それは出来ん……。」
『今の私はあの時の稔麿と同じやな。あの時は小馬鹿にしちょったけど,正攻法やないと三津が傷付くのを稔麿は気にしとったんやな……。』
深い溜息をつく自分を伊藤が信じられないと言った目で見てくるから思わず舌打ちをした。
「好きな人が傷付くんは見たくないやろ?……あぁ,お前はうちのすみを傷付けて捨てとるから何とも思わんか。」
「待って,今その話は狡い。」
思わぬ飛び火に伊藤は急に焦り始めた。
「狡くない。私が三津に手を出せん理由を明確に説明しとるだけや。私は三津を傷付けたくない。
体だけで満たされる間柄と思わせたくない。妻にしたいのは三津だけやと言うのを示したい。」
「ほっ本当に生涯独りのまま三津さんの傍に居るつもりですかっ!?」
「当たり前や。その為に死に物狂いで帰って来た。……まぁ傍から見りゃあ死に損なっての方が正しいんやろうけどな。」
すると伊藤は焦っていた態度を急変させて姿勢を正した。
「死に物狂いで合ってるでしょう。久坂さんが生かそうとしたんでしょ?だったら死に損ないではない。生きる為に戻って来たのだから間違ってない。
それにしても入江さんにここまで言わせる三津さん怖っ!どんだけ影響力持ってるんですか。」
伊藤が真剣な目で生きて帰って来た事を肯定してくれたのを驚いた矢先,三津が怖いと身を震わせるのを見て入江は笑った。お前こそ充分影響を受けてるだろうと声を上げて笑った。
「本当に……今となっちゃあ木戸さんが三津の存在をひた隠しにしたのがすんごい分かる。」
「歩く問題児ですしね。」
「まぁな。」
常に問題のど真ん中に居る三津を二人で喉を鳴らして笑った。
「でも凄いのは間違いないです。」
「そうやな。晋作に頭突きしよるしな。」
「あの絶叫は忘れませんね。」
三津に関しての話題は尽きないと二人は顔を見合わせて笑った。
楽しい思い出なのに,ここに吉田と久坂の笑い声がないのが酷く寂しく思えた。
2024年05月03日頭上からの声にゆっくり顔を上げた。
頭上からの声にゆっくり顔を上げた。
「よぉ久しいな。」
「元周様……。またそんな格好してお仕事から逃げて来たんです?」
「失礼やな。お前はまた参謀と散歩か?」
元周は三津の左側に並んで同じようにしゃがんだ。
「いえ,今日は山縣さんと。」
三津の弱々しい笑みに元周は何か考える素振りを見せた。https://william-l.cocolog-nifty.com/blog/2024/05/post-ad862c.html https://besidethepoint.mystrikingly.com/blog/f4afa7e6c1e http://jennifer92.livedoor.blog/archives/35668501.html
「あの噂は本当か?あいつが其方を捨てて他の女に乗り換えたと。」
「私を捨てたって……私は木戸の妻ですよ?」
三津は何を言ってるのと笑ったが元周は真顔で三津を見ていた。
「木戸から聞いておる。お前は参謀と恋仲なのだろう?木戸が無理矢理あいつから奪って婚姻を結んだと。」
三津は真面目な顔の元周をぽかんと見上げた。それからじわじわと笑いが込上げてきた。
「小五郎さんそんな事言ったんです?それは嘘ですよ。」
三津はそれから桂と出逢った経緯から今までの事,入江との事も包み隠さず全て話した。今度はそれを聞き終えた元周がぽかんとした。
「あいつ,説明が面倒臭くて我を騙したな……。まぁ良い。松子,話してくれてありがとう。それで,何故あの参謀は和菓子屋の女将などに現を抜かしとるんだ。」
「何で知ってるんです?」
「市中視察しておるからな。」
得意げに笑みを浮かべる元周に,全部筒抜けとは怖い藩主様だなぁと笑った。隠したってどうせ権力で喋らされる。三津は女将との最近の出来事を洗いざらい話した。
「なるほどな……。それで何でお前は参謀を突き放した?」
「えっ?話聞いてました?だから夫がいるのに都合良く好きな人を近くに置くのは普通やなくて……。」
「その関係は其方ら三人の問題だ。だが松子は自分の意思に反し,関係のない女将の意見を通した。それはおかしい。」
「でも女将の言う事が正しいと思ったから,私の意見でもあると思うんです。それに女将の身の上を聞いたら本当に自分が駄目やって思って……。」
それを聞いた元周は深い溜息をついて額に手を当てた。
「松子,お前が優し過ぎるのは知っておる。しかしだな?何故女将の問題をお前が抱える?
確かに女将には同情すべき点はある。だがそれは女将の問題であってお前の問題ではない。
女将は妬み嫉みで松子に責任転嫁,自分の非をなすり付けとるだけだ。
それをお前は馬鹿正直に自分の事かのように抱えとる。」
三津は呆然としてしまった。言葉の出ない三津に元周はまた深い溜息をついた。
「嫁の傷心時に旦那は何をしとるんだ。」
「元周様に命ぜられて仕事に行ったっきり帰って来ませんね。」元周はそうだったと豪快に笑った。
「許せ。もう二,三日で戻るであろう。そうだ松子,その間うちに来い。家内の話し相手にでもなってくれんか?お前ももう少し視野を広げた方がいい。それがいい。」
『これは拒否権ないなぁ。』
だって相手は藩主だから。でもそれもいいと思った。元周と話して随分と気が和らいだ。
如何に自分が一つの考えに固執していたかに気付いた。
「嫁ちゃーんっ!……げっ!元周様!」
「随分な反応やのう山縣。」
戻って来た山縣は馬鹿正直な反応をした。そして深く頭を下げて瞬時に謝罪した。
「まぁ良い。木戸が留守の間,松子はうちで預かる。木戸が戻れば迎えに来るように言っておけ。いいか?松子を引き渡すのは木戸のみだ。
「よぉ久しいな。」
「元周様……。またそんな格好してお仕事から逃げて来たんです?」
「失礼やな。お前はまた参謀と散歩か?」
元周は三津の左側に並んで同じようにしゃがんだ。
「いえ,今日は山縣さんと。」
三津の弱々しい笑みに元周は何か考える素振りを見せた。https://william-l.cocolog-nifty.com/blog/2024/05/post-ad862c.html https://besidethepoint.mystrikingly.com/blog/f4afa7e6c1e http://jennifer92.livedoor.blog/archives/35668501.html
「あの噂は本当か?あいつが其方を捨てて他の女に乗り換えたと。」
「私を捨てたって……私は木戸の妻ですよ?」
三津は何を言ってるのと笑ったが元周は真顔で三津を見ていた。
「木戸から聞いておる。お前は参謀と恋仲なのだろう?木戸が無理矢理あいつから奪って婚姻を結んだと。」
三津は真面目な顔の元周をぽかんと見上げた。それからじわじわと笑いが込上げてきた。
「小五郎さんそんな事言ったんです?それは嘘ですよ。」
三津はそれから桂と出逢った経緯から今までの事,入江との事も包み隠さず全て話した。今度はそれを聞き終えた元周がぽかんとした。
「あいつ,説明が面倒臭くて我を騙したな……。まぁ良い。松子,話してくれてありがとう。それで,何故あの参謀は和菓子屋の女将などに現を抜かしとるんだ。」
「何で知ってるんです?」
「市中視察しておるからな。」
得意げに笑みを浮かべる元周に,全部筒抜けとは怖い藩主様だなぁと笑った。隠したってどうせ権力で喋らされる。三津は女将との最近の出来事を洗いざらい話した。
「なるほどな……。それで何でお前は参謀を突き放した?」
「えっ?話聞いてました?だから夫がいるのに都合良く好きな人を近くに置くのは普通やなくて……。」
「その関係は其方ら三人の問題だ。だが松子は自分の意思に反し,関係のない女将の意見を通した。それはおかしい。」
「でも女将の言う事が正しいと思ったから,私の意見でもあると思うんです。それに女将の身の上を聞いたら本当に自分が駄目やって思って……。」
それを聞いた元周は深い溜息をついて額に手を当てた。
「松子,お前が優し過ぎるのは知っておる。しかしだな?何故女将の問題をお前が抱える?
確かに女将には同情すべき点はある。だがそれは女将の問題であってお前の問題ではない。
女将は妬み嫉みで松子に責任転嫁,自分の非をなすり付けとるだけだ。
それをお前は馬鹿正直に自分の事かのように抱えとる。」
三津は呆然としてしまった。言葉の出ない三津に元周はまた深い溜息をついた。
「嫁の傷心時に旦那は何をしとるんだ。」
「元周様に命ぜられて仕事に行ったっきり帰って来ませんね。」元周はそうだったと豪快に笑った。
「許せ。もう二,三日で戻るであろう。そうだ松子,その間うちに来い。家内の話し相手にでもなってくれんか?お前ももう少し視野を広げた方がいい。それがいい。」
『これは拒否権ないなぁ。』
だって相手は藩主だから。でもそれもいいと思った。元周と話して随分と気が和らいだ。
如何に自分が一つの考えに固執していたかに気付いた。
「嫁ちゃーんっ!……げっ!元周様!」
「随分な反応やのう山縣。」
戻って来た山縣は馬鹿正直な反応をした。そして深く頭を下げて瞬時に謝罪した。
「まぁ良い。木戸が留守の間,松子はうちで預かる。木戸が戻れば迎えに来るように言っておけ。いいか?松子を引き渡すのは木戸のみだ。