2024年01月24日「あの明日から十日間甘味屋に帰
「あの明日から十日間甘味屋に帰るんで仕事やってしまわんとアカンのやけど…。」
「十日ですか。土方さんも随分と思い切りましたね。」
三津は頭を冷やせと言われた事を説明した。
正直考え直せるかは分からないと不安も吐露した。
「土方さんは切腹を考え直してはくれないんやろうけど…。」 http://jennifer92.livedoor.blog/archives/34871682.html https://note.com/ayumu6567/n/n313699d40ed2?sub_rt=share_pb https://community.joomla.org/events/my-events/yatto-bu-wuni-tireta-zhai-tengga-zhang-ziwo-kaikeruto.html
「切腹は武士にとって名誉ある死ですからねぇ。」
それには三津も渋い表情を浮かべた。
「死ぬ事に名誉なんてないでしょ…。
別に罰なら他にも何かあるでしょ?
切腹の必要はないやんね?」「もう決まった事ですし,私は近藤さんと土方さんに従います。
斬首でなく切腹出来る事は武士には誉れです。
これも考えがあっての規律ですから,だからね三津さん…。」
――あなたにはここの女中は勤まりません。
もうそのまま甘味屋の看板娘に戻って下さい。
自分も人を殺める人間だ。切腹の介錯も務める。
だから存分に嫌って,目の前から姿を消して。
そう告げたかった。
それで嫌われてしまいたかった。
「もし危険な状況になって,逃げられるかもしれへんのに逃げたりはせんの?」
でも三津は言葉を遮って,言わせてくれなかった。
思いつめた顔で総司をじっと見つめた。
「敵前逃亡は武士道に反します。どちらにせよ切腹です。死は免れません。」
「ホンマに…死ぬ事に躊躇いはないんや?」
「そうじゃなきゃ武士にはなれませんよ。」
どうにか三津に軽蔑されたくて他人事のような,突き放した口調になる。
土方は三津を手離す気はないようだ。だったら帰って来ないようにするまで。
『三津さんはここに居る限り苦しみ続けるんだ…。
私達とは理解し合えない。』
三津の目が次第に潤みだした。
ここで一発土方を殴ったように平手を見舞ってくれたらと,ぐっと歯を食いしばった。
「沖田さんも…。」
三津は涙が零れないように少し上を向いたり,瞬きをするのも慎重になった。
『私の事も酷い奴って言うのかな。』
その言葉を望んでいるのに,腹は括ったのに,気持ちはそうじゃない。
自分の真意を,立場を分かって欲しいと僅かな希望を秘めている。
「沖田さんも私を置いて逝ってしまうん?」
三津の視界はぼやけて,どんどん総司が滲んでいく。
遺される方の気持ちを考えてはくれないんだと思うともう我慢出来なかった。
「ごめん!胸借りる!」
たまらず総司の胸に飛び込んだ。
涙は止められないけど,必死に嗚咽は喉の奥に押し止めた。
『自分で胸を貸しますなんて言っといて,どうしたらいいのか…。』
総司は両手を宙にさまよわせて三津の背中に回しかけては引っ込めた。
三津は生きて傍に居て欲しいと願う。
でも総司は明日の我が身さえ保証されない。
慰められない。守ってあげるなんて軽々しく言えない。
『きっとこれが最初で最後だ…。』
総司は包み込むように三津を抱き締めた。「じゃあ…ご迷惑おかけしますが…。」
見送りに来てくれた隊士達一人一人の顔を見渡してから,ぺこりと頭を下げた。
「ゆっくり休んでくれよ。」
「いや,でも早く帰って来て欲しい気もするんだがなぁ。」
三津の出立を阻むように周囲を囲んだ。
その中に土方と総司の姿が無いのが,三津にとって何だか寂しくもあった。
「これじゃあ埒があかん。行くぞ。」
斎藤は三津の腰にそっと手を添えて自然に歩き出させた。
密着する程の距離をまざまざと見せつけながら屯所を出た。
『斎藤さんめ…態とだな…。』
「そんな目で睨むぐらいなら堂々と見送りに行きゃあ良かっただろうが。」
物陰に隠れて覗き見ていた総司の頭上から土方の声が降ってきた。
「それが出来ないからここに居るんです。私には三津さんの傍に居る資格はないんです。」
ふいっと顔を反らして哀愁漂う背中を向けた。
「十日ですか。土方さんも随分と思い切りましたね。」
三津は頭を冷やせと言われた事を説明した。
正直考え直せるかは分からないと不安も吐露した。
「土方さんは切腹を考え直してはくれないんやろうけど…。」 http://jennifer92.livedoor.blog/archives/34871682.html https://note.com/ayumu6567/n/n313699d40ed2?sub_rt=share_pb https://community.joomla.org/events/my-events/yatto-bu-wuni-tireta-zhai-tengga-zhang-ziwo-kaikeruto.html
「切腹は武士にとって名誉ある死ですからねぇ。」
それには三津も渋い表情を浮かべた。
「死ぬ事に名誉なんてないでしょ…。
別に罰なら他にも何かあるでしょ?
切腹の必要はないやんね?」「もう決まった事ですし,私は近藤さんと土方さんに従います。
斬首でなく切腹出来る事は武士には誉れです。
これも考えがあっての規律ですから,だからね三津さん…。」
――あなたにはここの女中は勤まりません。
もうそのまま甘味屋の看板娘に戻って下さい。
自分も人を殺める人間だ。切腹の介錯も務める。
だから存分に嫌って,目の前から姿を消して。
そう告げたかった。
それで嫌われてしまいたかった。
「もし危険な状況になって,逃げられるかもしれへんのに逃げたりはせんの?」
でも三津は言葉を遮って,言わせてくれなかった。
思いつめた顔で総司をじっと見つめた。
「敵前逃亡は武士道に反します。どちらにせよ切腹です。死は免れません。」
「ホンマに…死ぬ事に躊躇いはないんや?」
「そうじゃなきゃ武士にはなれませんよ。」
どうにか三津に軽蔑されたくて他人事のような,突き放した口調になる。
土方は三津を手離す気はないようだ。だったら帰って来ないようにするまで。
『三津さんはここに居る限り苦しみ続けるんだ…。
私達とは理解し合えない。』
三津の目が次第に潤みだした。
ここで一発土方を殴ったように平手を見舞ってくれたらと,ぐっと歯を食いしばった。
「沖田さんも…。」
三津は涙が零れないように少し上を向いたり,瞬きをするのも慎重になった。
『私の事も酷い奴って言うのかな。』
その言葉を望んでいるのに,腹は括ったのに,気持ちはそうじゃない。
自分の真意を,立場を分かって欲しいと僅かな希望を秘めている。
「沖田さんも私を置いて逝ってしまうん?」
三津の視界はぼやけて,どんどん総司が滲んでいく。
遺される方の気持ちを考えてはくれないんだと思うともう我慢出来なかった。
「ごめん!胸借りる!」
たまらず総司の胸に飛び込んだ。
涙は止められないけど,必死に嗚咽は喉の奥に押し止めた。
『自分で胸を貸しますなんて言っといて,どうしたらいいのか…。』
総司は両手を宙にさまよわせて三津の背中に回しかけては引っ込めた。
三津は生きて傍に居て欲しいと願う。
でも総司は明日の我が身さえ保証されない。
慰められない。守ってあげるなんて軽々しく言えない。
『きっとこれが最初で最後だ…。』
総司は包み込むように三津を抱き締めた。「じゃあ…ご迷惑おかけしますが…。」
見送りに来てくれた隊士達一人一人の顔を見渡してから,ぺこりと頭を下げた。
「ゆっくり休んでくれよ。」
「いや,でも早く帰って来て欲しい気もするんだがなぁ。」
三津の出立を阻むように周囲を囲んだ。
その中に土方と総司の姿が無いのが,三津にとって何だか寂しくもあった。
「これじゃあ埒があかん。行くぞ。」
斎藤は三津の腰にそっと手を添えて自然に歩き出させた。
密着する程の距離をまざまざと見せつけながら屯所を出た。
『斎藤さんめ…態とだな…。』
「そんな目で睨むぐらいなら堂々と見送りに行きゃあ良かっただろうが。」
物陰に隠れて覗き見ていた総司の頭上から土方の声が降ってきた。
「それが出来ないからここに居るんです。私には三津さんの傍に居る資格はないんです。」
ふいっと顔を反らして哀愁漂う背中を向けた。