京つう

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2024年01月29日

喉を鳴らしながら近付くと大きな子

喉を鳴らしながら近付くと大きな子供の目が点になる。


「吉田さん!また抜け出して!?」


「まさか!優秀な友達のお陰で自由の身だよ。それよりもこの俺を差し置いて誰と初詣に行ったの?怒らないから言ってごらん?」


気持ち悪いほど満面の笑みを浮かべる吉田がじわりじわりと詰め寄り,危機感を覚えた三津は二歩,三歩と後退り。
その間で宗太郎が交互に二人の顔を見た。


「見…見てはったん?」 https://carinacyrill.blogg.se/2024/january/entry.html https://carina.asukablog.net/Entry/3/ https://johnn.3rin.net/Entry/3/


「俺の優秀な友達がね。たまたま初詣に行ったら君が子供と斎藤一と仲良く親子のように歩いてるのを見たってね。」


「さ…斎藤さんとはたまたま会っただけで!」


「せやで。斎藤は俺が見つけたんや。」


宗太郎が吉田の前に立ちはだかり三津に近付くなと言わんばかりに睨み付けた。


「こら宗,吉田さんはうちのお客さんやねんから。」


そんな顔しないのと言ったがあからさまに不信感を抱いた目で吉田を見ていた。


「へぇ…たまたま会っただけなの。まぁ子供もそう言ってるし間違いないだろうね。口裏合わせなんてする訳ないだろうし。」


それなら許すとふんぞり返った。


「吉田さんの方こそお友達がたまたま初詣ってホンマに?」


「珍しく疑うんだね?」


「だって…。」


あんな事があった後だから,逃げ出した自分をまた捕まえる機会を窺ってるのではと思う。
あの時三津が間者でも土方の女でもないと言っても分かってくれたのは桂と吉田だけ。いくら吉田の友達と言えど,すんなり信じてくれる保証はない。


「三津いじめんなや。」


三津がしゅんとしてしまったから宗太郎は吉田に敵意を剥き出しにした。


「宗!ちゃうねん,ちょっと吉田さんとお話しあるからみんなと遊んどって?」


『ちょっとお話し?ちょっとじゃ済まないんだけど俺は。』宗太郎の前では話難くて二人で離れたものの,また誰かに見られてるのではと三津は挙動不審。きょろきょろと周囲を見渡す。


「やたら警戒するね。今更だけど。」


余計に目立つし怪しまれるから止めてくれと三津の頭を鷲掴みにした。


「そりゃしますよ。吉田さんのお友達も私の事監視してはったんでしょ?」


『斎藤さんの言ってた殺気はきっとそのお友達さんやわ…。』


そしてそのお友達とやらが帰って自分の事をなんて伝えたのか。


「そうそうちゃんと甘味屋で普通の生活出来てるか確認してもらってたの。
それに三津は偉いね,新選組だけじゃなく他のみんなにも長州藩士に拐われたって言わなかった。」


鷲掴みにした手で今度は偉い偉いと撫でてやった。


「そりゃ…。迷惑かけたくないもん…。」


吉田の様子から悪いことは言われてないのかな?と思い少しほっとしたが,吉田はムッとした。


『はいはい,桂さんの邪魔者にはなりたくないんだよね。』


それに加えて宗太郎に店のお客と紹介されたことが気にくわなかった。
桂の事は何と紹介するんだ?と考えると胸の辺りがモヤモヤする。だから口調も少しばかりきつくなる。


「斎藤一もたまたまだと思う?」


油断も隙もない奴らばかりだと吐き捨てた。
そう言われて押し黙る三津。確かに一人で壬生から離れた神社にお詣りなんて不自然だもの。


『三津を連れ戻すために様子窺いに来てるのかそれとも斎藤一の個人的な事情か…。』


頭を抱えて唸る三津を横目で眺めながら考える。斎藤が居た理由が後者であって堪るものか。


「そうなんですよね…。斎藤さんってよく私の近くに居てるんですよ…。もしかしたら今も居るんじゃ!?吉田さん!逃げて下さい!」


「やだね。」


さっきまで優しく頭を撫でた手で三津の頬をつねり上げた。


「向こうは俺の事なんて知らないよ。だからもし何かあっても私の良い仲の人って答えてればいいんだよ。何の問題もない。」


「いや問題しかないです。良い仲って何ですか。」



口を尖らせ抗議する三津に吉田の口角がきゅっと上がる。
それから頬をつねり上げていた手が輪郭をなぞるように顎に添えられ,三津の視界は吉田の顔だけになった。



Posted by Curryson  at 23:04 │Comments(0)

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