京つう

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2024年09月29日

「実はな、例の件がようよ決まったのじゃ」

「実はな、例の件がようよ決まったのじゃ」

「例の件…と言いますと?」

「何じゃ、もう忘れたのか!? 儂が京に参って──」

と信長が口走った瞬間

「おやめ下さいませ! 都へ参ってはなりませぬ!」

突として濃姫は大声を張った。

その表情はりに満ちており、何が何でも阻止しようとする気合いすら感じられた。

「今はごはお控え下さいませ! ましてや…本能寺などへは!」

「───」

御台所の突然の発言に、信長や、控えている坊丸、力丸、そして侍女衆らも茫然とし、言葉を失っている。

ややあって、濃姫は我に返ると

「…こ…これは、大変ご無礼を致しましたっ」 https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202409270004/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/da1f3d198ab3c349885ef15cc7aca316 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/09/28/184954
慌てて信長に一礼を垂れた。

「上様が京へられると聞き…、思わず逆上を…」

「お濃、何を申しておるのだ? 儂がいつ上洛すると申した?」

濃姫は思わず目をぱちくりさせる。
「…なれど、先ほど上様が “ 儂が京へ参って ” とせに」

「勘違いを致すな。 儂はただ、以前 京へ参った折にり行った、馬揃えの話をしようとしただけじゃ」

「…お馬揃え、にございますか?」

「そうじゃ。何を早とちりしておる」

それを聞き、濃姫はほっと肩の力が抜け、口元にも微かな笑みが広がった。

「これは、まことに面目もございませぬ、私としたことが」

軽く平謝りすると

「して、今の時分になって、そのお馬揃えが如何なされたのです?」

濃姫は流れのままに伺った。

「実はな、その馬揃えを、この安土で執り行う旨がようよ決まったのじゃ」

「まぁ、この安土でお馬揃えを!? それは、実に粋なお計らいにございますね」

濃姫が感心がちに言うと、信長は呆れたように笑った。

「何を言うておるのだ。安土での馬揃えを希望したのは、お濃、誰あろうそなた自身ではないか」

「私が?」

「何じゃ、忘れたのか? 儂が京から戻って参った折に、安土でも執り行うと良いと、そなたが提案したではないか」

信長に言われ、微かだが記憶がった。

確かに、信長から馬揃えの話を聞き “ 是非 安土でも ” と懇願した覚えがある。
だがそれは、同席していた徳姫に対し、信長が「 事件 」の話をしつこくするので、

話題を変えようと努めていた時に、咄嗟に出た方便だったような気もする。

「さすがに都で執り行ったような大がかりなものは出来ぬが、それでも近隣諸国の武将・大名衆らを安土に呼び寄せ、

賑々しゅう執り行う所存じゃ。 京に参れなかったそなたや母上には、最も良き席を用意致そうぞ」

「それはまぁ──実に有り難き思し召しにございます」

様もきっと喜びますると、濃姫は笑顔満面になる。

「して、安土でのお馬揃えはいつ行うのでございますか?」

「の頭頃にと思うておる」

「葉月…。少し先なのでございますね」

「これから衣装やら武具などを発注せねばならぬしな。予行に費やす時間なども考えると、それくらいは必要であろう」

「されど、お衣装ならば都で召された物がございましょうに」

「そうはいかぬ。前回の馬揃えに参加した武将らも集まるのだ、同じ衣をったとあっては、この儂の威信に関わるでのう」

「左様にございますか」

濃姫は、信長の笑顔の裏に、幾つもの千両箱が見える思いだった。

しかしその分、壮麗で華やかな催しになることは確実であろう。

「胡蝶にも……見せてあげたいですね」

濃姫は無意識なのか、森兄弟や侍女衆が控えているにも関わらず、ぽつりとそう呟いた。

と同時に、信長の口から大きな咳払いが漏れ、濃姫はハッとして慌てて口を閉じた。



Posted by Curryson  at 21:45 │Comments(0)

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