2023年12月10日 それを聞いた瞬間、桜司郎は目を見開く。
それを聞いた瞬間、桜司郎は目を見開く。
「どこの男が……、惚れた女子に情けない姿を見せたいと思いますか……」
ついに言ってしまったと沖田は視線を逸らす。桜司郎の瞳を見続けることが出来なかった。
「……本当は、この想いも墓場まで持っていくつもりだったんです。伝えたところで、長く生きてあげられないから。ですが、貴女が土方さんの好い人だと思った途端に……抑えきれなくなってしまった。……独り善がりで、臆病で、卑怯で、どうしようもない男なんですよ……私は──ッ!?」
桜司郎は腕をのばし沖田の袖を引くと、ぐいと引き寄せた。突然のことに体勢を崩した沖田は、そのまま暖かいものに包まれる。
頭を抱え込まれるようにして、https://www.keepandshare.com/discuss4/10887/ https://www.tumblr.com/carinadarling/736120850704646144/%E3%81%A4%E3%81%BE%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A8%E6%80%9D%E3%81%86%E9%AB%98%E6%9D%89%E3%81%AE%E6%B0%97%E6%8C%81?source=share http://johnsmith786.zohosites.com/ 抱き締められていると暫くしてから脳が理解した。
「桜花……さ、」
規則正しく、けれどもいつもよりも速く鳴る鼓動が沖田の鼓膜に響き、無性に安らかな心地になる。まるで母の胸に抱かれているようだ。
「やめて……。私の好きな人を悪く言わないで……。いくら沖田先生でも、それ以上言うなら怒りますよ……」
震える声を聞き、顔を上げれば清らかな雫が落ちてくる。美しい、と思った。
一体、他人のために泣ける人間が世にどれだけいるのだろう。この涙を見れただけでも、勇気を振り絞った甲斐があったなどと沖田はぼんやりと思った。
「…………桜花さん……」
切なげな沖田の声に、一度は捨てたはずの愛しさが込み上げる。今まで我慢してきた分の想いが涙となって止めどなく溢れた。
「……好き、好きです、沖田先生……」
「…………私は、貴女よりずっと早く死にますよ。来年の桜すら共に見られないかもしれない……。それでも、好きだと言ってくれますか……?」
「ええ、好きです。病なんて関係ない。それを言うなら、私だっていつ死ぬか分かりません……ッ」
頭を抱える腕の力が緩んだ隙に、沖田は座り直す。頬を伝う涙をそっと掬うと、身を乗り出して傷に障らないように気を使いながら抱き寄せた。
気が付けば、自身の頬にも熱いものが流れる。悲しさではなく、愛しさでも涙は出るものなのかと驚いた。
「……貴女は、生きて。誰かを庇うのではなく、自分が生き残ることを考えて下さい。良いですか?」
「…………はい」
有難うと、後頭部を撫でる。
「…………私はね。貴女を私だけのものにしたいとは言わない。生き生きとしている貴女が好きだから」
つまり、想いが通じようともこれからも関係性は変わらないということだ。妻にと望むことは簡単だが、それでは籠の鳥のように縛ることになってしまう。
そして近いうちに自分が死んだ時に、桜司郎が一人になってしまうことを恐れた。少なくとも新撰組であれば、誰かはいる。
「ああ……でも、勘違いしないで下さいね。私は存外に欲張りだから、他の誰にも渡すつもりは有りませんよ」
「はい……ッ」
桜司郎は何度も頷いた。 幸せだと桜司郎は言った。たった一言、好きだと伝えるだけでこのようにも喜ばせてあげられるのなら、もっと早く言えば良かったと沖田は切なげに目を細める。
抱き締める身体を離し、羽二重餅のように白く滑らかな頬を手でなぞった。そしてに額にかかる前髪を分けると、そこへ唇を落とす。
すると、ぴたりと涙は止まり、代わりに餌を強請る鯉のように口をパクパクとさせた。
「沖田先生、今……ッ」
「……ふふ。つい。あまりにも貴女が愛らしいのがいけないですよ」
そのように言えば、眉尻を下げて困ったように狼狽えている。感情というものは不思議なもので、自覚すれば更に増していく。
そこへ煌々とした朝日が差し込み、薄暗かった部屋が明るくなった。
「どこの男が……、惚れた女子に情けない姿を見せたいと思いますか……」
ついに言ってしまったと沖田は視線を逸らす。桜司郎の瞳を見続けることが出来なかった。
「……本当は、この想いも墓場まで持っていくつもりだったんです。伝えたところで、長く生きてあげられないから。ですが、貴女が土方さんの好い人だと思った途端に……抑えきれなくなってしまった。……独り善がりで、臆病で、卑怯で、どうしようもない男なんですよ……私は──ッ!?」
桜司郎は腕をのばし沖田の袖を引くと、ぐいと引き寄せた。突然のことに体勢を崩した沖田は、そのまま暖かいものに包まれる。
頭を抱え込まれるようにして、https://www.keepandshare.com/discuss4/10887/ https://www.tumblr.com/carinadarling/736120850704646144/%E3%81%A4%E3%81%BE%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A8%E6%80%9D%E3%81%86%E9%AB%98%E6%9D%89%E3%81%AE%E6%B0%97%E6%8C%81?source=share http://johnsmith786.zohosites.com/ 抱き締められていると暫くしてから脳が理解した。
「桜花……さ、」
規則正しく、けれどもいつもよりも速く鳴る鼓動が沖田の鼓膜に響き、無性に安らかな心地になる。まるで母の胸に抱かれているようだ。
「やめて……。私の好きな人を悪く言わないで……。いくら沖田先生でも、それ以上言うなら怒りますよ……」
震える声を聞き、顔を上げれば清らかな雫が落ちてくる。美しい、と思った。
一体、他人のために泣ける人間が世にどれだけいるのだろう。この涙を見れただけでも、勇気を振り絞った甲斐があったなどと沖田はぼんやりと思った。
「…………桜花さん……」
切なげな沖田の声に、一度は捨てたはずの愛しさが込み上げる。今まで我慢してきた分の想いが涙となって止めどなく溢れた。
「……好き、好きです、沖田先生……」
「…………私は、貴女よりずっと早く死にますよ。来年の桜すら共に見られないかもしれない……。それでも、好きだと言ってくれますか……?」
「ええ、好きです。病なんて関係ない。それを言うなら、私だっていつ死ぬか分かりません……ッ」
頭を抱える腕の力が緩んだ隙に、沖田は座り直す。頬を伝う涙をそっと掬うと、身を乗り出して傷に障らないように気を使いながら抱き寄せた。
気が付けば、自身の頬にも熱いものが流れる。悲しさではなく、愛しさでも涙は出るものなのかと驚いた。
「……貴女は、生きて。誰かを庇うのではなく、自分が生き残ることを考えて下さい。良いですか?」
「…………はい」
有難うと、後頭部を撫でる。
「…………私はね。貴女を私だけのものにしたいとは言わない。生き生きとしている貴女が好きだから」
つまり、想いが通じようともこれからも関係性は変わらないということだ。妻にと望むことは簡単だが、それでは籠の鳥のように縛ることになってしまう。
そして近いうちに自分が死んだ時に、桜司郎が一人になってしまうことを恐れた。少なくとも新撰組であれば、誰かはいる。
「ああ……でも、勘違いしないで下さいね。私は存外に欲張りだから、他の誰にも渡すつもりは有りませんよ」
「はい……ッ」
桜司郎は何度も頷いた。 幸せだと桜司郎は言った。たった一言、好きだと伝えるだけでこのようにも喜ばせてあげられるのなら、もっと早く言えば良かったと沖田は切なげに目を細める。
抱き締める身体を離し、羽二重餅のように白く滑らかな頬を手でなぞった。そしてに額にかかる前髪を分けると、そこへ唇を落とす。
すると、ぴたりと涙は止まり、代わりに餌を強請る鯉のように口をパクパクとさせた。
「沖田先生、今……ッ」
「……ふふ。つい。あまりにも貴女が愛らしいのがいけないですよ」
そのように言えば、眉尻を下げて困ったように狼狽えている。感情というものは不思議なもので、自覚すれば更に増していく。
そこへ煌々とした朝日が差し込み、薄暗かった部屋が明るくなった。
2023年12月10日です。皆言っていますが、先生の下で
です。皆言っていますが、先生の下で働けて幸せですよ」
それを聞いた沖田は複雑そうに微笑む。まるで気持ちが伝わっていないのではないかと、モヤモヤとした。まあ良いか、と思ったその時、
『沖田さん、あんた後悔するぞ。己の気持ちに向き合えない人間は、それ以上成長出来ぬ』
と斎藤の言葉が浮かぶ。
──分かってますよ、斎藤君。私も鈍いと散々言われてきましたが、この子も大概なのではないですか。
ハア、と小さく溜息を吐くと沖田は片腕で背を支えたまま、桜司郎の横へ移動した。
まさに一世一代の大勝負である。https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986481513&owner_id=68426994 https://carinadarling.usite.pro/blog/2023-12-06-1 https://www.keepandshare.com/discuss2/13251/ 池田屋へ突入した時よりも、はるかに緊張が走った。
「桜司郎──いや、桜花さん」
「はい?」
──なんと言えば良い。好きだ、惚れています……?否、それよりも先に言わねばならぬことがあるではないか。
沖田は、今は大人しくともざわつく胸に手を当てる。その目には静かな熱が宿っている。見た事のないそれに、桜司郎は息を飲む。「……貴女に言わなければならないことがあります」
「なん、でしょう……」
真剣な眼差しを受けて、桜司郎の鼓動は徐々に早まっていく。
だが、ふと沖田は瞳に哀を浮かべた。
「私の病…………。聡い貴女のことだから、もう気付いているとは思います」
病、の言葉に桜司郎は瞳を揺らす。ずっと気になりながらも目を逸らし続けたそれを、今聞かされることに心の準備が追い付いていなかった。
「……それ、は。今じゃなければいけませんか?」
「はい。私はもう貴女へ隠し事はしたくない……」
「…………分かりました」
急に胸がざわつき始める。このような心地になる時は、大体良くないことの前兆なのだ。
有難う、と沖田は微笑む。
「……私はね。労咳、なんです」
「…………ろう、がい……?」
先程まで幸せな気持ちで満たされていたというのに、目の前が真っ暗になる。その脳裏には痩せ衰え、大量の血を吐き、我を失う高杉の姿が浮かんでは消えた。
薄々とは分かっていた。分かっていたのだ。それでもではないと信じたかった。やっと話してくれたという少しの嬉しさと、なぜこの人が病にという憎らしさがせめぎ合う。
何も言葉が出てこない。目の前の現実が受け入れられず、ただ視線を彷徨わせるだけだった。
「そして昨日、血も吐きました。故に、そう永くは無いでしょう」
あくまでも沖田は他人事のように淡々と話す。死病だと分かって平気な人間が、この世の何処にいるだろうか。ここまで受け入れるために、どれだけの悲しみを越えてきたのかと思うだけで、胸が張り裂けそうに痛む。
──遠い。沖田先生、貴方が遠い。こんなにも近くにいるのに、ずっとずっと手の届かないところへ行ってしまっている気がする。
「……わたし、は。私では、貴方の力には……なれませんでしたか……?」
桜司郎は震える声で問い掛ける。少なくともそこらの平隊士よりは近くにいたつもりでいた。隣に立つことは叶わずとも、堂々と背を追うために努力を尽くしてきた。
だが、沖田はたったひとりで孤独を背負うことを決めてしまったのかと思うと、やり切れない気持ちになる。
表情を暗くした桜司郎を見た沖田は、首を振りながら僅かに身体を乗り出した。
「……違う!私は、私が労咳だと知れることでこの関係が崩れてしまうのが……そう、怖かったんだ。新撰組にいるためには……貴女と共に歩むためには、一番組組長で在り続けなければならない。床に臥せる病人では駄目だった……!」
「どうして…………?」
その問い掛けに、沖田は拳を固めると覚悟を決めたように、桜司郎の瞳を見詰める。頬や耳を薄らと朱に染め、ずっと抑えてきた思いを腹の底から押し上げた。
──もう後戻りは出来ない。
「──あ、あなたに惚れているからです!」
それを聞いた沖田は複雑そうに微笑む。まるで気持ちが伝わっていないのではないかと、モヤモヤとした。まあ良いか、と思ったその時、
『沖田さん、あんた後悔するぞ。己の気持ちに向き合えない人間は、それ以上成長出来ぬ』
と斎藤の言葉が浮かぶ。
──分かってますよ、斎藤君。私も鈍いと散々言われてきましたが、この子も大概なのではないですか。
ハア、と小さく溜息を吐くと沖田は片腕で背を支えたまま、桜司郎の横へ移動した。
まさに一世一代の大勝負である。https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986481513&owner_id=68426994 https://carinadarling.usite.pro/blog/2023-12-06-1 https://www.keepandshare.com/discuss2/13251/ 池田屋へ突入した時よりも、はるかに緊張が走った。
「桜司郎──いや、桜花さん」
「はい?」
──なんと言えば良い。好きだ、惚れています……?否、それよりも先に言わねばならぬことがあるではないか。
沖田は、今は大人しくともざわつく胸に手を当てる。その目には静かな熱が宿っている。見た事のないそれに、桜司郎は息を飲む。「……貴女に言わなければならないことがあります」
「なん、でしょう……」
真剣な眼差しを受けて、桜司郎の鼓動は徐々に早まっていく。
だが、ふと沖田は瞳に哀を浮かべた。
「私の病…………。聡い貴女のことだから、もう気付いているとは思います」
病、の言葉に桜司郎は瞳を揺らす。ずっと気になりながらも目を逸らし続けたそれを、今聞かされることに心の準備が追い付いていなかった。
「……それ、は。今じゃなければいけませんか?」
「はい。私はもう貴女へ隠し事はしたくない……」
「…………分かりました」
急に胸がざわつき始める。このような心地になる時は、大体良くないことの前兆なのだ。
有難う、と沖田は微笑む。
「……私はね。労咳、なんです」
「…………ろう、がい……?」
先程まで幸せな気持ちで満たされていたというのに、目の前が真っ暗になる。その脳裏には痩せ衰え、大量の血を吐き、我を失う高杉の姿が浮かんでは消えた。
薄々とは分かっていた。分かっていたのだ。それでもではないと信じたかった。やっと話してくれたという少しの嬉しさと、なぜこの人が病にという憎らしさがせめぎ合う。
何も言葉が出てこない。目の前の現実が受け入れられず、ただ視線を彷徨わせるだけだった。
「そして昨日、血も吐きました。故に、そう永くは無いでしょう」
あくまでも沖田は他人事のように淡々と話す。死病だと分かって平気な人間が、この世の何処にいるだろうか。ここまで受け入れるために、どれだけの悲しみを越えてきたのかと思うだけで、胸が張り裂けそうに痛む。
──遠い。沖田先生、貴方が遠い。こんなにも近くにいるのに、ずっとずっと手の届かないところへ行ってしまっている気がする。
「……わたし、は。私では、貴方の力には……なれませんでしたか……?」
桜司郎は震える声で問い掛ける。少なくともそこらの平隊士よりは近くにいたつもりでいた。隣に立つことは叶わずとも、堂々と背を追うために努力を尽くしてきた。
だが、沖田はたったひとりで孤独を背負うことを決めてしまったのかと思うと、やり切れない気持ちになる。
表情を暗くした桜司郎を見た沖田は、首を振りながら僅かに身体を乗り出した。
「……違う!私は、私が労咳だと知れることでこの関係が崩れてしまうのが……そう、怖かったんだ。新撰組にいるためには……貴女と共に歩むためには、一番組組長で在り続けなければならない。床に臥せる病人では駄目だった……!」
「どうして…………?」
その問い掛けに、沖田は拳を固めると覚悟を決めたように、桜司郎の瞳を見詰める。頬や耳を薄らと朱に染め、ずっと抑えてきた思いを腹の底から押し上げた。
──もう後戻りは出来ない。
「──あ、あなたに惚れているからです!」
2023年12月10日襦袢の肩口に沖田の手がかかり
襦袢の肩口に沖田の手がかかり、するりと解かれそうになるのを、桜司郎は赤い顔をしながら袷を引き寄せて抵抗する。
「嫌、ですか……?それなら無理強いは出来ません……」
寂しげな声音を出されると、途端に自分が間違っているような感覚に陥る。これも惚れた弱みなのだろうか。桜司郎は羞恥心を何とか打ち払うと、自ら襦袢を肩から落とした。
これも全て、都合の良い幸せな夢なのかも知れないと思いながら。
「それなら……背中……だけ、お願いします」
そのように言えば、沖田は純粋な笑みを浮かべて頷いた。
固く搾った手拭いで首筋から肩、https://www.keepandshare.com/discuss4/10885/ https://www.tumblr.com/mathewanderson786/735964431867117568/%E3%81%88%E3%81%88-%E3%81%88%E3%81%88%E6%A1%9C%E5%8F%B8%E9%83%8E%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AF%E5%B7%B1%E3%81%8C%E5%8B%99%E3%82%81%E3%82%92%E6%9E%9C%E3%81%9F%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%94%E7%AB%8B%E6%B4%BE%E3%81%AA%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99-%E3%81%9D%E3%81%86%E8%A8%80%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%8C?source=share https://carinadarling78.zohosites.com/ 背にかけて拭っていく。安芸や稽古で負ったと思われる傷痕が痛々しい。柔らかな朝の光が射し込み、薄く白い肌をより透き通らせた。
──思えば、あの夜も傷の手当を手伝ったな。
ぼんやりとそう思いながら、沖田は刀傷に沿うように指を這わせた。すると、びくりと肩が跳ねる。
桜司郎から抗議の言葉が飛んでくる前に、口を開いた。
「桜司郎さん……。もう二度と、自分を犠牲にしないと約束して下さい」
背を拭き終わり、新しい襦袢を肩へ掛けてやる。
「それは…………」
桜司郎はドキリとしながらも口ごもった。まるで、今回負傷した時に考えていたことがバレているようなそれに内心焦る。
それに隊士として生きている以上、このように怪我を負うことはこれからもあるだろう。場しのぎの返事はいくらでも出来るが、沖田へ嘘を吐くのは嫌だった。
「いきなりどうしました?隊務で怪我をするなんて、有り得ることじゃないですか」
誤魔化すようなそれに、沖田は眉間に皺を寄せる。
「……"身代わりになってあげたかった"。貴女は……確かにそう言いました」
何故それを沖田が知っているのかと言葉を失った。確かそれは山野へ言った筈なのだ。 山野はああ見えて口が硬い。告げ口をするようにも思えなかった。
桜司郎は昨夜のとの会話を何とか思い出そうとする。すると、ひとつ違和感に気付いた。
『……何故、自身を犠牲にするんだ。沖田にそのような価値など無いだろうに』
沖田を崇拝する山野が、"沖田"などと呼び捨てにする訳がないのである。
──まさか。あれは、八十八君ではなくて……。
「お、沖田先生……いつから、居たのです……?」
どくんどくんと鼓動が高鳴った。もしあれが山野ではなく、沖田であるとするならば、本人へ好きだと言ってしまったことになる。
肩に掛けられた新しいそれに袖を通すことも忘れ、落ち着かない気持ちを抑えるように敷布の裾を掴んだ。
「昨夜からですよ。南部先生は会津中将様の元へ行かねばならなくなってしまい、代わりに私が残ったのです」
その回答に、桜司郎は目を丸くしながら顔を上げる。引き攣れるような脇腹の痛みが襲うが、それすらも気にならない。
──もしかすると、あれは……あのは、夢じゃなかったの……?
『…………私も、貴女のことが好きだ……』
朧気ながらも、その優しい響きはずっと残っている。だがそれを確かめる勇気が無かった。勘違いだとしたら、立ち直れないと思ったのだ。
「そう、でしたか……」
「ええ。斬り合いをして怪我をするのは仕方の無いことだとは思います。しかし、誰かを庇うこととは話しが違う。……もう、貴女が傷付くのを見るのはつらい」
切なる言葉に、桜司郎の心は揺れる。その意味が部下に対する親愛だとしても、嬉しかった。
「本当に、沖田先生は良い
「嫌、ですか……?それなら無理強いは出来ません……」
寂しげな声音を出されると、途端に自分が間違っているような感覚に陥る。これも惚れた弱みなのだろうか。桜司郎は羞恥心を何とか打ち払うと、自ら襦袢を肩から落とした。
これも全て、都合の良い幸せな夢なのかも知れないと思いながら。
「それなら……背中……だけ、お願いします」
そのように言えば、沖田は純粋な笑みを浮かべて頷いた。
固く搾った手拭いで首筋から肩、https://www.keepandshare.com/discuss4/10885/ https://www.tumblr.com/mathewanderson786/735964431867117568/%E3%81%88%E3%81%88-%E3%81%88%E3%81%88%E6%A1%9C%E5%8F%B8%E9%83%8E%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AF%E5%B7%B1%E3%81%8C%E5%8B%99%E3%82%81%E3%82%92%E6%9E%9C%E3%81%9F%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%94%E7%AB%8B%E6%B4%BE%E3%81%AA%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99-%E3%81%9D%E3%81%86%E8%A8%80%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%8C?source=share https://carinadarling78.zohosites.com/ 背にかけて拭っていく。安芸や稽古で負ったと思われる傷痕が痛々しい。柔らかな朝の光が射し込み、薄く白い肌をより透き通らせた。
──思えば、あの夜も傷の手当を手伝ったな。
ぼんやりとそう思いながら、沖田は刀傷に沿うように指を這わせた。すると、びくりと肩が跳ねる。
桜司郎から抗議の言葉が飛んでくる前に、口を開いた。
「桜司郎さん……。もう二度と、自分を犠牲にしないと約束して下さい」
背を拭き終わり、新しい襦袢を肩へ掛けてやる。
「それは…………」
桜司郎はドキリとしながらも口ごもった。まるで、今回負傷した時に考えていたことがバレているようなそれに内心焦る。
それに隊士として生きている以上、このように怪我を負うことはこれからもあるだろう。場しのぎの返事はいくらでも出来るが、沖田へ嘘を吐くのは嫌だった。
「いきなりどうしました?隊務で怪我をするなんて、有り得ることじゃないですか」
誤魔化すようなそれに、沖田は眉間に皺を寄せる。
「……"身代わりになってあげたかった"。貴女は……確かにそう言いました」
何故それを沖田が知っているのかと言葉を失った。確かそれは山野へ言った筈なのだ。 山野はああ見えて口が硬い。告げ口をするようにも思えなかった。
桜司郎は昨夜のとの会話を何とか思い出そうとする。すると、ひとつ違和感に気付いた。
『……何故、自身を犠牲にするんだ。沖田にそのような価値など無いだろうに』
沖田を崇拝する山野が、"沖田"などと呼び捨てにする訳がないのである。
──まさか。あれは、八十八君ではなくて……。
「お、沖田先生……いつから、居たのです……?」
どくんどくんと鼓動が高鳴った。もしあれが山野ではなく、沖田であるとするならば、本人へ好きだと言ってしまったことになる。
肩に掛けられた新しいそれに袖を通すことも忘れ、落ち着かない気持ちを抑えるように敷布の裾を掴んだ。
「昨夜からですよ。南部先生は会津中将様の元へ行かねばならなくなってしまい、代わりに私が残ったのです」
その回答に、桜司郎は目を丸くしながら顔を上げる。引き攣れるような脇腹の痛みが襲うが、それすらも気にならない。
──もしかすると、あれは……あのは、夢じゃなかったの……?
『…………私も、貴女のことが好きだ……』
朧気ながらも、その優しい響きはずっと残っている。だがそれを確かめる勇気が無かった。勘違いだとしたら、立ち直れないと思ったのだ。
「そう、でしたか……」
「ええ。斬り合いをして怪我をするのは仕方の無いことだとは思います。しかし、誰かを庇うこととは話しが違う。……もう、貴女が傷付くのを見るのはつらい」
切なる言葉に、桜司郎の心は揺れる。その意味が部下に対する親愛だとしても、嬉しかった。
「本当に、沖田先生は良い