2024年06月26日政略結婚とはいえ、一つ違いで、つ
政略結婚とはいえ、一つ違いで、つ隣国きっての実力者の嫡男への輿入れである。
事情を知らない人間からすれば、またとない良き縁談のようにも思えるだろう。
だが、小見の方のしきった表情がそれを真っ向から否定していた。
「よりにもよって…よりにもよって」
と、まるでのように独りごちた後、小見の方はいを帯びたを道三に向けた。
「織田家の信長殿といえば、“ 尾張の大うつけ ” とられるお方。
那古屋城主とは思えぬような異様な風体の上、粗暴な振る舞いが絶えず家臣たちも皆手を焼いているとか?
そのようなお方に帰蝶を嫁がせて、本当に良いものでございましょうやら」
不安そうに眉をひそめる妻を見て、道三はそのぎったの娘に手をかけるような愚かな真似はすまい」
「いくら “ 美濃の” と恐れられる殿でも、相手は大うつけ。左様な理屈が通じる相手ではございますまい」
「それでもいずれは織田家の当主となる男じゃ。http://jennifer92.livedoor.blog/archives/36126298.html https://note.com/ayumu6567/n/nca0c36a8a810?sub_rt=share_pb http://jennifer92.livedoor.blog/archives/36127602.html
織田と同盟を結べば、長らく続いてきた尾張との小競り合いから解放される上、
駿河・ら、東国の勢いをえることも夢ではなかろう」
「……」
「それにここ何年かで、織田の勢力は急成長を遂げておる。を結んでおいて損はない」
「れながら──まことに、それだけなのでございますか?」
「があると申すのか」
「他意があるかどうかも、小見には分かりねまする」
長山城主・明智光継の娘として生まれ、道三の三度目の妻の座についてから数十年あまりつが、
小見の方には一度として、この夫の考えを読めた試しがなかった。から油商人を経て戦国大名に上り詰めた、まさにの苦労人なだけに、
腹の底に抱えた一物の上には、常に黒い幕をせているようであった。
「致せ。例え他の企みがあったとしても、それで帰蝶が傷付くことはない。絶対にな」
「そのを、信じてよろしいのですね?」
小見の方の問いに、道三は無言をもって答えた。にございますか」
薄く紅が引かれた小見の方のおちょぼ口から、め息が漏れた。
「それで殿は、帰蝶をいつ尾張へやるおつもりですか?」
「早くとも来年の正月、遅くともの頃までには尾張へ嫁がせる」
「来年──」
とすれば、少なくとも後数ヶ月の余裕がある。
良かった。
それならば時間をかけて娘の婚礼道具をえてやれると、小見は内心ほっとしていた。
「それで、帰蝶は今いずこにおる?」
「奥の自室におりましょう。この時間ですと、ちょうど、字の手習いをしている頃かと」
「行って話して参れ」
小見は「はて?」と小首をげる。
「帰蝶のもとへ行って、織田への輿入れの一件を話して参れと申しておる」
「まぁ、がでございますか」
「何も父親が告げねばならぬという法はない。帰蝶に話し、承知したら、の部屋へ連れて参れ」
「もし、承知しなかったら…なされまする?」
「やなど言わせぬ。承知させるのじゃ」
険のある声で、道三は重々しく申し付けた。
夫とはいえ、主君のを前に “ 出来ない ” などという選択肢はない。
小見の方は複雑そうな表情を浮かべながらも、そのれる他なかった。
一方、の帰蝶は、自室の前庭にけられた広い縁台に出て、空から舞い散るれていた。
白く細い両腕を、の向こうにめいいっぱい伸ばして、が肌に触れる感触を楽しんでいる。
時折 大きな風が吹き、縁台の上の彼女を真っ白に包み込んだが、帰蝶はそれすらも楽しいらしく、
お気に入りのが雪片で濡れるのもお構い無しのようだった。
事情を知らない人間からすれば、またとない良き縁談のようにも思えるだろう。
だが、小見の方のしきった表情がそれを真っ向から否定していた。
「よりにもよって…よりにもよって」
と、まるでのように独りごちた後、小見の方はいを帯びたを道三に向けた。
「織田家の信長殿といえば、“ 尾張の大うつけ ” とられるお方。
那古屋城主とは思えぬような異様な風体の上、粗暴な振る舞いが絶えず家臣たちも皆手を焼いているとか?
そのようなお方に帰蝶を嫁がせて、本当に良いものでございましょうやら」
不安そうに眉をひそめる妻を見て、道三はそのぎったの娘に手をかけるような愚かな真似はすまい」
「いくら “ 美濃の” と恐れられる殿でも、相手は大うつけ。左様な理屈が通じる相手ではございますまい」
「それでもいずれは織田家の当主となる男じゃ。http://jennifer92.livedoor.blog/archives/36126298.html https://note.com/ayumu6567/n/nca0c36a8a810?sub_rt=share_pb http://jennifer92.livedoor.blog/archives/36127602.html
織田と同盟を結べば、長らく続いてきた尾張との小競り合いから解放される上、
駿河・ら、東国の勢いをえることも夢ではなかろう」
「……」
「それにここ何年かで、織田の勢力は急成長を遂げておる。を結んでおいて損はない」
「れながら──まことに、それだけなのでございますか?」
「があると申すのか」
「他意があるかどうかも、小見には分かりねまする」
長山城主・明智光継の娘として生まれ、道三の三度目の妻の座についてから数十年あまりつが、
小見の方には一度として、この夫の考えを読めた試しがなかった。から油商人を経て戦国大名に上り詰めた、まさにの苦労人なだけに、
腹の底に抱えた一物の上には、常に黒い幕をせているようであった。
「致せ。例え他の企みがあったとしても、それで帰蝶が傷付くことはない。絶対にな」
「そのを、信じてよろしいのですね?」
小見の方の問いに、道三は無言をもって答えた。にございますか」
薄く紅が引かれた小見の方のおちょぼ口から、め息が漏れた。
「それで殿は、帰蝶をいつ尾張へやるおつもりですか?」
「早くとも来年の正月、遅くともの頃までには尾張へ嫁がせる」
「来年──」
とすれば、少なくとも後数ヶ月の余裕がある。
良かった。
それならば時間をかけて娘の婚礼道具をえてやれると、小見は内心ほっとしていた。
「それで、帰蝶は今いずこにおる?」
「奥の自室におりましょう。この時間ですと、ちょうど、字の手習いをしている頃かと」
「行って話して参れ」
小見は「はて?」と小首をげる。
「帰蝶のもとへ行って、織田への輿入れの一件を話して参れと申しておる」
「まぁ、がでございますか」
「何も父親が告げねばならぬという法はない。帰蝶に話し、承知したら、の部屋へ連れて参れ」
「もし、承知しなかったら…なされまする?」
「やなど言わせぬ。承知させるのじゃ」
険のある声で、道三は重々しく申し付けた。
夫とはいえ、主君のを前に “ 出来ない ” などという選択肢はない。
小見の方は複雑そうな表情を浮かべながらも、そのれる他なかった。
一方、の帰蝶は、自室の前庭にけられた広い縁台に出て、空から舞い散るれていた。
白く細い両腕を、の向こうにめいいっぱい伸ばして、が肌に触れる感触を楽しんでいる。
時折 大きな風が吹き、縁台の上の彼女を真っ白に包み込んだが、帰蝶はそれすらも楽しいらしく、
お気に入りのが雪片で濡れるのもお構い無しのようだった。
Posted by Curryson
at 22:27
│Comments(0)